東野圭吾著『片想い』(文春文庫ひ13-4、2004年8月10日文藝春秋発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。 解説・吉野仁
帝都大のアメリカンフットボール(アメフト)部の仲間の同窓会で始まる。
QB(クォーターバック)だった西脇哲朗はマネージャーの理沙子(旧姓高倉)と結婚していたが、二人は最近しっくりこなくなっていた。帰り道、哲朗と須貝はもう一人のマネージャーだった日浦美月を見かける。驚いたことに、LGBTの美月は現在は男として生きていると告げる。さらに「人を殺したんだ」と告白する。バーテンとして働いていたバーのホステスの執拗なストーカーを殺してしまったという。哲朗と理沙子は美月を警察に行かせないと決意する。翌日、須貝は去り、美月と付き合っていたアメフト部の中尾功輔が哲朗を訪ねてくる。
LGBTの問題が壁を作る中で、事件の真相を求めてもがく哲朗。30代半ばを過ぎ、多くの問題を抱えながらかっての仲間は哲朗と再びフォーメーションを組む。
美月、哲朗、理沙子、中尾はどう決断したのか。背景にある片想いとは。
吉野仁氏の解説によれば、東野氏に「青春の残像を残した三十代半ばの男女をストーリーの主役にしよう」と本作の構想がひらめいたのはSMAPの「夜空ノムコウ」を聞いたときだという。
すぐに「元アメフト部」が浮かび、LGBTはその先だろうという。
初出は「週刊文春」1999年8月26日号~2001年3月30日号。単行本は2001年3月文藝春秋より刊行。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
謎解きとしてはそれほどのことはないが、LGBTの問題と、かってのアメフト部の仲間の動きを絡ませて語っていき、大部な本をどんどん読み進めさせる力がある。
2000年当時にLGBTの問題を、真正面から取り上げたのは先見性があったと思う。LGBTで各人の秘密が深くなり、話が複雑となる。とくにトランスジェンダーの〇〇は誰が好きなのか訳が分からない。
登場人物(ネタバレにつながります)
西脇哲朗:帝都大アメフト部のQB。
西脇理沙子:哲朗の妻。カメラマン。帝都大アメフト部のマネージャー。
日浦美月:帝都大アメフト部のマネージャー。神崎ミツル名で「猫目」のバーテンをしていた。
早田幸広:昭和新聞社のフリーランス記者。帝都大アメフト部の名タイトエンド。
須貝:損保勤務。帝都大アメフト部のエース・キッカー。
高城功輔:旧姓中尾。かって美月と付き合っていた。帝都大アメフト部の俊足ランニングバック。
高城律子:功輔の妻。
安西:帝都大アメフト部
松崎:帝都大アメフト部
佐伯香里::通称カオリ、「猫目」のホステス。本名は佐伯カオルor立石卓(すぐる)
野末真希子:バー「猫目」のママ
向井宏美:バー「猫目」のホステス
戸倉明雄:カオリのストーカー。美月に殺害される。門松鉄工所専務。
戸倉泰子:戸倉明雄の妻だが別居。息子は将太。
戸倉佳枝:戸倉明雄の母。
有坂文雄:陸上部コーチ。
中原:陸上部チームドクター。大学助教授。
末永睦美:第一高校の陸上選手。戸籍上は女性。真性半陰陽。
広川幸夫:日浦美月の別居している夫。地元信用金庫の支店長代理。息子は悠里。
相川冬紀:その種の店「BLOO」(ブルー)の経営者?
嵯峨正道:劇団「金童」主宰
望月:警視庁の刑事