おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
今回は、アドラーの『生きる意味を求めて』をより詳しくご紹介します。
さて、『生きる意味を求めて』を読み解くことに関して申し上げたい柱は、次の2つです。
1.アドラーの目的論・・・・この②で取り上げ
2.人生の意味を共同体感覚と結びつけて・・・・③で取り上げ
アドラーは、当時の心理学者が信じて疑わなかった因果律を人間の精神生活にあてはめることを批判します。
「精神生活におけるあらゆる見かけの因果律は、学説を機械的、あるいは、物理的な装いのもとに作り上げようとする多くの心理学者の傾向に起因している」そして、「このような見方では、人間の精神生活が示す根本的な多様さを見ることは、ほとんどできない」(序言P.4-5)
さらにアドラーは、因果律に代わる目的論(アドラーの表現では「完成を求めての努力」)を次のように表明します。
「個人心理学は、・・・(略)・・・すべての人間の努力は完成を求めての努力である、と見なしている。身体的であれ精神的であれ、生を渇望することが、この努力と結びついていることは動かすことができない。それゆえ、われわれが知る限り、表現形式はいずれもマイナスの状況からプラスの状況への運動であるように見える」(第2章P.30)
そして、自分の理想と現状のギャップから生じる劣等感が完成を求めての努力を駆り立てる感情であると言います。
「この運動の法則は、人によってテンポ、リズム、方向が違う。達成できない理想の完成と自分とを絶え間なく比べるので、常に劣等感にとらわれ、駆り立てることになる」(第2章P.30)
続いて、「達成できない理想」、言い換えれば、「究極目標」を「魂の目標」という言い方をしながら、次のように示しています。
「人間の魂の目標は、克服、完成、安全、優越性である」(第9章P.120)
こう読み解いてみると、アドラーが、人間精神の営みを機械的・物理的法則を用いて説明することを拒否し、人間精神にふさわしい原理を打ち立てた初めての心理学者だったことがよりクリアになります。
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