おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
「アドラーを読もう」の第11回目、7冊目の後半は、『人はなぜ神経症になるのか』の後半部分、「セラピー論」です。
前回は、『人はなぜ神経症になるのか』から次の2つだけを拾い上げ、「アドラーの言葉を忠実に引用しながら読者にアドラーの意図するところを提供します」と書きました。
1.ライフ・スタイル論―優越性の追求と関連づけて
2.セラピー論
それでは、後半の今回は、アドラー言葉を引用しながら彼のセラピー論を4点に絞ってご紹介します。
1.セラピーは、(1)協力的な人間関係を基盤として、(2)クライエントのライフ・スタイルの誤りを洞察しつつ、(3)目標の一致を図りながら進めること
「患者と医師の双方に共通する課題であり、この両者の協力関係の基盤となるのは、患者の誤りの本質を理解することです。そのためには、患者の生涯の決定的な段階をありのままに理解するだけではなく、その動的な統一性を、優越性に向かっての絶え間ない無意識的な追求の努力として認識しなくてはなりません」(第1章、P.7)
2.セラピーの際、クライエントのライフ・スタイルを変化させるにあたっても、(治療モデルよりも)教育モデルを採用すること
「神経症者、精神病者、そして問題行動のある子どもたちの行動のうちに、ある種の不可避性、過去からどうしても起こる結果を認めないわけにはいきません。苦心して作り上げた人為的な態度は誤った訓練の論理的な結末であり、このような結果だけを矯正しようとしてもほとんどどうすることもできません。より深い動機、すなわち、根底にあるライフ・スタイルを変化させなければならないのです。そのようにして初めて、患者は自分のあらゆる人生の課題を新しい視点で見るようになります」(第2章、P.29)
3.セラピーは、クライエントのニーズに応じた貢献をしつつ、共同体感覚を究極目標として、クライエントが人生の建設的に向けて行動できるよう勇気づけること
「最高のニーズに対してそれに応じた貢献をしなければなりません。・・・(略)・・・患者の共同体感覚は、常にある程度は存在するものなのですが、カウンセラーとの関係の中で、できうる限り最善の表現をとることができます。いわゆる『抵抗』は、人生の建設的な面へと戻る勇気を欠いているということに過ぎません。このことは治療抵抗を引き起こします」(第5章、P.91)
4.セラピーにおいては、セラピストの最高の技術、巧みさが必要とされること