hiyamizu's blog

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窪美澄『トリニティ』を読む

2020年01月30日 | 読書2

窪美澄著『トリニティ』(2019年3月30日新潮社発行)を読んだ。

 

主人公は、1964年の東京五輪の年に創刊された男性向け週刊誌(モデルは「平凡パンチ」)の編集部で出会った3人の女性。

 

フリーライターの佐竹登紀子(モデルは三宅菊子?)はファッション誌の文体を確立したと言われる敏腕ライター。祖母、母も物書きで、裕福な東京子。
イラストレーターの妙子(モデルは大橋歩)は、田舎で貧しい子ども時代を過ごし、22歳の若さで雑誌の表紙に抜擢され、時代の寵児・早川朔になった。
鈴子は、当時の常識、寿退社を目指す、ふつうのOL。編集職に誘われたが、結婚を選び、専業主婦に。

 

物語は、妙子の葬儀で鈴子と登紀子が久々に再会し、鈴子の孫・奈帆が登紀子の昔語りを毎週聞きに行くことから進んでいく。圧倒的な男社会の中で、闘い、懸命に生きた3人の女たちの姿。 

 

題名の「トリニティ」は、キリスト教の三位一体、父と子と聖霊のことだが、本書では、かけがえのない三つのものと言い換えられる。
「男、仕事、結婚、子ども」のうち、たった三つしか選べないとしたら――。50年前の3人の女たちは、何を手に入れようとしたのか?

  

初出:「小説新潮」2017年4月号~2018年6月号(2017年8月号は休載)

  

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

多少冗長ぎみの所はあるが、面白く読めた。女性の友情ものに目がないこともあり、甘めの評価だ。

何と言っても彼女たちと時代を同じくする私は、前のめりで読み進めた。平凡パンチ、東京オリンピック、東京タワー、新宿騒乱事件などなど青春の思い出が一杯だ。

 

妙子より1歳若い私は、高校一年の時、東京タワーが少しずつ高くなっていくのを毎日のように見ていた。

そして、1968年10月21日、国際反戦デーの夜に学生らのデモ隊が新宿駅構内に乱入した新宿騒乱事件。私は現場にいて、総攻撃の激がとぶ機動隊が横1列で迫ってきたとき、西口地下道への階段を降りた。しかし、シャッターが閉まっていて、もう終わったと思った。そのときふと、中核活動家の彼の一言を思い出し、難を逃れることができた。もし、あの時、彼の言葉が思い浮かばなかったら、おそらく今は……。

 

 

窪美澄の略歴と既読本リスト

 

 

「母の臑を盛大に齧る生活」(p116)は「すねをかじる」と推測で読めるのだが、書けない。ちなみに、同じ頁に、「親の臑をかじった」と書いてある。

コメント
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