hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

遠い日の母と僕

2018年01月25日 | 個人的記録

 

今で言う高齢出産で生まれた一人っ子の私は、幼いときは母とべったりだった。

小学校の低学年だったのだろうか、近所の銭湯からの帰り道、まだ蓋をしていなかった川沿いの道を、いつものたわいない歌を二人でふざけて歌いながら歩いていた。
なぜだかふと思いついて軽い調子で私が言った。
「僕、もう本当はベタベタはいやなんだ」
母が歩みをピッタと止めて、ものすごくびっくりした顔で私を見た。そして、一呼吸置いて、言った。
「そうね、もうそうなのね」
たいした考えもなく出た一言で、なにか大変なことをしてしまったと思い、あとは黙って家まで帰った。

 

母を偉いと思ったのは、それ以降ぴたりと、私を幼い子ども扱いする態度は見せなかったことである。もちろん、母にとっては僕が唯一つであることは折に触れてわかってはいたし、何かと言うと取り越し苦労で私の心配ばかりしていたのだが。

 

しかし、その私も親となり、やがて息子も親となり、私は祖父となった。そして、遠い昔のあの瞬間のびっくりした母の顔を思い出して、かわいそうなことをしたと、今になって思うのである。

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