一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

希望の光

2016-11-08 23:12:39 | 女流棋戦
今日8日は、第24期倉敷藤花戦三番勝負第1局である。対局者は里見香奈倉敷藤花と室谷由紀女流二段。一見、竜王戦第3局の影に隠れてしまったようだが、倉敷藤花戦、というか室谷女流二段の戦いに注目していた将棋ファンも多かったはずである。もちろん私もそうだ。ただ私は、室谷女流二段が勝つとは思っていない。やはり現役奨励会三段の実力は大きいからで、室谷女流二段が一手違いまで持ち込めればオンの字と思っていた。
というわけで、今日も仕事の合間にスマホを見た。最初に見たのは序盤で、里見倉敷藤花が居飛車左美濃、室谷女流二段は△5三銀形三間飛車に組んでいた(最初から三間飛車だったかどうかは分からない)。里見倉敷藤花が先手なら居飛車もあると思ったから、予想の範囲内ではある。まあ第1局だから胸を貸しましょうか、というタイトルホルダーの余裕が感じられた。
それにしても昭和を思わせる対抗型で、ホッとなごむものがある。私も考えやすいし、勝敗はともかく、室谷女流二段も十分力を出せるのではないかと思った。
次に見た時は、室谷女流二段が△4三金~△6三銀型に構えていた。△4三金は大山十五世名人が指しそうな手で、室谷女流二段は十五世名人の将棋を相当並べているような気がした。
次に局面を見た時は里見倉敷藤花が▲2四歩と突っかけたところだった。これでいよいよ戦いである。
竜王戦も見てみるが、膠着状態でほとんど進んでいない。これが2日目とは到底思えないが、渡辺―丸山戦は進行状況が極端でいけない。
倉敷藤花戦に戻る――。次に見た時は、室谷女流二段が▲5三歩を△同飛と取ったところだった。これでは先手が▲2二飛成と飛び込めるが、もちろん承知の上だ。だからネット解説では△4二飛を推奨していたが、オンナはそんな利かされのような手は指さないのである。
竜を作られる手を恐れていない。これは室谷女流二段、相当イケルのではないかと思った。
以降も私は、仕事の合間にスマホを見る。里見倉敷藤花は▲9八玉と寄っていた。いわゆる米長玉だが、好んで指した手には見えない。
竜王戦は千日手模様なのか長考合戦が続いているのか分からぬが、局面に進展はない。倉敷藤花戦と竜王戦、双方の実力は別にして、どちらがおもしろいかは言うまでもないだろう。
本局、室谷女流二段の健闘は続いている。里見倉敷藤花も反撃してはいるのだが、▲3七銀と▲4六桂の働きが今一つだ。室谷女流二段の落ち着きぶりが、指し手を通じて伝わってくる。さしあたって、里見倉敷藤花には▲5五角の狙いがある。△6四飛が動けば玉が素抜けるからで、私が振り飛車側だったらビビって受けに回るだろう。
次に見た時は、室谷女流二段の馬が△6九に入っていた。私なら△3七馬と銀得してニコニコしているところだが、終盤は駒得より敵玉に迫らねばならない。しかも△6四飛は△6五に浮いて、見事に横に利いていた。室谷女流二段は飛車の使い方がうまいと思う。先手の駒も急所に迫っているが、室谷玉は端に逃げる余地があるのが大きい。
総合すると、これは後手が優勢ではないか? 里見倉敷藤花、もう少しうまく反撃できたはずでは?
午後3時40分ごろに見ると、将棋は終わっていた。つまり、盤面が初形に戻っていた。これは室谷女流二段が勝ったのではないか?
最終手を表示すると、室谷女流二段が里見玉を即詰みに討ち取っていた。
素晴らしい!
私は大いに感激したのであった。

夜、改めて指し手を再生してみる。室谷女流二段の指し手は終始落ち着いていて、とても強かった。一手違いなんてとんでもない。大山名人杯にふさわしい指し手で、堂々の勝利だった。私は、見当違いをしていた己を恥じた。
ありていに言えば、女流棋士は、里見女流四冠や西山朋佳奨励会三段には勝てないと思っていた。女流棋士の存在に意味があるのか、とさえ思ったものだ。
だがそれは違った。女流棋士も奨励会員に伍して指せるということが、本局を通じて分かった。私はそこに、希望の光を見た。
コメント (3)
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