第4図の局面、Fuj氏だったらノータイムで▲6七飛成だろう。私もそう指す。
だが現実は、渡辺明竜王の考慮が続いている。解説の大内延介九段は局面を前に戻し、第3図の△5五飛の1手前を△6六飛(変化図)に代えて解説する。大内怒濤流、とにかく大駒を切っちゃうのである。
「△6六飛▲同金△7七金▲9六玉に△8三桂、これが詰めろ」
私たちは聞き入る。「アタシたちの検討だと、以下▲8五歩△5五銀(参考図)、これがなかなか面白い手でねぇ」
以下▲同金に△7六金で後手十分ということか。
「(本譜)△5五飛の瞬間が甘い。▲8九桂が(意外に)いい手だったのかなあ…」
と、大内九段が独り言のようにつぶやく。「(本譜)▲5六桂に対して丸山さん(忠久九段)がどういう手を用意していたか、それが見えない」
大内九段は▲5六桂に未練があるようだ。「(本譜▲8九桂に△6五歩は、)これ正しいのかねぇ。△5七銀成るとどうだったのかなあ…」
どうも、△6五歩に▲5六金と強く出た手が好手だったようだ。
渡辺竜王の指し手はまだのようである。
大内九段「丸山さんの残り時間は? 3分? 3分で指せるのかねえ」
藤森女流四段「でも前回も(1分将棋で)すごかったですからねえ」
それはそうだが、本局は局面がかなり複雑化している。さすがの丸山九段も正着を続けるのは至難であろう。
第4図以下の指し手。▲5一角△5二玉▲9一飛成△8二銀▲7四角△6三桂▲同角成△同金▲8二竜△5一玉(第5図)
そこに▲5一角が知らされた。これは△5二玉で飛車取り。▲6七飛成では角を取られるので、▲9一飛成よりなくなった。それがやや変調にも見え、渡辺竜王、攻め急いだのでは? と思える。
「(▲9一飛成は)場合によっては▲8四角成(の上部開拓)を目指してるんですね」
大内九段が▲5一角の弁護?をする。もちろん▲9一飛成も大きい手なのだ。
△8二銀。大内九段は「ほぉー、丸山流のネバリですね」と感嘆する。「角を持てば△6九角で詰ましちゃおうということですね。
…渡辺竜王はどう指すのか。ちょっと手が見えないですね」
一応、という感じで「▲7四角△6三桂」を示したが、この攻めでは…という雰囲気だ。
「何か梶浦君いい手ある?」
大内九段が聞いてみる。駒操作の梶浦宏孝四段、ほとんど発言しないが、妙に存在感があるのだ。梶浦四段は答えず、
「何か▲6七同飛成とと金を取った方がよかったと思いますね」
と大内九段が引き継いだ。
本譜も▲7四角△6三桂と進む。やはりこう指すよりなかったようだ。
渡辺竜王は▲同角成、と食いちぎった。これは面白くなってきた、というところで、私の肩をポン、と叩く者がいた。
第5図以下の指し手。▲5二銀△4二玉▲6三銀不成△3一玉(第6図)
それはKaz氏だった。Kaz氏は連日仕事に忙殺され、解説を聴くどころではないはずだがそこはそれ、寸暇を割いて会場に来るのはやはり将棋バカなのであった。
大内九段は「▲5二銀△4二玉▲6三銀成△3一玉」を示す。しかしそれは▲2四歩△同歩▲2三歩がある。よって△3三玉に修正された。「…△3三玉▲9六玉で勝ちと見ているんでしょうか」
しかしそれは後手にも△6九角~△5四角の反撃があり、むずかしいとのこと。
「これはまだまだ大変な将棋ですね」
大内九段が、ふぅー、という感じで言う。と、Kaz氏が「▲6三銀成では不成でどうですか? これなら△5四角がない」と私につぶやく。
ナルホドそれは一理ある。つい銀を成って横に活用したくなるが、そこを堪えて不成、がいいのだ。
「どう梶浦君」
大内九段の問いに、梶浦四段が黙って「▲6三銀不成」を示す。
「あーそうか、それが明快か」
ここはKaz氏の読みが一歩先を行っていた。
Kaz氏「△3三玉には▲6七銀ですか?」
「▲6八飛じゃない?」
とこれは私。「△同銀不成には▲4五桂△2二玉▲3三銀△同桂▲同桂成△同玉▲4五桂△2二玉▲3二竜以下詰み」
▲3三銀には△1三玉で詰まないので、厳密には▲3三金が正着だが、とにかく詰む。
よって本譜は△3一玉だったが、これは私が一本取った。大盤解説も最高潮だが、ギャラリーの一部も静かに盛り上がっていたのだった。
(つづく)
だが現実は、渡辺明竜王の考慮が続いている。解説の大内延介九段は局面を前に戻し、第3図の△5五飛の1手前を△6六飛(変化図)に代えて解説する。大内怒濤流、とにかく大駒を切っちゃうのである。
「△6六飛▲同金△7七金▲9六玉に△8三桂、これが詰めろ」
私たちは聞き入る。「アタシたちの検討だと、以下▲8五歩△5五銀(参考図)、これがなかなか面白い手でねぇ」
以下▲同金に△7六金で後手十分ということか。
「(本譜)△5五飛の瞬間が甘い。▲8九桂が(意外に)いい手だったのかなあ…」
と、大内九段が独り言のようにつぶやく。「(本譜)▲5六桂に対して丸山さん(忠久九段)がどういう手を用意していたか、それが見えない」
大内九段は▲5六桂に未練があるようだ。「(本譜▲8九桂に△6五歩は、)これ正しいのかねぇ。△5七銀成るとどうだったのかなあ…」
どうも、△6五歩に▲5六金と強く出た手が好手だったようだ。
渡辺竜王の指し手はまだのようである。
大内九段「丸山さんの残り時間は? 3分? 3分で指せるのかねえ」
藤森女流四段「でも前回も(1分将棋で)すごかったですからねえ」
それはそうだが、本局は局面がかなり複雑化している。さすがの丸山九段も正着を続けるのは至難であろう。
第4図以下の指し手。▲5一角△5二玉▲9一飛成△8二銀▲7四角△6三桂▲同角成△同金▲8二竜△5一玉(第5図)
そこに▲5一角が知らされた。これは△5二玉で飛車取り。▲6七飛成では角を取られるので、▲9一飛成よりなくなった。それがやや変調にも見え、渡辺竜王、攻め急いだのでは? と思える。
「(▲9一飛成は)場合によっては▲8四角成(の上部開拓)を目指してるんですね」
大内九段が▲5一角の弁護?をする。もちろん▲9一飛成も大きい手なのだ。
△8二銀。大内九段は「ほぉー、丸山流のネバリですね」と感嘆する。「角を持てば△6九角で詰ましちゃおうということですね。
…渡辺竜王はどう指すのか。ちょっと手が見えないですね」
一応、という感じで「▲7四角△6三桂」を示したが、この攻めでは…という雰囲気だ。
「何か梶浦君いい手ある?」
大内九段が聞いてみる。駒操作の梶浦宏孝四段、ほとんど発言しないが、妙に存在感があるのだ。梶浦四段は答えず、
「何か▲6七同飛成とと金を取った方がよかったと思いますね」
と大内九段が引き継いだ。
本譜も▲7四角△6三桂と進む。やはりこう指すよりなかったようだ。
渡辺竜王は▲同角成、と食いちぎった。これは面白くなってきた、というところで、私の肩をポン、と叩く者がいた。
第5図以下の指し手。▲5二銀△4二玉▲6三銀不成△3一玉(第6図)
それはKaz氏だった。Kaz氏は連日仕事に忙殺され、解説を聴くどころではないはずだがそこはそれ、寸暇を割いて会場に来るのはやはり将棋バカなのであった。
大内九段は「▲5二銀△4二玉▲6三銀成△3一玉」を示す。しかしそれは▲2四歩△同歩▲2三歩がある。よって△3三玉に修正された。「…△3三玉▲9六玉で勝ちと見ているんでしょうか」
しかしそれは後手にも△6九角~△5四角の反撃があり、むずかしいとのこと。
「これはまだまだ大変な将棋ですね」
大内九段が、ふぅー、という感じで言う。と、Kaz氏が「▲6三銀成では不成でどうですか? これなら△5四角がない」と私につぶやく。
ナルホドそれは一理ある。つい銀を成って横に活用したくなるが、そこを堪えて不成、がいいのだ。
「どう梶浦君」
大内九段の問いに、梶浦四段が黙って「▲6三銀不成」を示す。
「あーそうか、それが明快か」
ここはKaz氏の読みが一歩先を行っていた。
Kaz氏「△3三玉には▲6七銀ですか?」
「▲6八飛じゃない?」
とこれは私。「△同銀不成には▲4五桂△2二玉▲3三銀△同桂▲同桂成△同玉▲4五桂△2二玉▲3二竜以下詰み」
▲3三銀には△1三玉で詰まないので、厳密には▲3三金が正着だが、とにかく詰む。
よって本譜は△3一玉だったが、これは私が一本取った。大盤解説も最高潮だが、ギャラリーの一部も静かに盛り上がっていたのだった。
(つづく)