東野圭吾著『流星の絆』(講談社文庫 ひ17-27、2011年4月15日講談社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14年後、互いのことだけを信じ、世間を敵視しながら生きる彼らの前に、犯人を突き止める最初で最後の機会が訪れる。三人で完璧に仕掛けたはずの復讐計画。その最大の誤算は、妹の恋心だった。涙があふれる衝撃の真相。著者会心の新たな代表作。
題名の由来は、功一の言葉、「俺たちって、流れ星みたいだな」「俺たち三人は繋がってる。いつだって絆で結ばれてる。だから、何もこわがるな」から。
神奈川県横須賀市にある絶品のハヤシライスが売り物の洋食店「アリアケ」の三兄妹、功一、泰輔、静奈は、夜中に家を抜け出してペルセウス座流星群を観に出掛けている間に、両親が何者かにより刺されて殺されていた。頼るべき親戚がない三兄妹は養護施設に入る。
静奈が施設を出て、同居していた二人と一緒になって、すぐ静奈が資格商法に引っ掛かり、功一も勤めていたデザイン事務所の逃亡で多大な被害を受けた。以後、強く生きるため、三人も力を合わせて騙す方に回り、金持ちを詐欺にかけるようになっていく。作戦立案は功一で、武器は静奈の美貌と泰輔の擬態。詐欺金額が百万円以下はCクラス、百万以上がBクラス、上限無しがAクラスだ。
いつまでも続けられないと最後のターゲットにしたのは洋食チェーン「とがみ亭」御曹司の戸神行成。1千万円の偽宝石を売りつけようというのだ。
両親殺害事件後14年、時効になろうとしていた。戸神行成に近づくにつれ、「とがみ亭」を大きくしたのがハヤシライスで、その味が殺害された父親のレシピそのものだと確信する。さらに行成の父親の政行が、事件後家から出てきた人物に似ているとわかる。有罪となる証拠を持ち込み、順調に追い詰めていくが、静奈が行成に恋して、事態は複雑になっていく。
初出:『週刊現代』2006年9月16日号~2007年9月15日号
本書は2008年3月に講談社より単行本として刊行。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
兄妹3人が犯人だと決めつける根拠が決定的ではないという思いに最後まで引っ張られて、どうにもすっきりしないまま読み進めた。結局犯人は意外な人物だったのだが、これも完全には納得できない。
東野さんの作品は、話の進め方が巧みで抵抗がなく、スイスイ読み進められて楽しいのだが、一方では、重いところがなく、軽い話をドライブしていくので読みやすいのでは、と思ってしまう。エンタテインメントの一つのあるべき姿なのだろう。
以前住んでいた横須賀周辺の地名、横須賀中央駅、走水、衣笠などが出てきて、懐かしい。その他、吉祥寺、麻布十番など馴染みの地名も多く、引き込まれてしまう。
登場人物
有明功一(ありあけ・こういち):主人公。三兄妹の長男。事件当時小学6年生。
施設を出た後に勤めたデザイン設計会社が突然倒産して、下っ端なのに後始末を強いられる。その後、人を騙す方に回り、泰輔と静奈を実行役とする。父親秘伝のハヤシライスのレシピが書かれたノートを大切に持っている。
有明泰輔(たいすけ):三兄妹の次男で、事件当時小学4年生。
事件の夜に家から出てきた人物の顔を目撃。詐欺のため、種々の業種の人間に扮装する「擬態の天才」。
矢崎(有明)静奈(しずな):事件当時小学1年生。功一と泰輔の妹だが、血縁はない。愛称は「シー」。
美貌を武器に「高峰佐緒里」などの偽名を使い、男を虜にする。
有明幸博(ゆきひろ):横須賀の洋食店「アリアケ」の経営者。功一と泰輔の実父。事件の被害者。
ハヤシライスの味にこだわりを持つ。多額の借金を抱えていた。
矢崎(有明)塔子:静奈の実母。事件の被害者。幸博とは未入籍。
戸神行成(とがみ・ゆきなり):大手洋食チェーン「とがみ亭」専務。三兄妹のAランクのターゲットになった。仕事一途で真面目だが、静奈に恋する
戸神政行:「とがみ亭」経営者で、行成の父。
ハヤシライスを名物メニューに、14年前から急速に繁盛する。三兄妹の特Aランクのターゲット。
戸神貴美子:行成の母。
萩村信二:若手刑事。妻と子どもがいる。事件前に「アリアケ」で食事をしていた。
柏原康孝(やすたか):横須賀署のベテラン刑事。別れた息子が病死。
横山:白髪のベテラン刑事。
山辺:ベテラン刑事。
野口:功一の担任教師。岡田:泰輔の担任教師。津島:静奈の担任教師。
小宮康志:三協銀行日本橋支店営業部。志穂の大学の先輩。泰輔の変装。
南田志穂:背が高い美人。成長した静奈の偽名。
高山久伸:志穂に好意を持ち、志穂と小宮の勧める投資を行う。
川野武雄:理科教師。35歳。ユカリ(静奈)を温泉旅行に誘う。