付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「クリス・クロス」 高畑京一郎

2012-10-07 | VRMMO・ゲーム世界
 読む順番を間違えたなあと思います。
 最初に『眠れる龍』を読んで「本の世界に入り込むというのはあったけれど、今度はゲーム世界かあ」と思い、最近になって『スカイワールド』を読んで「今はMMORPGなのね。『クジラのソラ』とか『エンダーのゲーム』とかゲームのつもりがリアルだったという話はあったけれど」と喜んでいて、『ログ・ホライズン』もその手の話と教えられて面白いと喜び、さらに『ソードアート・オンライン』もゲームに世界に入り込んで戻れなくなったプレイヤーたちの物語と訊き、意外にこの手の話は多いし、どれも面白いなあと喜びながら絨毯爆撃。
 面白いと思った作者やテーマがあれば、一通り集中的に集めて読み進むのが常なのですけれど、そうした中でひっかかってきたのが本書。

 日本が総力を結集して作り上げたスーパーコンピュータMDB9000<ギガント>。
 その性能をプロモーションすべく開発されたのが、仮想現実世界での冒険を体感できるという「ダンジョントライアル」。だが、その一般試写会に参加した256人のプレイヤーは、自分たちが帰還不可能な世界にいることに気がついた……。

 これも面白いのだけれど、発表当時に読んでなければいけなかった。仮想現実ゲーム世界を舞台にしたデスゲーム小説としては古典の部類。この本のあおりでは「日本初バーチャルRPGノベル」ということだけれど、先行する『クラインの壷』という話もあるので「初」ではないかも。どちらにしても、後続の作品と比してゲーム小説というよりサイコホラー的なテイストが強いのが特色です。
 仮想の「現実」とリアルな「現実」の境界にテーマの根幹が隠されていたり、ゲーム世界に入り込むのにカプセルに入って薬物投与と催眠暗示が必要とか、ゲームの内容がウィザードリイを意識したダンジョンゲームだとか、最大プレイ人数が256人だとか、結末がある種の「政府は真相を隠している」かもな陰謀論だったり、いろいろ時代を感じさせる作品です。
 テーマがテーマだけに仕方がないけれど、キャラクターや物語に魅力が見出せないのが残念でした。

【クリス・クロス】【混沌の魔王】【高畑京一郎】【きがわ琳】【電撃文庫】【MMORPG】【朗読劇】【管理者権限】【におい】
コメント
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