一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

鈴木九段の新橋解説会(第31期竜王戦第3局)・4

2018-11-12 00:31:32 | 将棋イベント
もっともそこは抜かりなく、梶浦宏孝四段に代替問題が用意されていた。すなわち、
「広瀬(章人)八段は、北海道のどこ出身でしょう?」
である。候補手は
「1. 札幌 2.稚内 3.釧路」
私は釧路と思ったが、どうなのだろう。
今回も前回と同じ賞品などが用意されたが、私はまたも応募しなかった。
用紙を配っている間、話は続く。鈴木大介九段「私、羽生さんが勝って4-0もあるかと思ったんで、この敗戦は意外でした。…ウン? これが今回の竜王戦扇子ですか。広瀬さんは「見進」……。ケンシン。逆から読むからシンケン? 何だろ。
……いやー、しかし羽生さん、この将棋を落としたのはでかすぎますね」
と、鈴木大介九段が我ことのようにボヤく。「優勢の将棋を落としたのが痛い。しかも次は後手番ですからね。これ負けたら2-2だもんね。もう分かりません」
ちょっと時間が早いので、中盤辺りから再検討になった。
「広瀬さんが△6五歩と仕掛けたんですよね。ここで羽生さんは考えたんですよ。先手番だから攻める手を。あのう、細い攻めを繋げるのは渡辺(明)棋王がうまいんですけど、実は羽生さんもうまいんですよ」
まあ、それはそうであろう。
「そして△8六歩の封じ手ですよね。これが2日制ならではの手で、応手を▲8六同歩に限定して、その先を考えた。それが△3三桂だったんですけど、リスクが大きい。この手は何分使いました?」
藤森奈津子女流四段「2分です」
「だからね、1日制なら、△7五歩▲同歩△8四飛とやったと思うんですよ。だけどなまじ封じ手になったから、ほかの手を掘り下げて予定変更しちゃった。
端的に言うと、あそこで△3三桂と跳ねる人は100人中10人でしょう」
鈴木九段はこの△3三桂がよほどお気に召さなかったようである。
「だけど羽生さんも攻めまくって、とても40代後半の人の指す将棋じゃないね。将棋は若々しくいかないといけないんですね」
「凛々しく、ですか」
「……そう、凛々しく。
中盤△2一歩と受けさせたところでも、筋は▲3五歩なんですよ。しかし△5八角がある。それで角を切って▲4六桂と行ったんですけど、この辺りは、私将棋会館で見てたんですよ。先手良しに思えました。
その後△3二銀に本譜は▲2一銀と打ったんですけど、黙って▲5三銀もありました」
鈴木節は止まらない。
「だけど△5二玉に▲4三銀成のところねえ、あそこは▲3一銀不成でしょう。そんなに難しくない。どう梶浦君、梶浦君ならそこでどう指す?」
そこで梶浦四段が「△6一飛」と遠慮気味に答えた(参考3図)。

「ロクイチヒ!? ……いい手だね……。梶浦君強くなったね。△6一飛いい手じゃない。
△6一飛は今までにない鋭さがあるよ」
鈴木九段が弟子を褒めた。
「本譜▲2二竜には△3二銀だと、▲3三金△同銀引▲同桂成△同銀▲5二銀△5三玉▲3三竜△4三歩▲同桂成△同桂▲4四歩(参考4図)で先手勝ちでしょう。

だから広瀬さんは△4五銀と桂を外したんですが、ここで▲4二金ねえ。そうでも▲4四歩は打つでしょう。
▲4二金はすごい手だけど、躓きの元になりました」
私もその説に一票で、ここで▲4二金は絶対打てない。
「▲4二竜に広瀬さんの受けが難しい。△6三金は▲6二金がありますからねぇ、でも△7五歩は損した受けに見えます。▲4五竜に△5五桂と受けても、▲5六金があります。それを羽生さんは▲7五同歩。……でもここでは、羽生さんは自信があったと思います。
ここで△5八角、この手を羽生さんは軽視したんじゃないでしょうか。だって▲4五竜で後手は絶体絶命に見えるもんね。だけど詰めろじゃない。
あのー、将棋界では藤井さんの終盤が別格ですね、何しろ詰将棋選手権で4連覇してますから。……あ、藤井さんはもちろん『聡太』さんのほうですよ。『猛』さんのほうは平○だから……猛さんは序盤の天才。
実は広瀬さんも詰将棋選手権でいつも上位にいて、広瀬さんの詰将棋を解く力はすごいです。▲4五竜は詰まないという判断能力が素晴らしい」
鈴木九段の解説は「絶口調」である。
「そして△6八歩ですよね。この辺りは、広瀬さんが今まで耐えてきた怒りが爆発しました。普通は△7五金だもんね。最短で勝って今後に繋げた、ということですね。
第4局はシリーズを占う大きな一番です。広瀬さんは負けられない。羽生さんもいい将棋を落として流れは悪いですが、羽生さんはこういう流れを何度も断ち切ってきてますからね。第4局に勝って、第5局、第6局で1-1でいいと考えているでしょう」
ここで抽選が終わったようだ。クイズの正解は1の「札幌」で、総応募数69人のうち、45人が正解した。ちなみに稚内、釧路と答えた人は、7人と17人だった。当選者は男性2人、女性1人だった。
「梶浦君は今期の加古川清流戦で決勝(三番勝負)に進出したんですよね。私は現地に見に行きましたヨ」
と、最後に鈴木九段は言った。結果は残念だったが、師弟愛が分かるエピソードだった。鈴木九段は弁舌滑らかで、とても楽しかった。
さて第4局は24日と25日に行われるが、土日になるのでSL広場は使えない。よって次の解説会は第5局、12月5日(水)に開催される。私はその日に時間があれば伺うが、現状ではその可能性が高いのが情けない。
コメント (2)
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