20日は第12期マイナビ女子オープン本戦2回戦・岩根忍女流三段と礒谷真帆女流2級の一戦があった。
「磯谷」とは聞き慣れない名だがそれもそのはず、LPSA大庭美夏女流初段のご息女で、この11月1日にLPSA所属で女流棋士になった、キラキラの新人である。
もっとも礒谷女流2級は以前から女流アマ棋界で活躍していて、数々の優勝経験がある。また女流公式戦にも何度か出場していた。本棋戦では本戦1回戦に勝ちベスト8に入ったことにより、女流棋士の資格を得た。その行使によるプロデビューで、このケースは初めてとのことである。
ところで磯谷女流2級には、彼女が小学生だったころ、私が芝浦サロンで対局したことがあるはずだ。当時の彼女は一言で言えば「根性の将棋」で、べつに女流棋士になったから言うわけではないが、彼女は強くなると思っていた。
さて本局、岩根女流三段は私もかつてファンだったが、ここは礒谷女流2級を応援する。岩根女流三段はマイナビで挑戦者になったこともある大豪だが、新人にコロッと負けるもろさもあり、礒谷女流2級にも十分勝機はあると思った。
将棋は先番岩根女流三段の三間飛車に、礒谷女流2級の居飛車銀冠穴熊。振り飛車党が多い女流棋士の中で、居飛車は頼もしい。
礒谷女流2級は以降も堂々と指し、徐々に優位を拡げているようだ。そして終盤戦となった。
第1図以下の指し手。△1五歩▲4三歩成△1六歩▲1八歩(第2図)
第1図は次に▲4三歩成が厳しいから、私なら何はともあれ△4四同歩と取る。しかし礒谷女流2級は△1五歩。対して私ならやはり▲1五同歩だが、岩根女流三段は▲4三歩成。一刻も早く2枚目のと金を作りたい気持ち、これもよく分かる。しかし△1六歩▲1八歩の交換となり、これは後手がポイントを挙げた気がした。
第2図以下の指し手。△5六馬▲同金△4七歩▲同銀△4八金▲3二と△同金▲5八金(第3図)
ここで礒谷女流2級の指し手が難しいと思ったが、△5六馬がすごかった。私は馬を大事にする派なので、この手は思いつかない。▲5六同金にじっと△4七歩。この3手を指せる女流棋士は少ないと思う。
▲4七同銀にベタッと△4八金。しかし岩根女流三段に3二金を取る手が回り、▲5八金と凌ぐ。
ここが分からないところで、普通は玉の腹に▲3八金と打つと思う。それだと何がいけなかったのだろう。だが▲5八金の局面も、冷静に見れば先手の駒得である。私は先手がよくなったのでは、と思った。
第3図以下の指し手。△6八竜▲同馬△2七香(投了図)
まで、礒谷女流2級の勝ち。
第3図で△2七香はわずかに詰まない、と長岡裕也五段の解説があった。
とはいえここでズバッと△6八竜がすごい。私は、礒谷女流2級が敗勢になり、ヤケクソになったと思った。ところが長岡五段の解説によると、▲6八同馬は今度こそ△2七香で詰むらしい。
それなのに岩根女流三段は▲6八同馬! 礒谷女流2級は△2七香と打ち、岩根女流三段が投了してしまった。
ええーーーっ!?
あまりの展開に、私はついていけない。どこかで逆転して岩根女流三段がいいと思っていたのにそれは錯覚で、ずーっと礒谷女流2級がよかったということか!?
投了以下は、▲2七同玉△1五桂▲1六玉△2七桂成▲同玉△1六銀▲2八玉△2七香まで。途中の△2七桂成がミソで、△2七銀と打ってしまうと詰まない。どうも、礒谷女流2級の快勝だったようである。
これで磯谷女流2級は本戦ベスト4により、2段跳びの女流初段に昇格した。実に13人抜きの快挙で、母の現役時代の肩書も抜いたのだった。磯谷女流初段、おめでとう!!
では改めて、礒谷女流初段の快進撃を振り返ってみよう。
●チャレンジマッチ
1回戦 女子アマ
2回戦 女子アマ
準決勝 長沢千和子女流四段
決勝戦 脇田菜々子アマ
●予選
1回戦 山口恵梨子女流二段
2回戦 島井咲緒里女流二段
決勝戦 里見咲紀女流初段
●本戦
1回戦 中村真梨花女流三段
2回戦 岩根忍女流三段
以上、9連勝。まずチャレンジマッチは女流棋士も出場するから、抜けるのは容易ではない。たとえば準決勝では、このたび女流王位リーグに入った長沢女流四段、決勝では現女流棋士の脇田アマと当たった。ここを抜けただけでも殊勲賞なのだ。
さらに一斉予選対局でも、実力者3人を負かしている。2回戦でLPSAの島井女流二段がアシストした形になったのはご愛嬌である。
そして本戦、中村女流三段、岩根女流三段のタイトル戦経験者を破ったのは見事で、女流初段の肩書は当然である。
というわけで、準決勝は里見香奈女流四冠と清水市代女流六段の勝者との対戦になる。どちらが来ても手ごわいが、勉強のつもりで楽しく戦えばよい。
「磯谷」とは聞き慣れない名だがそれもそのはず、LPSA大庭美夏女流初段のご息女で、この11月1日にLPSA所属で女流棋士になった、キラキラの新人である。
もっとも礒谷女流2級は以前から女流アマ棋界で活躍していて、数々の優勝経験がある。また女流公式戦にも何度か出場していた。本棋戦では本戦1回戦に勝ちベスト8に入ったことにより、女流棋士の資格を得た。その行使によるプロデビューで、このケースは初めてとのことである。
ところで磯谷女流2級には、彼女が小学生だったころ、私が芝浦サロンで対局したことがあるはずだ。当時の彼女は一言で言えば「根性の将棋」で、べつに女流棋士になったから言うわけではないが、彼女は強くなると思っていた。
さて本局、岩根女流三段は私もかつてファンだったが、ここは礒谷女流2級を応援する。岩根女流三段はマイナビで挑戦者になったこともある大豪だが、新人にコロッと負けるもろさもあり、礒谷女流2級にも十分勝機はあると思った。
将棋は先番岩根女流三段の三間飛車に、礒谷女流2級の居飛車銀冠穴熊。振り飛車党が多い女流棋士の中で、居飛車は頼もしい。
礒谷女流2級は以降も堂々と指し、徐々に優位を拡げているようだ。そして終盤戦となった。
第1図以下の指し手。△1五歩▲4三歩成△1六歩▲1八歩(第2図)
第1図は次に▲4三歩成が厳しいから、私なら何はともあれ△4四同歩と取る。しかし礒谷女流2級は△1五歩。対して私ならやはり▲1五同歩だが、岩根女流三段は▲4三歩成。一刻も早く2枚目のと金を作りたい気持ち、これもよく分かる。しかし△1六歩▲1八歩の交換となり、これは後手がポイントを挙げた気がした。
第2図以下の指し手。△5六馬▲同金△4七歩▲同銀△4八金▲3二と△同金▲5八金(第3図)
ここで礒谷女流2級の指し手が難しいと思ったが、△5六馬がすごかった。私は馬を大事にする派なので、この手は思いつかない。▲5六同金にじっと△4七歩。この3手を指せる女流棋士は少ないと思う。
▲4七同銀にベタッと△4八金。しかし岩根女流三段に3二金を取る手が回り、▲5八金と凌ぐ。
ここが分からないところで、普通は玉の腹に▲3八金と打つと思う。それだと何がいけなかったのだろう。だが▲5八金の局面も、冷静に見れば先手の駒得である。私は先手がよくなったのでは、と思った。
第3図以下の指し手。△6八竜▲同馬△2七香(投了図)
まで、礒谷女流2級の勝ち。
第3図で△2七香はわずかに詰まない、と長岡裕也五段の解説があった。
とはいえここでズバッと△6八竜がすごい。私は、礒谷女流2級が敗勢になり、ヤケクソになったと思った。ところが長岡五段の解説によると、▲6八同馬は今度こそ△2七香で詰むらしい。
それなのに岩根女流三段は▲6八同馬! 礒谷女流2級は△2七香と打ち、岩根女流三段が投了してしまった。
ええーーーっ!?
あまりの展開に、私はついていけない。どこかで逆転して岩根女流三段がいいと思っていたのにそれは錯覚で、ずーっと礒谷女流2級がよかったということか!?
投了以下は、▲2七同玉△1五桂▲1六玉△2七桂成▲同玉△1六銀▲2八玉△2七香まで。途中の△2七桂成がミソで、△2七銀と打ってしまうと詰まない。どうも、礒谷女流2級の快勝だったようである。
これで磯谷女流2級は本戦ベスト4により、2段跳びの女流初段に昇格した。実に13人抜きの快挙で、母の現役時代の肩書も抜いたのだった。磯谷女流初段、おめでとう!!
では改めて、礒谷女流初段の快進撃を振り返ってみよう。
●チャレンジマッチ
1回戦 女子アマ
2回戦 女子アマ
準決勝 長沢千和子女流四段
決勝戦 脇田菜々子アマ
●予選
1回戦 山口恵梨子女流二段
2回戦 島井咲緒里女流二段
決勝戦 里見咲紀女流初段
●本戦
1回戦 中村真梨花女流三段
2回戦 岩根忍女流三段
以上、9連勝。まずチャレンジマッチは女流棋士も出場するから、抜けるのは容易ではない。たとえば準決勝では、このたび女流王位リーグに入った長沢女流四段、決勝では現女流棋士の脇田アマと当たった。ここを抜けただけでも殊勲賞なのだ。
さらに一斉予選対局でも、実力者3人を負かしている。2回戦でLPSAの島井女流二段がアシストした形になったのはご愛嬌である。
そして本戦、中村女流三段、岩根女流三段のタイトル戦経験者を破ったのは見事で、女流初段の肩書は当然である。
というわけで、準決勝は里見香奈女流四冠と清水市代女流六段の勝者との対戦になる。どちらが来ても手ごわいが、勉強のつもりで楽しく戦えばよい。