翌13日(日)。北海道冬まつり紀行の、実質的な最終日である。いよいよ今回の旅行のメインである、「さっぽろ雪まつり」の観賞に行く。
朝、マクドナルドで朝食を済ませ、08時10分旭川発の上り普通列車に乗る。といっても札幌には直行せず、深川の先の滝川で降りた。
駅前のバスターミナルから新十津川役場前方面行きに乗る。09時22分、同バス停下車。ここから数分歩いたところに、札沼線の新十津川駅がある。路線名にも「札」と入っているが、この列車が札幌に向かうのである。ちなみに札沼線の「沼」とは、留萌本線・石狩沼田の「沼」のこと。かつてはここまで路線が通じていたのだが、1972年6月に廃止となった。よって現在は、新十津川が終着駅なのである。
この部分廃止からも分かるように、札沼線(愛称:学園都市線)は、鉄道マニアなら誰もが知るローカル線である。2011年2月現在、札幌からの下り列車は51本も出ているから、一見すると幹線も凌ぐドル箱路線に見える。ところが石狩当別着の列車(平日)は31本に減り、浦臼着の列車は7本に減り、新十津川へ着く列車は、3本に減ってしまうのだ。
石狩当別のひとつ先、北海道医療大学までは通勤・通学圏なのに、そこから先は典型的なローカル線に転じるのである。この落差がたまらないのだ。
午前中にさっぽろ雪まつりに出向いても、とくにステージイベントはやっていない。それなら鄙びたローカル線を味わうのが、本筋というものである。札沼線乗車は私にとって、さっぽろ雪まつりの観賞と同等の価値なのだった。
新十津川駅に着くと、09時28分の下り列車が入線してくるところだった。キハ40。私の好きな車両である。41分の発車まで時間があるので、駅舎内に備え付けられている訪問者ノートに一筆記し、駅舎や時刻表、キハ40などを写真に収める。
ところで新十津川の「新」はちょっと珍しい響きである。1889年、いまの奈良県吉野郡十津川村で大規模な水害があり、被災民がここに入植したため、ここ一帯は新十津川(町)と名付けられたのだった。
乗客は地元民と思しきオッチャンが乗ったが、そのほかは私ひとり。感動的な人数で、気動車は09時41分に発車した。
前述のように、ここから浦臼…否、北海道医療大学までは超ローカル線だから、列車の速度も異常に遅い。大赤字区間でスピードなんか出していられないからだが、これが皮肉にも、自然の「ノロッコ列車」となって、よりいっそう旅情が増す。前日のバス深名線が廃線供養を兼ねた旅なら、札沼線は現役ローカル線の旅といえる。
空は雲がほとんどない快晴である。私は雨男だが、今回の旅は本当に天候に恵まれた。ゴトン、ゴトン…と、雪原の中を、列車はゆっくり走る。女子高生のBGMや朱鞠内付近からの景色もいいが、やはりローカル線はいい。中型バスに私ひとり、もかなりの経費がかかっているが、乗客2人で気動車を走らせたら、いったいいくらかかるのかと思う。
10時11分、晩生内(おそきない)で2人乗車した。
10時38分、月ヶ岡で男性が1人下車した。彼はこの列車にカメラを向けていた。恐らく秘境駅探訪の、鉄道マニアだろう。私も下車したいが、ここで降りたら次の上りは13時54分、つまり3時間16分後だ。とても降りられない。
札幌方面に近づくにつれ、わずかだが、乗客が乗るようになってきた。
11時03分、石狩当別着。ここで列車増結のため、26分停車する。ホームで待っていると、軽そうな気動車が3両もやってきた。新十津川の閑散ぶりからは考えられないが、ここはもう通勤圏内である。計4両でも、多すぎるということはないのだろう。
12時14分、大量の乗客を乗せた4両の列車は、1分遅れで終着札幌に着いた。
今回の旅行で、4日目にして初めて、札幌駅に降りる。
駅前はやっぱり雪が少ない。小樽の雪はなんだったのか。あれは私の錯覚だったのだろうか。
徒歩で大通会場まで向かう。そこに至る国道脇の歩道では工事の真っ最中だ。駅前から大通駅までを地下化する話は以前聞いたが、その工事だろうか。もし開通したら雪の心配をせず、地下街をぶらぶら歩きながら大通駅までたどり着ける。地上の商店にとって地下化は営業妨害だろうが、観光客の無責任な意見としては、そうである。
本屋があるので、入る。女性誌売り場を見ると、「an an」の2月9日売り・16日号が置いてあった。今号の表紙はグラビアアイドルの優木まおみで、セミヌードを披露している。「2週間ダイエット」「マシュマロボディのつくり方」は、ちょっとそそられるコピーである。
この号を東京で見たとき、「an an」は隔週刊だから、北海道からの帰京後に買っても大丈夫だろうと思った。ところが旭川のネットカフェでそれを見ると、「an an」 は週刊誌と分かり、焦った。私は優木まおみの熱狂的なファンというわけではないが、彼女はとなりのお姉さん的な雰囲気があって、まあ、やっぱり、ファンである。よってこのショットは、永久保存版だと思った。
店のレジ係は若い女性である。どうも買うのを躊躇するが、ここで買わないと後悔する。やるべきか、やらざるべきか。やらないで後悔するより、やって後悔したほうが、後でサッパリする。私はこのブログで書きたいことを書いているので、いつもスッキリしている。さらさら流れる清流のごとき心境である。
「オレは全然興味がないんだけど、嫁さんに買っていってやろうと思って」
というような顔で、私は堂々と「an an」 をレジの前に出す。顔から火が出るかと思った。
いよいよ「さっぽろ雪まつり・大通会場」に着く。事前にネットで調べた限りでは、各丁目のイベント情報は載っていなかった。とりあえずは4丁目から、時計と反対回りに歩く。
5丁目は劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の大雪像。3月から北海道でも開幕するらしい。私が小学生のとき、学校で劇団四季のミュージカルを観に行ったことがある。あのときは「ふたりのロッテ」だった。
ロッテといえば、6丁目に、北海道日本ハムファイターズ・斎藤佑樹投手の雪像があった。斎藤投手は美男子すぎて特徴が取りにくいかと思ったが、これはよく似ている。撮影する観光客も多かった。
観光案内所で、パンフレットをいただく。何度も書くが、雪まつりはイベントを観るのも楽しみのひとつだ。しかし私が楽しみにしていた「さっぽろ雪まつりフィナーレ」のイベントがない。8丁目のHTBひろばで、午後6時から「雪のHTB広場フィナーレ」というのがあるが、これは怪しい。ミスさっぽろが出るイベントではないような気がする。しかし足を運ぶしかない。
午後2時からは5丁目東で、陸上自衛隊第11音楽隊のコンサートがある。これは私も毎年楽しみにしていて、必見だ。2時に5丁目東、と照準を合わせる。
そのままそろそろ歩き、10丁目に出た。
大通公園を出た左手に、牛丼の「吉野家」があるのは知っている。そろそろ腹が減ったので、昼食といきたいところだが、北海道で吉野家か…。しかし6丁目の食の広場は、あまりにも値段が高い。
私は初志貫徹で、吉野家に入った。しかし注文は280円の牛鍋丼ではなく、ちょっと豪華に500円の牛鮭定食とした。最終日だから、張り込んだのである。
腹もくちて吉野家を出ると、雪が舞っていた。何か、いや~な予感がした。
(つづく)
朝、マクドナルドで朝食を済ませ、08時10分旭川発の上り普通列車に乗る。といっても札幌には直行せず、深川の先の滝川で降りた。
駅前のバスターミナルから新十津川役場前方面行きに乗る。09時22分、同バス停下車。ここから数分歩いたところに、札沼線の新十津川駅がある。路線名にも「札」と入っているが、この列車が札幌に向かうのである。ちなみに札沼線の「沼」とは、留萌本線・石狩沼田の「沼」のこと。かつてはここまで路線が通じていたのだが、1972年6月に廃止となった。よって現在は、新十津川が終着駅なのである。
この部分廃止からも分かるように、札沼線(愛称:学園都市線)は、鉄道マニアなら誰もが知るローカル線である。2011年2月現在、札幌からの下り列車は51本も出ているから、一見すると幹線も凌ぐドル箱路線に見える。ところが石狩当別着の列車(平日)は31本に減り、浦臼着の列車は7本に減り、新十津川へ着く列車は、3本に減ってしまうのだ。
石狩当別のひとつ先、北海道医療大学までは通勤・通学圏なのに、そこから先は典型的なローカル線に転じるのである。この落差がたまらないのだ。
午前中にさっぽろ雪まつりに出向いても、とくにステージイベントはやっていない。それなら鄙びたローカル線を味わうのが、本筋というものである。札沼線乗車は私にとって、さっぽろ雪まつりの観賞と同等の価値なのだった。
新十津川駅に着くと、09時28分の下り列車が入線してくるところだった。キハ40。私の好きな車両である。41分の発車まで時間があるので、駅舎内に備え付けられている訪問者ノートに一筆記し、駅舎や時刻表、キハ40などを写真に収める。
ところで新十津川の「新」はちょっと珍しい響きである。1889年、いまの奈良県吉野郡十津川村で大規模な水害があり、被災民がここに入植したため、ここ一帯は新十津川(町)と名付けられたのだった。
乗客は地元民と思しきオッチャンが乗ったが、そのほかは私ひとり。感動的な人数で、気動車は09時41分に発車した。
前述のように、ここから浦臼…否、北海道医療大学までは超ローカル線だから、列車の速度も異常に遅い。大赤字区間でスピードなんか出していられないからだが、これが皮肉にも、自然の「ノロッコ列車」となって、よりいっそう旅情が増す。前日のバス深名線が廃線供養を兼ねた旅なら、札沼線は現役ローカル線の旅といえる。
空は雲がほとんどない快晴である。私は雨男だが、今回の旅は本当に天候に恵まれた。ゴトン、ゴトン…と、雪原の中を、列車はゆっくり走る。女子高生のBGMや朱鞠内付近からの景色もいいが、やはりローカル線はいい。中型バスに私ひとり、もかなりの経費がかかっているが、乗客2人で気動車を走らせたら、いったいいくらかかるのかと思う。
10時11分、晩生内(おそきない)で2人乗車した。
10時38分、月ヶ岡で男性が1人下車した。彼はこの列車にカメラを向けていた。恐らく秘境駅探訪の、鉄道マニアだろう。私も下車したいが、ここで降りたら次の上りは13時54分、つまり3時間16分後だ。とても降りられない。
札幌方面に近づくにつれ、わずかだが、乗客が乗るようになってきた。
11時03分、石狩当別着。ここで列車増結のため、26分停車する。ホームで待っていると、軽そうな気動車が3両もやってきた。新十津川の閑散ぶりからは考えられないが、ここはもう通勤圏内である。計4両でも、多すぎるということはないのだろう。
12時14分、大量の乗客を乗せた4両の列車は、1分遅れで終着札幌に着いた。
今回の旅行で、4日目にして初めて、札幌駅に降りる。
駅前はやっぱり雪が少ない。小樽の雪はなんだったのか。あれは私の錯覚だったのだろうか。
徒歩で大通会場まで向かう。そこに至る国道脇の歩道では工事の真っ最中だ。駅前から大通駅までを地下化する話は以前聞いたが、その工事だろうか。もし開通したら雪の心配をせず、地下街をぶらぶら歩きながら大通駅までたどり着ける。地上の商店にとって地下化は営業妨害だろうが、観光客の無責任な意見としては、そうである。
本屋があるので、入る。女性誌売り場を見ると、「an an」の2月9日売り・16日号が置いてあった。今号の表紙はグラビアアイドルの優木まおみで、セミヌードを披露している。「2週間ダイエット」「マシュマロボディのつくり方」は、ちょっとそそられるコピーである。
この号を東京で見たとき、「an an」は隔週刊だから、北海道からの帰京後に買っても大丈夫だろうと思った。ところが旭川のネットカフェでそれを見ると、「an an」 は週刊誌と分かり、焦った。私は優木まおみの熱狂的なファンというわけではないが、彼女はとなりのお姉さん的な雰囲気があって、まあ、やっぱり、ファンである。よってこのショットは、永久保存版だと思った。
店のレジ係は若い女性である。どうも買うのを躊躇するが、ここで買わないと後悔する。やるべきか、やらざるべきか。やらないで後悔するより、やって後悔したほうが、後でサッパリする。私はこのブログで書きたいことを書いているので、いつもスッキリしている。さらさら流れる清流のごとき心境である。
「オレは全然興味がないんだけど、嫁さんに買っていってやろうと思って」
というような顔で、私は堂々と「an an」 をレジの前に出す。顔から火が出るかと思った。
いよいよ「さっぽろ雪まつり・大通会場」に着く。事前にネットで調べた限りでは、各丁目のイベント情報は載っていなかった。とりあえずは4丁目から、時計と反対回りに歩く。
5丁目は劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の大雪像。3月から北海道でも開幕するらしい。私が小学生のとき、学校で劇団四季のミュージカルを観に行ったことがある。あのときは「ふたりのロッテ」だった。
ロッテといえば、6丁目に、北海道日本ハムファイターズ・斎藤佑樹投手の雪像があった。斎藤投手は美男子すぎて特徴が取りにくいかと思ったが、これはよく似ている。撮影する観光客も多かった。
観光案内所で、パンフレットをいただく。何度も書くが、雪まつりはイベントを観るのも楽しみのひとつだ。しかし私が楽しみにしていた「さっぽろ雪まつりフィナーレ」のイベントがない。8丁目のHTBひろばで、午後6時から「雪のHTB広場フィナーレ」というのがあるが、これは怪しい。ミスさっぽろが出るイベントではないような気がする。しかし足を運ぶしかない。
午後2時からは5丁目東で、陸上自衛隊第11音楽隊のコンサートがある。これは私も毎年楽しみにしていて、必見だ。2時に5丁目東、と照準を合わせる。
そのままそろそろ歩き、10丁目に出た。
大通公園を出た左手に、牛丼の「吉野家」があるのは知っている。そろそろ腹が減ったので、昼食といきたいところだが、北海道で吉野家か…。しかし6丁目の食の広場は、あまりにも値段が高い。
私は初志貫徹で、吉野家に入った。しかし注文は280円の牛鍋丼ではなく、ちょっと豪華に500円の牛鮭定食とした。最終日だから、張り込んだのである。
腹もくちて吉野家を出ると、雪が舞っていた。何か、いや~な予感がした。
(つづく)