アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリング、コンサルティングを行っています。
アドラー心理学による勇気づけ一筋40年 「勇気の伝道師」   ヒューマン・ギルド岩井俊憲の公式ブログ



おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。

アドラーの本の紹介の4冊目としてアドラーの1929年の著書『個人心理学講義―生きることの科学』について解説していますが、今回は、その、さらに2回目です。

この本は、かつてミネルヴァ書房から『子どものおいたちと心のなりたち』(岡田幸夫/郭麗月訳)というタイトルで1982年に出ていましたが、こちらは絶版。



その後、一光社の鈴木大吉社長がこの本の出版を快諾してくれて、1996年に岸見一郎さんの、非常に読みやすい訳で出たいきさつがあります。

今回は、アドラーがこの本の中でバラバラに語っていることをピース(断片、手がかり)に、ジグソーパズルを作り上げるようにしながら「劣等コンプレックス」についてたっぷりと、そして「優越コンプレックス」について補足的に、そしてさらに、「劣等感」を、最後には、「劣等コンプレックス」と「優越コンプレックス」の対極にある「共同体感覚」についてお伝えします。


結論をまとめると、次のようになります。

1.アドラーは、劣等コンプレックス、優越コンプレックス、劣等感について次のように識別しています。

「劣等コンプレックス」は、「異常な劣等感」(P.58) で「ほとんど病気」(P.59)だと言っています。「劣等感の過度な状態に他ならない」(P.63)と書いている箇所もあります。

②「優越性の追求の過度な状態」(P.63)である「優越コンプレックス」のことをアドラーは、「劣等コンプレックスを持った人が、困難から逃れる方法として使う方法の1つ」であり、劣等コンプレックスとともに常に、人生の有用でない(注:非建設的な)面」にあり、「不適応が生じた後の結果を表している」と表現しています。

「劣等感」は、劣等コンプレックスと違って、「病気ではなく、むしろ健康で正常な努力と成長の刺激」だとし、次のように肯定的に表現しています。

「すべての人は劣等感を持ち、成功と優越性を追求します。このことがまさに精神生活を構成します。しかし、あらゆる人がコンプレックスを持っていないのは、劣等感と優越感が共同体感覚、勇気、そしてコモンセンスの論理によって、社会的に有益(注:建設的)なものとなるよう利用されるからです」
(P.195)

2.アドラーは、劣等コンプレックス、優越コンプレックスの対極に、精神的な健康のバロメーターとして「共同体感覚」を置き、次のように書いています。

「共同体感覚と社会適応は、[劣等感の]正しく正常な補償です」(P.196)

「共同体感覚は、徐々に育つものです。子ども時代の最初から共同体感覚の方向に訓練され、いつも人生の有用(注:建設的)な面で努力している人だけが、実際に共同体感覚を持つのです。このため人が本当に異性との生活に対して準備ができているか否か判断することは、格別困難なことではありません」(P.210)

「人生の有用(注:建設的)な面にいる人は、勇気があり、自信があります。そのような人は、人生の課題に直面し、解決を求めていこうとします」(P.210)

「社会適応は、劣等性の問題の裏面です。人間が社会の中に住んでいるのは、個人が劣っており、弱いからです。共同体感覚と社会的な協力は、それゆえ、個人を救済するものなのです」(P.239) <「結論」の最後の部分>


これで劣等コンプレックス、優越コンプレックス、劣等感、それに加えて共同体感覚についてアドラーがどう語っていたかご理解いただけたでしょうか。


<お目休めコーナー> 自宅近くのお寺のつつじ



コメント ( 0 ) | Trackback ( )