東野圭吾著『パラレルワールド・ラブストーリー』(講談社文庫 ひ17-18、1998年3月15日発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
親友の恋人は、かって自分が一目惚れした女性だった。嫉妬に苦しむ敦賀崇史。ところがある日の朝、目を覚ますと、彼女は自分の恋人として隣にいた。混乱する崇史。どちらが現実なのか? ――存在する二つの「世界」と、消えない二つの「記憶」。交わることのない世界の中で、恋と友情は翻弄されていく。
大学院生の敦賀崇史は、田町と品川の間で並走する京浜東北線にいつも乗っている女性に恋心を抱く。しかし、就職し、その電車に乗ることがなくなった崇史は、二度とその彼女に会うことはなかった。
崇史には中学から大学院まで一緒で、足が悪く内向的な三輪智彦が親友だった。ある日、智彦は崇史に「恋人を紹介したい」と告げた。連れて来た津野麻由子は、あの女性だった。
崇史と智彦はMAC(米国に本社がある世界企業バイテック社が研究と英才教育のために作った専門学校)に通っていて、彼女もMACに入ることになった。
ある日、崇史が目を覚ますと、麻由子が恋人になっていて、崇史はそれを自然に受け入れていた。智彦が崇史に麻由子を紹介し、二人が付き合い始めたという記憶になっていたのだ。
やがて崇史は、麻由子は智彦の恋人として自分に紹介されたのではなかったかとも思ったが、現状を考えると、それは夢だとも思う。
智彦の補助者篠崎がパーティーの席で、MACに来るまで広島から出たことがないはずなのに、東京で育ったと主張し、仲間から出身高校などを聞かれて追及されると、混乱、混濁してしまう。天才である智彦が作り出した記憶を書き換える技術は極秘にされ、・・・。
本書は1995年2月中央公論社より単行本刊行。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
記憶が書き換える技術が開発されたということで、章が変わると違う記憶、状況の下で話がまた前へ戻っているので読んでいて混乱し、それが何回も繰り返されると、どうでもいいやと、解らぬまま読み進めてしまう。
おまけに、麻由子が崇史と智彦のどちらを選ぶのか決めないので、よけい混乱する。
東野さんの作品に時々あるように、最後の最後での結果がどちらに転んだのかが書かれていない。読者の好むようにというつもりかもしれないが、いずれの結論でも片方が不幸な結果になり、そんな状況で放り出されても困りますよ東野さん!
覚えておくべき主な登場人物が3名だけなのは結構毛だらけ猫灰だらけ。
敦賀崇史:友彦と中学から大学院まで一緒で親友。視聴覚認識システム研究班。
三輪智彦:崇史と中学から大学院まで一緒で親友。足が悪く内向的。頭が良く切れる。記憶パッケージ研究班。
津野麻由子:美人。MSCの研究員。智彦の恋人で、崇史の恋人でもある(??)
桐山景子:MAC研究員。崇史と同期入社。
須藤:MACでの崇史の上司。
小山内:MACでの教官
篠崎伍郎:智彦の研究補助者。
直井雅美:篠崎伍郎の恋人
杉原:脳内麻薬の研究者。化学屋。
大沼:MACの重役