池田利道著『23区大逆転』(NHK出版新書528、2017年9月10日NHK出版発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
都心の圧勝はいつまで続くのか。コスパの良さが評価され始めた台東区・江東区や、伸び代の大きさを武器に巻き返しを狙う足立区・北区など、ここにきてこれまでの「序列」が大きく変わりつつある。ベストセラー『23区格差』の著者が、最新のデータから格差逆転の予兆を鮮やかに読み解いた力作。
23区における家族構成は、ひとり暮らしが51%、夫婦2人暮らしが16%、夫婦と子ども1人が11%。
20世紀の終わりごろ、住む視点からの評価は「西部山の手>副都心>東部>下町>都心」だった。現在、「都心居住」が進展し、トレンディエリアは都心から下町へ広がり始めた。
23区には10代後半から20代のごく一部が転入するが、ファミリー層に移行した時点で区外に転出してしまう。未婚のひとり暮らしの割合は34%に上る(全国平均は18%)。
都心3区(千代田、中央、港)は、1995年にはドーナツの芯で高齢化率が高かったが、現在では幼児が増加し、若いファミリー層が「都心居住」へ動いた。
2012年の所得水準は、一番高い港区が904万円、一番低い足立区が323万円。2015年は港区1023万円、足立区335万円と拡大した。23区平均は452万円。ただし、所得税の8割は2割の高額納税者が担っている(ニッパチの法則))。しかし、足立区も大阪市326万円、札幌市304万円より大きい。
江東区の湾岸エリア・豊洲地区は2000年~2015年、各5年で2万人づつ増えて、約11万人いる。内陸部の高齢化率が平均を上回る23%に対し、湾岸エリアは14%で23区最低の中央区16%を下回る。
23区でスターバックスがないのは荒川区だけ。
「練馬区は板橋区にはなんとなく勝てそうなきがする!でも港区には勝てる気がしない!」
杉並区は住宅地が多く、稼ぐ力が不足している。区の面積に対する住宅地の割合が55%と23区最大。
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
調査データが多彩に出て来て、「〇〇と言われている。しかし、実際は●●である。」という論調が多く、ややこしい。確かに統計データを綿密に分析すると、巷で言われていることは違っていたり、俗説だったりするだろうが、話の筋は分かりやすくして欲しい。
その割に、0メートル地帯での災害の心配がほとんど考慮されていない。「東部3区の人口が東日本大震災直後に減った」と記されているが、地域で助け合う共助の仕組みが発達している下町・東部地区は災害リスクを「減災」の仕組みで軽減できると楽観視している。少なくとも私は、東部3区には住む気がしないのだが。
池田利道(いけだ・としみち)
1952年生まれ。一般社団法人東京23区研究所所長。
東京大学大学院都市工学科修士課程修了後、東京都政調査会研究員などを経て、リダンプランニングを設立。23区を中心とするマーケットデータの収集・加工・分析を手がける。
著書『23区格差』(中公新書ラクレ)。