第2図以下の指し手。△4六歩▲同歩△同飛▲2一歩成△4九飛成▲3四歩△5一角▲3一と△3九竜▲2七飛△3四竜▲4一と△3三角▲3七飛△3六歩▲4七飛△4五歩▲5七桂△5四銀(第3図)
私は飛車を捌くしかない。JP氏はゆうゆう▲2一歩成。私は△4九飛成だが、桂損は痛い。
JP氏は▲3一とと活用したが、私は▲1一とと戦力を増強されるのもイヤだった。
△3九竜に▲2七飛は、▲3七飛のぶつけを狙っているので、私は△3四竜。何だか森安秀光九段の将棋みたいになってきた。
▲3七飛には△3六歩、▲4七飛には△4五歩とひたすら辛抱である。
ここでJP氏は▲5七桂。得した桂を急所に打たれ、私は困ってしまった。
と、ここでJP氏が「失礼」と席を外す。トイレに行ったのであろう。私は少考し△5四銀と上がる。これには▲6五歩△同歩▲4二角成△同角▲同とがイヤだが、ほかに受けようがない。
第3図から第4図までの手順は略。
左の山本氏は居玉で、今▲5六馬としたが、△3八銀と打たれ、何と必至になってしまった。ここは▲4九玉と寄っておけばこれからの将棋だったのに、何をやっているのだろう。山本氏、副将にいるくらいだから強いのだが、前回もまさかの見落としをやって負けていた。もう少し注意深く指してもらわないと困る。
それより私の将棋である。5分以上経ったが、JP氏はまだ戻ってこない。このまま戻って来なければいいのだが……などと考えていたら、戻ってきた。8分くらいのロスで、これは大きい。
第3図からJP氏は▲1八香。まったく予想していなかった手で、これまでの読みが無駄になった。
私は△8四歩~△8五歩と目障りな角を追ったが、これは8四に空間ができて、よくなかった。今思えば、△8四歩では△2五竜と桂取りに入る手があった。
本譜は以下、中央でごちゃごちゃあり、第4図となった。途中、JP氏が▲4二と捨てたのが何かの錯覚と思う。ここは▲5五の歩を▲5四歩と伸ばし、と金作りと角交換を見せられたら、私が悪かったと思う。本譜は喜んで△4二同角と取り、気が付けば先手の飛車を蟄居させ、盤面を制圧している。これは私が優勢になったと思った。
第4図以下の指し手。▲3七桂△同歩成▲5五銀△2七歩成▲6六角△1七と▲7五歩△7六桂▲7四歩△6八桂成▲同金△2八竜▲5八歩(第5図)
が、ここで▲3七桂が強烈な勝負手だった。対してじっと△3五竜と寄りたいが、▲5五銀△同竜は先手の駒だけ捌かせている。この少し前、△3五にいた竜で△2五竜▲2八歩の交換を入れたのだが、それが裏目に出た形だ。
ともあれ逃げるのはシャクなので△同歩成としたが、JP氏は▲5五銀。ここも難しいところで、△同竜は▲3七飛で、あの飛車が息を吹き返す。それで△2七歩成と飛車を取りにいったのだが、これは本筋でない気がした。
JP氏は▲7五歩。対してよほど△6二桂と打とうと思ったのだが、7六に桂馬用の穴が開いたので、魅入られるようにそこに打ってしまった。
以下▲7四歩には△6八桂成から竜を入り、好調に思ったのだが……。
第5図以下の指し手。△4七歩成▲6四銀△5七と▲7三歩成△同銀▲7五桂△7一桂▲5五角△6四銀▲同歩△同角▲同角(投了図)
まで、JP労組B氏の勝ち。
△4七歩成にJP氏は3七の桂馬に触れた後、▲6四銀と力を溜めてきた。私は△5七との攻め合いだが、▲5八歩がいいブロックになっていて、相手玉が見えない。気が付けば、押さえ込みの将棋が攻め合いになっている。まだ私が有利と思うが、この進行はおかしいと思った。
▲7五桂には△7二金打も考えたが、節約して△7一桂。ところが▲5五角のノゾキが殊の外厳しく、ここに至っておのが敗勢を意識した。何ということだ!
私は時間に追われて△6四銀だが、黙って▲同歩がまた憎い。次の▲6三歩成が受けにくく、私は△同角と払ったが、▲同角で即詰み。急転直下の終局となった。
「いやこの将棋を負けるとは……」と、私は局面を第4図まで戻す。▲3七桂にJP氏は△3五竜を考えていたという。以下▲5五銀△同竜▲4五桂右。ここで私が△4四銀打(参考図)を示し、これは後手指せる、の結論になった。
本譜は穴熊相手に攻め合いの形になってしまい、これはダメである。何でもう少し辛抱できなかったか……。結果的にだが、△8五歩と△7三桂も悪手になってしまった。
ほかの選手の勝敗を聞くと、何と全敗。今大会2度目の屈辱となった。
席を離れると、Wパパ氏がいた。ちょうど第4図の局面をスマホに撮っていたので、進行を見てもらう。
飛車を取ったあたりはW氏も「いいね」と言ったのだが、その後の展開に「これは後手がいいところを攻めてるね」となった。W氏も同じ見解なら仕方ないか。
いやしかし冷静に考えたら、あの遊んでいる飛車を取りに行く手はなかった。
実はあまり知られていないが、将棋に勝つコツは、いかに相手に遊び駒を作らせるか、なのだ。そしてそれが、相手にコンプレックスを植え付ける最上の方法と云ってもいい。
本局でもそれは達成されていたのに、私はみすみすそれを放棄してしまった。まったく何をやってるのか……。
髪の毛が抜けるがごとく悔しかった。
(つづく)