hiyamizu's blog

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姜尚中「悩む力」を読んだ

2008年09月16日 | 読書2
姜尚中(カンサンジュン)「悩む力」集英社新書、2008年5月発行を読んだ。

表紙の裏にはこうある。
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情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。
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漱石は、“三四郎”の中で、「時代は不幸な方向に向かっている。その流れを変えることはできない。自分も所詮はこの中で生きていくしかない。そうは言っても、どうしたらいいのかわからない」と言っている。これはそのまま現代の悩みだ。

姜尚中は青春のころから自分への問いかけを続けてきて、「解は見つからないけれども、自分が行けるところまで行くしかないのだ」という解が見つかり、気が楽になった。
何が何だかわからなくても、行けるところまで行くしかないのだ。

漱石の著書、マックス・ウェーバー他の哲学者の言葉などをひき、自分の悩んできた過去に触れながら、「いまを生きる悩み、私とは何者か、世の中すべて金なのか、知ってるつもりじゃないか、青春は美しいか、信じるものは救われるか、何のために働くのか、変わらぬ愛はあるか、なぜ死んではいけないか、老いて最強たれ」、と語る。



姜尚中は、1950年生まれ。東大大学院情報学環教授。専攻は政治学・政治思想史。朝まで生テレビ!を始め、多くの討論番組やトーク番組に出演している。
私は、TVではほとんど見たことがないが、姜さんの著書を読むと、いかにも真面目でいまどき珍しいほど生硬な人との印象だ。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
100年前の夏目漱石とマックス・ウェーバーを読んでも、現代の悩みが直接解決されるとは思えない。しかし、確かに、悩みに共通点はあるのだから、姜さんの言うようにヒントは得られるだろう。
漱石は、“ぼっちゃん”と“我輩は猫である”は面白いが、“三四郎”はちょっと暗く、それ以外は陰鬱で読み続ける気がしない。この本でも、漱石が悩みぬいて書いているとしていくつか例が紹介されている。
人生に疑問を持ち、一度しっかり考えてみようという真面目な人にとくにお勧めだ。



以下、3点だけご紹介。

ヤスパースは「“自分の城”を築こうとする者は必ず破滅する」と言った。自分の城を頑強にして塀も高くしても、自分というものが立てられ、守れ、強くなれるものではない。なぜなら、人とのつながりの中でしか、“私”(自我)というものはありえないからだ。
他者と相互に承認しあわない一方的自我はありえない。

現代の老人は、社会の規範からはみ出した存在だ。無職で社会人ではなく、積極的消費者でもない。従来のように保守的でもない。これからの“老人力”とは多人数のパワーを持った“攪乱する力”だ。

私が共感したのは、「私(自我)というものは他者と相互に承認しあうことで生まれる」、「人間というのは、自分が自分として生きるために働く。自分が社会の中で生きていていいという実感を持つためには、やはり働くしかない」という主張だ。
私も、人間は他人との係わりの中でしか生きられないと思う。長くなったので、この点は別途書きたいと思う。





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