一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4回ペア将棋選手権③・予選2回戦

2011-02-02 00:25:29 | LPSAイベント
予選2回戦は12時03分に始まった。ただし松尾香織女流初段の着席が遅れたため、この対局のみ1分遅れの開始となった。
本局の各選手の配置は、下のごとくである。
   
     観客席(3席)
………………………………………………
島井・城間(先)  牧野・彰子(先)
  盤(時計)     盤(時計)
船戸・渡辺(後)  中治・美樹(後)

嘉野・中井(先)  太田・宏美(後)
  盤(時計)  (時計)盤
野島・松尾(後)  菊田・渡部(先)
………………………………………………
 観客席(3席)   観客席(3席)

向かって左側が勝利ペア、右側が敗退ペアである。右の2局は負けたら終わり。今回のペア戦は最低2局が約束されているが、1局でも多く指したいという思いは、単独での対局以上のものがあろう。決勝トーナメント進出のために、絶対に負けられない一番である。
対局が始まったのに、写真を撮っている人がいる。開始後の写真撮影は禁止である。
観客として来ていた早咲誠和アマ竜王が、解説に招ばれた。石橋幸緒天河のイキな計らいである。私は対局場にかぶりついていたので、早咲アマの解説は拝聴しなかったが、解説場にいたTat氏によると、早咲解説はすこぶるおもしろかったという。
曰く、
「終盤は、角の価値が1.5なら、金の価値は5」
「棒銀は割に合わない戦法」
「銀を引くか出るかだったら、引く手に好手が多い」
「端玉には端歩、ではなく、端玉にも端歩。玉頭に突く歩はどの筋も厳しい」
など。
私も聞きたかったが、つい女流棋士の対局姿に注目してしまった。
観戦記界の大御所、東公平氏の姿が見える。東氏はLPSA指し初め式にも姿を見せていた。将棋ペンクラブ創設者のおひとりでもあり、いつかじっくり話を伺いたいが、叶うかどうか。
中井広恵女流六段が「いや~」とつぶやいて☗6八銀と上がった。私の位置からは局面が辛うじて見えるのだ。相手のひとりである松尾女流初段とは、2月6日に天河戦の挑戦者決定戦を争う。ペア将棋とはいえ、ここはどちらも相手を叩いて、勢いをつけたいところだ。
今回は中倉宏美女流二段のお顔が見える。ほおが桜色に染まり、いいオンナ度が増している。
相手の渡部・菊田ペアが作戦タイムを取った。局面は宏美・太田ペアの三間飛車穴熊、渡部・菊田ペアの銀冠だ。むずかしい局面のはずだが、宏美・太田ペアに会話はない。
続いて松尾・野島ペアも作戦タイムを取った。局面がハッキリ見える。松尾・野島ペアの四間飛車に、中井・嘉野ペアは舟囲い。居飛車側の作戦が現代では新鮮だが、もちろん自信はあるのだろう。今回もお互い話はせず、中井女流六段は席を外した。
12時19分、彰子・牧野ペアが作戦タイム。相手の美樹・中治ペアも相談に入った。
松尾女流初段が中井・嘉野ペア側を持って検討している。まるで加藤一二三九段みたいだ。
中井女流六段が戻り、松尾・野島ペアの作戦タイムも終わって、対局が再開された。中井女流六段が、松尾女流初段と野島崇宏アマをチラチラ見る。ちょっとコワイ。
中倉女流二段と太田博朗アマは、いい雰囲気で寄り添っている。見ているこちらはあまりおもしろくない。
大庭美樹女流初段は、将棋盤のほぼ中央に位置している。ペア将棋は女性が主役だから、女流棋士が考えやすいような配慮が必要である。美樹・中治ペアは後手番なので、右側にチェスクロックがあり、大庭女流初段は8女流棋士の中で、最も将棋を指しやすかったと思う。
右奥にいる中倉彰子女流初段がビシッと指し、チェスクロックのボタンを、バシン、と叩いた。
中倉女流初段は、ふだんはニコニコして朗らかだが、対局中は一変、ひじょうに厳しい顔になる。LPSAでは最も落差が激しい女流棋士である。
12時26分、中井・嘉野ペア、宏美・太田ペアが相次いで作戦タイムを取った。恐らく中盤の佳境であろう。ここは濃密な検討をしたいところである。
美樹・中治ペアが作戦タイムを取ったころ、対局に戻った中井女流六段が高笑いをした。歩の位置を間違えて検討していたため、仕掛ける手が成立せず、3分の作戦タイムが無駄になってしまったらしい。前局はかなり早い段階での作戦タイムだったし、このペアはちょっと抜けているところがある。もっとも作戦タイムがなくても、個々の実力を合わせて勝ちますワ、というところであろう。
中井女流六段のほおも紅潮し、勝負はこれからである。12時33分。金を引いて、ボタンをバシッ、とひっぱたいた。ボタンの押し忘れには要注意である。このくらいの音を出したほうがいいのかもしれない。
ちなみに太田アマは「パシッ」、野島アマは「ポン」、菊田裕司アマは「トン」という押し方だった。女流棋士に比べて、男性アマは穏やかである。きっと性格が反映されるのだろう。
12時36分、嘉野アマが左手で指し、ボタンを押す。
中倉女流二段が、首のところまで桜色に染めている。形勢はいいのか悪いのか。
12時38分、船戸・渡辺ペアがこの日初めての作戦タイムを取った。船戸女流二段は相変わらずスタイルがいい。ところでこのふたりは駒を並べず、盤上で指を動かして、今後の方針を決定していた。これは時間節約のための「新手」といえるだろう。
ふたりは3分を待たずして、作戦タイムを終了した。このペアは息が合っている、と思った。
牧野正紀アマが、ひときわ大きい音でボタンを叩く。あやうく時間切れになりそうな雰囲気だった。これは形勢が芳しくない証拠か。
12時41分、宏美・太田ペアが投了。中井・嘉野ペアも投了した。
予選を通過した渡部愛ツアー女子プロは、さすがにほっとした表情。中倉女流二段の「桜色」は、形勢悪化のしるしだったようだ。
松尾・野島ペアは、優勝候補相手に、快勝だった。解説場に招ばれた中井女流六段は、
「作戦タイムを取ったのが大悪手でしたね」
と苦笑していた。まあ決勝トーナメント進出は決まっているので、余裕がある。
12時44分。中倉女流初段が左手をほおにあてて考えている。その顔は厳しい。闘う若奥様である。
12時49分、船戸・渡辺ペア-島井・城間ペアが終わったようだ。しかしどちらが勝ったかは、この位置からでは分からない。残すは彰子・牧野ペア-美樹・中治ペアの1局となった。数人もの観客が近くに立ち、その推移を見守っている。
12時57分、いったん席を離れた島井女流初段が戻り、船戸・渡辺ペアと感想戦を再開した。島井女流初段は、私が想像する以上に、将棋が好きなのかもしれない。
13時02分、蛸島彰子女流五段、大庭美夏女流1級の姿が見えた。同じ「彰子」の中倉女流初段の将棋はどうか。Tat氏によると、お互いの玉が中段に出ているらしい。
昼食を摂りたいが、終局を確認してからにしたい。
船戸・渡辺ペア-島井・城間ペアはどちらが勝ったのか。壁に貼られてある星取表を見ると、島井・城間ペアに「○」が付けられていた。
彰子・牧野ペア-美樹・中治ペア戦のライブ観戦者は10名を数えている。盤上はどうなっているのだろう。果てしない泥仕合、の感が強くなってきた。
私もたまらず、観戦の輪の中に入る。これは…美樹・中治ペアが優勢に見えるが、どうだろう。
13時23分、午後から解説の田村康介六段の姿が見える。まだ対局が行われていることを、訝しく思っただろう。なにしろスケジュールでは、13時30分が本戦1回戦の開始なのだ。
と、24分、彰子・牧野アマが投了を告げた。早指しの雄・田村六段が念力でもかけたのだろうか。ともあれ本戦出場最後の切符は、美樹・中治ペアが獲得した。
さあ、ここからが本当の勝負である。
(つづく)
コメント (6)
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