hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

小保方晴子『あの日』を読む

2017年11月02日 | 読書2

 

 小保方晴子『あの日』(2016年1月28日講談社発行)を読んだ。

 

 2014年1月28日に行われたSTAP細胞の会見から、ちょうど2年後、ヒステリックな嵐は一応静まり、小保方さんも反撃できる体調になってからの出版である。

 

 第一章「研究者への夢」での早稲田での修士課程、第二章「ボストンのポプラ並木」、第三章「スフェア細胞」でのハーバード大学での研究の様子は、夢多き若き研究者が進歩していく、どこにでもいる姿で、今となっては若き日の自慢話ではあるが、読んでいて楽しい。

 

 第四章「アニマル カルス」は理研の若山さん(後に山梨大学)の卓越したクローン技術に驚嘆する話だが、後の言い訳への布石として、この技術には小保方さんは実質的に係わっていないとの主張でもある。

 

 第五章「思いとかけ離れていく研究」では、若き研究者が、大御所先生から思うように操られて、自分の意志で研究を進められなくなるという話。これはよくある通常の研究の進め方なのだが、後の言い訳につながっていく。

 第六章「論文著者間の衝突」では、偉大な成果への期待から、理研、山梨大学、ハーバード大学間の功名争いも顕在化する。

 

 以下、第七章「想像をはるかに超える反響」「第八章「ハシゴは外された」で一気に落ち込み、以下、外部、内部からの激しい不正だとの攻撃、支援してくれていた先生方の離散などが語られる。

 第九章「私の心は正しくなかったのか」、第十章「メディアスクラム」、第十一章「論文撤回」、第十二章「仕組まれたES細胞混入ストーリー」、第十三章「業火」、第十四章「戦えなかった。戦う術もなかった」、そして、最後に、第十五章「閉ざされた研究者の道」で終わる。

 

 

小保方晴子(おぼかた・はるこ)

早稲田大学、東京女子医科大学、ハーバード大学医学大学院、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)で研究に従事。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 STAP細胞の実験の具体的手法にも触れていて、詳細はわからないなりに、面倒で、テクニックの上達が必要な実験だとの雰囲気は感じ取れ、面白くもあった。

 

 小保方さんの一方的な主張のこの本を読んでも、素人ながら私にはSTAP細胞はできたのではないとしか思えないし、実験の進め方はずさんだったとも思う。

 たとえ小さな研究でも基本的にだれもやったことのないことをはじめてやるのが研究だ。したがって、研究結果というものは、いい加減なことを言おうとすれば言えてしまう。そのことを自覚して、研究手法は追試できるように厳密に進めることが前提となる。だから、意地悪なほど実験結果を示す論文には厳しく批判し、検証するのだ。けして、研究者が陰険で嫉妬深いだけなのではない。

 

 山梨大学の若山教授について、梯子を外されたとか、途中から変質して積極的に逃げを計ったとか書いてあり、不正は若山教授が行ったと暗示している(?)が、このことの事実関係が分からないので、コメントしない。

 

 しかし、マスコミの異常な個人攻撃は、ヒステリックな大人のいじめだったと思う。小保方さんが、とくにひどい人の実名を挙げて反撃しているのは結構なことだと思う。反撃する手段があってよかったと思う。

 

 特に毎日新聞の須田桃子記者からの取材攻勢は殺意すら感じさせるものがあった。脅迫のようなメールが取材名目でやってくる。メールの質問事項の中にリーク情報や不正確な情報をあえて盛り込み、「こんな情報も持っているのですよ、返事をしなければこのまま報じますよ」と、・・・。(p183)

 マスコミのこの手の質問はTVの記者会見でもよく見かける。記者は、「●●●という話がありますが、どうなんですか?」と質問する。記者自身がどう思っているかには触れず、伝聞情報としていい加減な話を切り出す。卑怯な手だ。

笹井先生からは「・・・日々、須田記者の対応に追われてノイローゼがひどく他の仕事ができなくなってきた」と連絡を受けた。(p183)

 その後、須田桃子氏は「捏造の科学者」を文芸春秋社から出版し、同主催の大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。

 

「NHKの藤原淳登記者から私の携帯電話に電話やメッセージが直接来るようになった。NHKの記者がどのように携帯電話の番号まで個人情報を入手しているのかを考えると生活のすべてを包囲されているような恐怖で、もう生きていくことができないと考える時間が長くなった」(p184)

 

 「NHKスペシャル」は、後に放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会により、小保方晴子に対して名誉毀損の人権侵害が認められるし、報道姿勢としても「放送倫理上の問題があった」として勧告された。

 NHKぐらいは、STAP騒動が加熱中は冷静なニュースとして報道するにとどめ、深層をえぐる番組は事態が鎮静化してから落ち着いて番組を作り、放送して欲しかった。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする