今回は持ち時間10分、使い切ると1手30秒である。途中に3分の作戦タイムを1回取ることができる。
対局場の7階は、エレベーターを囲むようにして、「コ」の字型になっている。隣接のビル側が対局室、道路側が解説室である。各選手の配置は以下のごとくである。
観客席(3席)
………………………………………………
渡辺・船戸(先) 嘉野・中井(後)
盤(時計) (時計)盤
宏美・太田(後) 彰子・牧野(先)
城間・島井(先) 中治・美樹(後)
盤(時計) (時計)盤
菊田・渡部(後) 野島・松尾(先)
………………………………………………
観客席(3席) 観客席(3席)
中央には将棋盤が4面置かれている。最初はこの存在の意味が分からなかった。
観客席はパイプ椅子が6脚置かれているのみ。私は各選手の表情を窺いたいのだが、奥には入れない雰囲気だった。とりあえず任意の椅子にすわったが、やはり選手の顔がほとんど見えず、おもしろくない。
困惑していると、中井広恵女流六段がニコニコ笑って私を見ている。私が挙動不審でキョロキョロしていたからか、それとも30日未明にアップした私のブログがあまりにも変質的だったので、苦笑したものか。
持ち時間10分の早指しなので、各選手とも序盤は飛ばす。松尾香織女流初段や大庭美樹女流初段はチェスクロックから遠く、ボタンを押しにくそうだ。ここは男性アマが配置を替わるなど機転を利かせなければならないが、女流棋士もお気に入りの位置があるやもしれず、何ともいえない。
午前中の解説は石橋幸緒天河。よく通る声が、こちらまで聞こえる。しかし対局者には耳に入っていないだろう。
10時50分、中井・嘉野ペアが早くも作戦タイムを取った。2人は中央の将棋盤に向かい、駒箱から駒を出す。そうか…。私としたことがウカツだった。これは作戦タイム検討用の将棋盤駒だったのだ。
それはともかく、ずいぶん早い作戦タイムではないか? 本局の方針を話すにしても、もう少し局面が進んだところで検討したほうが、有意義に思える。
10時57分、今度は松尾・野島ペアが作戦タイムを取った。手前のふたりがいなくなったので、大庭・中治ペアの姿が見えた。ふたりも小声で検討している。
作戦タイムを取った側が検討しているときは、相手も考えることができるので、この制度はあまり意味がないようにも思える。ファミリーカップのペア戦ではアイマスクやヘッドホンをしていたが、本局ではそうした措置も取られていなかった。
その30秒後、島井・城間ペアが作戦タイムを取る。島井咲緒里女流初段の、ピンクのスーツが愛らしい。島井ブルーより島井ピンクのほうが似合うのではなかろうか。
11時02分に宏美・太田ペア、04分に渡部・菊田ペアが作戦タイムを取り、中央がにぎやかになった。
渡部愛ツアー女子プロは、今回制服を着用している。高校生女流棋士は制服を着用すべし、が私の持論である。女子高生の3年間は短い。制服を着られるときに着ておいたほうがよい。
11時07分、彰子・牧野ペアが作戦タイムを取る。対局場所にじじいがひとり侵入している。奥にも観戦席が設けられているが、立ち見はまずい。気持ちは分かるが、ほめられた行為ではない。昨年の1月、大阪で開かれた公開1dayトーナメントで、観戦マナーの悪かったじじいを思い出す。
「(この手を)指したのは島井さんでしょう」
という石橋天河の声が聞こえる。大盤解説は、島井・城間-渡部・菊田戦を取り上げているのだ。
彰子・牧野ペアの作戦タイム中、中井・嘉野ペアは言葉を交わさず黙ったままだ。頭の中ではこの将棋を考えているのだろうが、お互いの読み筋を確認するまでもない、ということか。
11時10分、美樹・中治ペアが作戦タイムに入った。私は立って、盤面を覗きこむ。馬やと金を作り、自玉は銀冠の堅陣。これは美樹・中治ペアの優勢、いや勝勢に見える。
11時22分。各将棋とも佳境に入ってきている、通常の対局のように、空気がピンと張りつめてきた。
船戸陽子女流二段の顔が見えた。私からは最も遠い席にいるが、顔が見えるだけいい。相手の中倉宏美女流二段は、背中が見えるのみだ。
しかし船戸・渡辺ペアは作戦タイムを取っていない。優勢で考えやすい局面なら、無理をしてタイムを取り、相手に考慮時間を与える必要もない。
先ほどのじじいは、中井・嘉野-彰子・牧野戦のすぐ横まで近づいている。他人事ながらハラハラする。
大庭女流初段が、深刻な顔で考えている。おかしい。とても優勢の将棋の顔ではない。
11時31分、宏美・太田ペアが投了したようだ。やはり船戸・渡辺ペアの快勝だったのだろう。
32分、松尾・野島ペアも投了したようだ。続いて渡部・菊田ペアも投了。まるで終了時間を申し合わせたかのようだ。
私は松尾・野島-美樹・中治戦を覗きこむ。うん? 美樹・中治玉の頭に敵銀が載っている。これは美樹・中治ペアの負けではないか! あ、あの将棋を負けたのか!?
ペア将棋は、負けるとパートナーに対して申し訳が立たない。大庭女流初段の落胆ぶりが痛々しかった。
石橋天河が、
「☖8九竜を指したのは島井さんでしょうねぇ」
と解説しているのが聞こえる。
11時38分、中井女流六段がほおに手をあてて考えているのが見える。
「(島井・城間ペアは)ふたりで考えている気がしないですね」
と、石橋天河。ペア戦においては、たぶんこれが最高の褒め言葉であろう。昨年の同大会は藤田麻衣子さんが優勝したが、私も同じ印象を持った。
対局開始から1時間が経過した。本局の持ち時間は短いが、1時間は長いというべきだろう。
LPSAスタッフ氏が通り、
「これが噂の大沢メモですか」
と笑う。私もニヤッと笑う。
私もメモなしで将棋を観戦したいのだが、ブログを書き始めてから、そうもいかなくなった。
11時49分、中井・嘉野ペアが勝利。すでに勝利していた船戸・渡辺ペア、松尾・野島ペア、島井・城間ペアの計4ペアが、決勝トーナメント進出を決めた。
(つづく)
対局場の7階は、エレベーターを囲むようにして、「コ」の字型になっている。隣接のビル側が対局室、道路側が解説室である。各選手の配置は以下のごとくである。
観客席(3席)
………………………………………………
渡辺・船戸(先) 嘉野・中井(後)
盤(時計) (時計)盤
宏美・太田(後) 彰子・牧野(先)
城間・島井(先) 中治・美樹(後)
盤(時計) (時計)盤
菊田・渡部(後) 野島・松尾(先)
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観客席(3席) 観客席(3席)
中央には将棋盤が4面置かれている。最初はこの存在の意味が分からなかった。
観客席はパイプ椅子が6脚置かれているのみ。私は各選手の表情を窺いたいのだが、奥には入れない雰囲気だった。とりあえず任意の椅子にすわったが、やはり選手の顔がほとんど見えず、おもしろくない。
困惑していると、中井広恵女流六段がニコニコ笑って私を見ている。私が挙動不審でキョロキョロしていたからか、それとも30日未明にアップした私のブログがあまりにも変質的だったので、苦笑したものか。
持ち時間10分の早指しなので、各選手とも序盤は飛ばす。松尾香織女流初段や大庭美樹女流初段はチェスクロックから遠く、ボタンを押しにくそうだ。ここは男性アマが配置を替わるなど機転を利かせなければならないが、女流棋士もお気に入りの位置があるやもしれず、何ともいえない。
午前中の解説は石橋幸緒天河。よく通る声が、こちらまで聞こえる。しかし対局者には耳に入っていないだろう。
10時50分、中井・嘉野ペアが早くも作戦タイムを取った。2人は中央の将棋盤に向かい、駒箱から駒を出す。そうか…。私としたことがウカツだった。これは作戦タイム検討用の将棋盤駒だったのだ。
それはともかく、ずいぶん早い作戦タイムではないか? 本局の方針を話すにしても、もう少し局面が進んだところで検討したほうが、有意義に思える。
10時57分、今度は松尾・野島ペアが作戦タイムを取った。手前のふたりがいなくなったので、大庭・中治ペアの姿が見えた。ふたりも小声で検討している。
作戦タイムを取った側が検討しているときは、相手も考えることができるので、この制度はあまり意味がないようにも思える。ファミリーカップのペア戦ではアイマスクやヘッドホンをしていたが、本局ではそうした措置も取られていなかった。
その30秒後、島井・城間ペアが作戦タイムを取る。島井咲緒里女流初段の、ピンクのスーツが愛らしい。島井ブルーより島井ピンクのほうが似合うのではなかろうか。
11時02分に宏美・太田ペア、04分に渡部・菊田ペアが作戦タイムを取り、中央がにぎやかになった。
渡部愛ツアー女子プロは、今回制服を着用している。高校生女流棋士は制服を着用すべし、が私の持論である。女子高生の3年間は短い。制服を着られるときに着ておいたほうがよい。
11時07分、彰子・牧野ペアが作戦タイムを取る。対局場所にじじいがひとり侵入している。奥にも観戦席が設けられているが、立ち見はまずい。気持ちは分かるが、ほめられた行為ではない。昨年の1月、大阪で開かれた公開1dayトーナメントで、観戦マナーの悪かったじじいを思い出す。
「(この手を)指したのは島井さんでしょう」
という石橋天河の声が聞こえる。大盤解説は、島井・城間-渡部・菊田戦を取り上げているのだ。
彰子・牧野ペアの作戦タイム中、中井・嘉野ペアは言葉を交わさず黙ったままだ。頭の中ではこの将棋を考えているのだろうが、お互いの読み筋を確認するまでもない、ということか。
11時10分、美樹・中治ペアが作戦タイムに入った。私は立って、盤面を覗きこむ。馬やと金を作り、自玉は銀冠の堅陣。これは美樹・中治ペアの優勢、いや勝勢に見える。
11時22分。各将棋とも佳境に入ってきている、通常の対局のように、空気がピンと張りつめてきた。
船戸陽子女流二段の顔が見えた。私からは最も遠い席にいるが、顔が見えるだけいい。相手の中倉宏美女流二段は、背中が見えるのみだ。
しかし船戸・渡辺ペアは作戦タイムを取っていない。優勢で考えやすい局面なら、無理をしてタイムを取り、相手に考慮時間を与える必要もない。
先ほどのじじいは、中井・嘉野-彰子・牧野戦のすぐ横まで近づいている。他人事ながらハラハラする。
大庭女流初段が、深刻な顔で考えている。おかしい。とても優勢の将棋の顔ではない。
11時31分、宏美・太田ペアが投了したようだ。やはり船戸・渡辺ペアの快勝だったのだろう。
32分、松尾・野島ペアも投了したようだ。続いて渡部・菊田ペアも投了。まるで終了時間を申し合わせたかのようだ。
私は松尾・野島-美樹・中治戦を覗きこむ。うん? 美樹・中治玉の頭に敵銀が載っている。これは美樹・中治ペアの負けではないか! あ、あの将棋を負けたのか!?
ペア将棋は、負けるとパートナーに対して申し訳が立たない。大庭女流初段の落胆ぶりが痛々しかった。
石橋天河が、
「☖8九竜を指したのは島井さんでしょうねぇ」
と解説しているのが聞こえる。
11時38分、中井女流六段がほおに手をあてて考えているのが見える。
「(島井・城間ペアは)ふたりで考えている気がしないですね」
と、石橋天河。ペア戦においては、たぶんこれが最高の褒め言葉であろう。昨年の同大会は藤田麻衣子さんが優勝したが、私も同じ印象を持った。
対局開始から1時間が経過した。本局の持ち時間は短いが、1時間は長いというべきだろう。
LPSAスタッフ氏が通り、
「これが噂の大沢メモですか」
と笑う。私もニヤッと笑う。
私もメモなしで将棋を観戦したいのだが、ブログを書き始めてから、そうもいかなくなった。
11時49分、中井・嘉野ペアが勝利。すでに勝利していた船戸・渡辺ペア、松尾・野島ペア、島井・城間ペアの計4ペアが、決勝トーナメント進出を決めた。
(つづく)