三浦しをん著『光』(集英社文庫み48-1、2013年10月25日発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
島で暮らす中学生の信之は、同級生の実花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と実花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は実花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、実花を再び守ろうとするが――。渾身の長編小説。
映画『光』として、監督・脚本・大森立嗣、井浦新、瑛太、長谷川京子で2017年11月25日から公開。
伊豆七島の椿が美しい小さな美浜島を津波が襲い、生き残ったのは僅かに6人だけだった。中学生の黒川信之、同級生で美人の中井美花と、父親から虐待を受けている輔(たすく)、そして輔の父・洋一、灯台守のじいさん、バンガローの客でカメラマンの中山だ。
その夜、信之は美花が山中に乱暴されているのを見つける。美花の口が「殺して」と言うのを見て、信之は山中を絞め殺す。20年後、輔は、父の暴力から逃れるため、妻と娘のいる信之の山中殺害をネタに脅す。
初出:「小説すばる」2006年11月号~2007年7月号、2007年9月号~12月号
単行本:2008年11月集英社より刊
(連載時と単行本でラストが全く違うという。)
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
全編暗いトーンで、ユーモアもなく、私の好みではない。巻末・解説の吉田篤弘氏も「素晴らしく容赦がないなぁ」と、そして読書会で三浦しをんさんが「本当におそろしいものは、私たちの中にあるのではないでしょうか」と言ったというが、こんな小説を読みたい人はいるのだろうか。
美人の実花が冷たい心なのはいかにもありなんだが、信之に感情がないように見えるのはピントこない。
2006年~2007年に書かれているのだが、どうしても凄まじい2011年の東日本大震災での津波を思い出してしまい、小さな島がほぼ全島全滅のシーンには気分が滅入る。
三人称で書かれていて、ちょっと突き放した感じで書きたいときには良いというのだが。
登場人物
黒川信之:美浜島の生き残り。のちに川崎市役所勤務。南海子と結婚。
中井美花:美浜島の生き残り。信之の同級生、美人。後の女優・篠浦未喜。
黒川輔(たすく):美浜島の生き残り。父親から虐待されていた。金属加工工場勤務。
結子:金属加工工場の事務員。輔と同棲。
黒川洋一:美浜島の生き残り。輔の父。大酒のみ。
灯台守のじいさん:美浜島の生き残り。
中山:バンガローの客。津波を生き残ったが、実花を襲って殺された。
南海子(なみこ):信之の妻、娘は椿
山内:南海子の隣人