一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

鈴木九段の新橋解説会(第31期竜王戦第3局)・2

2018-11-10 00:07:08 | 将棋イベント

第3図以下の指し手。△3三桂▲2四歩△4五桂▲同銀△同銀▲6三歩成△同金▲5五桂△6二金▲4三桂成△同金▲2三歩成△同銀▲同飛成△3二銀(第4図)

広瀬章人八段は△3三桂と跳ねた。封じ手△8六歩に▲同歩は必然だから、これは予定の手だった。
鈴木大介九段「個人的にはこの手がどうだったか。ここは△7五歩▲同歩△8四飛で、次は何が何でも△6四桂でどうでしたか」
羽生善治竜王は▲2四歩と伸ばし、△4五桂に▲同銀と食いちぎった。
「私なら▲4六角と逃げますけど、▲4五同銀は大方の予想でしたね。でもこれで銀損になりました」
以下▲2三歩成までと進む。
「この局面、自分の感覚では先手指せる」
と鈴木九段。
△2三同銀▲同飛成。「羽生さんが攻めてくるんだから恐いよね。この辺り、梶浦くんの見解はどう?」
「後手を持ってて生きた心地がしません」
と、梶浦宏孝四段が嘆息した。
確かにここでは先手が駒損をやや回復したし、私も先手が優勢に思った。

第4図以下の指し手。▲4四歩△4二金▲2五竜△5四銀▲2三歩△2一歩▲7三角成(途中1図)△同金▲4六桂△3三桂(第5図)

「▲4四歩。行きましたねー。△4四同金なら▲7三角成△同金▲5三竜」
△2三銀なら無論▲4三歩成で先手優勢だ。よって広瀬八段は△4二金と辛抱したが、「この利かしが入ったのは大きいです」。
△4二金に▲2五竜。「この3手が評判いいんですよ」
△5四銀に▲2三歩。「▲2三歩と打ちましたね。ここは▲2二銀△4一玉▲2四歩が部分的な手筋で、次に▲2三歩成を狙う。これも有力だったと思います」
△2一歩には▲7三角成(途中1図)と行った。「これはすごい手。でも角損になりましたね」

角換わりの将棋は、多少駒損でも攻めている側が有利、のイメージがある。本局も第2局に続いて角損の猛攻で、いやはやすごい。

第5図以下の指し手。▲2二銀△4一玉▲3三銀成△同銀▲2二歩成△同歩▲5四桂△同歩▲4五桂△4四銀▲4三歩△同金▲2二竜△3二銀(第6図)

ここで竜を逃げる羽生竜王ではなく、▲2二銀と打った。
鈴木九段「私なら絶対に逃げます。昨年の竜王戦もそうだったんですけど、羽生さんは積極的になりましたね」
以下▲4五桂までと進む。
「▲4五桂ですね。強くない人が指すと単調かなと思うんですが、羽生さんだから厳しく見えますね」
さらに羽生竜王の攻め、広瀬八段の受けが続く。

第6図以下の指し手。▲2一銀△同銀▲同竜△3一桂▲3二銀△5二玉▲4三銀成△同玉▲2二竜(第7図)

▲2一銀と打った。鈴木九段「私は打たないんじゃないかと思いましたが、打ちましたね。この手で▲4二歩はどうでしたか。△4二同金▲5三銀△同銀▲同桂成△同金▲4二歩△5二玉▲3二竜……。この順もあったと思いますが、玉を逃がす感じで指しにくかったですか」
銀交換のあと、広瀬八段は△3一桂と受ける。▲3二銀に△5二玉。
「ここから不可解な手が続くんですよ。羽生さんは▲4三銀成と金を取りましたが、▲3一銀不成として次に▲4二銀成を見て、先手が優勢だったんじゃないですか?」
確かにそうではあるが、この瞬間の竜と銀が若干重い形に見える。後手に切り返しの好手があるかもしれない。
羽生竜王は▲2二竜とし、これが▲4二金までの詰めろだ。

第7図以下の指し手。△4五銀▲4二金△5三玉▲5二金△6四玉▲4二竜△7五歩(第8図)

鈴木九段「普通は△3二銀と受けますね。これには▲3三金△同銀引▲同桂成△同銀に▲5二銀と迫ってどうか。
ところが広瀬さんは△4五銀と桂を外しました。これもすごい手です。
ここで普通は▲4四歩ですよね。△同玉は▲4二竜だし、△5三玉は▲3三竜だし……。ところが羽生さんは▲4二金と打ちました。
この辺りの羽生さんは、一目いい手を全部見送って、次善手を指している気がします。それは自分の形勢がいいと思ってるからなんですね」
確かに▲4二竜までと進んでみると、これはこれで先手勝勢に見える。
「ここではいくばくもなく、羽生さんが勝つと思いました。コントロールを意識し始めたということですね」
「コントロールとは?」
と藤森奈津子女流四段が聞く。
「野球で150キロを出してビュンビュン飛ばしていたピッチャーが、勝利を意識してスピードを落とし、コントロール重視で打者を打ち取るスタイルに変えた、ということですね」
クルマでいえば、安全運転にギアチェンジした、ということだろう。
広瀬八段は△7五歩と逃げ道を開けたが、いかにも苦しい。
しかし次の手は、私がどんな環境にあっても指せない手だった。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする