一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

北海道鉄道網、壊滅

2016-11-29 12:47:43 | プライベート
やや旧い話になるが、11月6日の読売新聞に、衝撃的なニュースが載っていた。
それは「北の大地 縮む鉄路」という見出しで、JR北海道が今月中に赤字線区の見直しを行う、というものだった。全路線の約半分にあたる1237キロが対象で、うち3線区の179.4キロは廃止を前提に協議することになるという。
具体的には札沼線(学園都市線)・北海道医療大学―新十津川47.6km、根室本線・富良野―新得81.7km、留萌本線・深川―留萌50.1kmの3線である。
しかも残り10線区のうち2線区も、廃止の可能性があるらしい。
JR北海道よ、これだけ路線を廃止して、まだ廃止をしようというのか!?
これを論じる前に、JR北海道(旧国鉄)が今までどれだけ鉄道を廃止してきたか、一覧を記しておこう。路線名、区間、営業キロ、最終運行日の順に記した。

胆振線 京極―脇方 7.5km 1970.10.30
根北線 斜里―越川 12.8km 1970.11.30
札沼線 新十津川―石狩沼田 34.9km 1972.06.18
函館本線 美唄―南美唄 3.0km 1973.09.08
千歳線(旧)上野幌―東札幌 9.3km 1973.09.09
函館本線 東札幌―月寒 2.8km 1976.09.30
函館本線 桑園―札幌市場 1.6km 1978.10.01
函館本線 近文―旭川大町 2.9km 1978.10.01
夕張線 紅葉山―登川 7.6km 1981.06.30
白糠線 白糠―北進 33.1km 1983.10.22
万字線 志文―万字炭山 23.8km 1985.03.31
渚滑線 渚滑―北見滝ノ上 34.3km 1985.03.31
相生線 美幌―北見相生 36.8km 1985.03.31
岩内線 小沢―岩内 14.9km 1985.06.30
興浜北線 浜頓別―北見枝幸 30.4km 1985.06.30
興浜南線 興部―雄武 19.9km 1985.07.14
美幸線 美深―仁宇布 21.2km 1985.09.16
手宮線 南小樽―手宮 2.8km 1985.11.04
胆振線 倶知安―伊達紋別 83.0km 1986.10.31
富内線 鵡川―日高町 82.5km 1986.10.31
広尾線 帯広―広尾 84.0km 1987.02.01
瀬棚線 国縫―瀬棚 48.4km 1987.03.15
湧網線 中湧別―網走 89.8km 1987.03.19
士幌線 帯広―十勝三股 78.3km 1987.03.22
羽幌線 留萌―幌延 141.1km 1987.03.29
幌内線 岩見沢―幾春別 18.1km 1987.07.12
松前線 木古内―松前 50.8km 1988.01.31
歌志内線 砂川―歌志内 14.5km 1988.04.24
標津線 標茶―根室標津 69.4km 1989.04.29
標津線 厚床―中標津 47.5km 1989.04.29
名寄本線 名寄―遠軽 138.1km 1989.04.30
名寄本線 湧別―中湧別 4.9km 1989.04.30
天北線 南稚内―音威子府 148.9km 1989.04.30
池北線 池田―北見 140.0km 1989.06.03(翌日より第3セクター「ちほく高原鉄道」として営業。2006.04.21廃止)
函館本線上砂川支線 砂川―上砂川 7.3km 1994.05.15
深名線 深川―名寄 121.8km 1995.09.03
江差線 木古内―江差 42.1km 2014.05.11
江差線 五稜郭―木古内 37.8km 2016.03.25(翌日より第3セクター「道南いさりび鉄道」として営業)
留萌本線 留萌―増毛 16.7km 2016.12.04

いかがであろう。全線廃止26路線、部分廃止5路線。よくこれだけ廃止したものだ。
国鉄全盛時には、路線網を書くだけで北海道の形ができる、と言われたものだった。それほど隅々まで、路線が発達していた。
ところが1970年代に国鉄が斜陽になってから、徐々に廃止が始まった。来たる12月5日に留萌本線の留萌―増毛が廃止になるが、これも加えると、実に1764.6km!! 東京から鹿児島中央までの新幹線距離が1463.8kmだから、いかに路線を廃止したかが分かる。
ことに国鉄からJRへの移行期での廃止が顕著で、1989年4月29日と30日の2日間では、408.8kmが廃止された。この直後の路線図を見た私は、北海道で戦争が起こったのか? とブラックジョークを飛ばしたものである。
私が初めて北海道の鉄道に乗ったのは1986年夏だが、それでもかなりの路線が残っていた。当時は周遊券もあったし、どこへ行くのも鉄道利用だった。それが今は見る影もない。
上に書いた通り、これだけ廃止すればもう廃止するところはないじゃないか、と言いたいところだが、JRはまだまだ潰す気らしい。いや実際北海道のJRに乗っていると、絶望的に乗客が少ないのが分かる。
その原因はいろいろある。まず、地域自体に過疎化が進んでいる。どんなに路線網が充実しても、住民の分母が小さければ話にならない。
次に、住民がマイカーを利用するようになった。何時間かに1本の列車を待つより、待ち時間ゼロのクルマを使ったほうが便利だ。
さらに、道路が整備されたのが大きい。そこに特急バスがバンバン走り、しかも早くて安く、ほぼ座れるからこちらを利用してしまう。
さらにこれは北海道特有だが、JRが負担する除雪作業費がバカにならない。JR北海道の鉄道料金は東日本と比べてやや割高になっているが、それでも割に合わない。
私自身も、JR北海道で使えるトクトクきっぷがどんどん廃止されて、今ではバス乗車に軸足を移しているのだ。
頼みの北海道新幹線も、どれだけ北海道に恩恵をもたらしたか、ハッキリしない。
というわけで、明るい話題がひとつもないのである。
話を戻して今回廃止意向の3線だが、個人的にはいずれも思い入れがある。
札沼線は当旅行記でも何度も取り上げた通り、私が全国で最も好きな路線である。
根室本線には「日本一長い距離を走る普通列車」が走っていて私も乗車したことがあり、この区間が廃止になれば、当然その列車もなくなる。
またその途中には幾寅駅があり、ここは1999年公開の「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台である。これは廃止を迎える路線の老駅長が主人公なのだが、架空の話が現実のものになりそうとは、皮肉な話だ。
留萌本線の恵比島駅は、1999年朝のNHK連続テレビ小説「すずらん」の舞台であった。私は企画列車「SLすずらん号」の初日に乗り、恵比島駅(テレビでは明日萌駅)の前で記念写真を撮ったものだ。それが道内時刻表に掲載されたこともある。
さらに書けば、12月5日に廃止される留萌本線の終着駅「増毛」も、映画「駅STATION」の舞台だった。
しかし、映画やドラマに取り上げられたからといって、現役で残しておくほどJR北海道は体力はない。慢性的な赤字に加えて、今年開通した北海道新幹線の赤字が天文学的に大きく、ローカル線なんかとっとと潰してしまいたいのである。極論すれば、在来線は函館―(海線廻り)札幌―旭川と、札幌―小樽の路線だけあればいいのだ。

冒頭の協議会だが、ネット情報によると、18日に行われたようである。その結果を知るのが恐くて私は確かめていないのだが、上記3線は、来年春のダイヤ改正時に廃止になるだろう。また残り2線も、早晩廃止になると見る。
そして残りの路線のいくつかは、経営が上下分離方式になるようだ。経営を別々にするということだろう。つまり「ちほく高原鉄道」や「道南いさりび鉄道」のように、第3セクター方式にするかもしれない。

廃止予定の路線が北海道路線網から消える図を想像する。いや、恐ろしくて、想像するのもイヤだ。
北海道の鉄道網はもう終わった。役目を終えたのである。
今となっては、札沼線、根室本線、留萌本線の乗車記を当ブログにアップできたことが、せめてもの慰めである。
コメント
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