レイ・カミングスなんて作家はほとんど知らなかったし、たまたま読んだ作品が2本ともタイムトラベル・ネタだったので、それ専門の作家かと思ったら違っていました。トーマス・エジソンの秘書として働いた経験もあり、SFパルプ小説の父の1人に数え上げられているらしい。
ロジャースとロトの科学者親子は、真空放電管の実験中に別の空間を映し出してしまう。そこで2人が見たのは、雪に覆われた荒野を逃亡し捕らえられる美少女の姿だった。
放電管から飛び出した電子が化学処理幕にぶつかって生み出した小さな窓が別の時間への出入口であることを突き止めた2人は、ヘリコプターを改造してタイムマシンを建造。サイエンスクラブの仲間たちに見送られ、息子ロトは美少女救出に2万8千年先の未来へと旅だったのだが、そこは退廃的な貴族文化を謳歌するアラン族、奴隷同然の労働に酷使されるバス族、そして科学文明を温存し、ときおりの世界介入だけをプライドの拠り所にしている科学族の3層に別れた社会となっていた……。
「タイムマシンが加速するにつれ、眼下の都市はみるみる成長していった!」というフレーズは『ぬすまれたタイムマシン』と同じですね。確かにビジュアル的にインパクトが強くて、気に入っていたのでしょうか。
本当に古い作りの話です。冒頭に科学者の発明品とその原理についての説明が延々と続き、後半はひたすら戦いが続きます。偶然の発見といきあたりばったりの冒険、出会った美少女はやはり見た目の通りの善人でたちまち主人公と相思相愛に!と、いかにもパルプ雑誌。
ただ、後半の悪の科学者が率いる軍勢との戦闘シーンは、その内容と訳語の古めかしさが今となっては味になっている気がします(お奨めはしませんが)。
『機動戦士ガンダムF91』に登場した対人感応殺傷兵器「バグ」みたいな「空飛ぶ回転ナイフ」が大暴れしますし(こちらは磁力で人間を感知しているようです)、雷電銃を持った兵士が巨犬にまたがって戦場を疾駆する姿は『ガンパレード・オーケストラ』の山岳騎兵みたいです。一周しちゃったという感じの格好良さですね。ハヤカワ文庫SFの51冊目ということで無数の作品から選りすぐられたセンス・オブ・ワンダーは伊達ではありません。
そして、読んでいて目を引いたのは女性兵士の描写です。他の描写が案外とおざなりというか通り一遍なくせに、浮遊服に身を包んだ2個小隊26名の「科学族少女隊」の描写がやけに細かいんですね。
「みんな、ほっそりした優雅なからだつきで、そのほとんどが二十歳以下だった。ゆるやかにまとったパンタロンとブラウスの黒い紗をすかして、少女たちの白い手足が見える。頭髪に深紅色のゴム布を巻いて額をぴたりとかくし、頭のうしろで結んで、その端をたらしている。彼女たちは優雅な姿勢で左わきに推進筒をかかえ、大空を進軍していった」
ね。少女飛翔兵たちの姿が脳裏に映し出される気がしませんか?
もっとも、戦場では美少女といえども弾が避けてくれるはずもなく、最終的には10名にまで減っています。損耗率62%……壊滅ですね。
【時間を征服した男】【レイ・カミングス】【斎藤伯好】【斎藤和明】【雷電銃】【磁力兵器】【自爆】
ロジャースとロトの科学者親子は、真空放電管の実験中に別の空間を映し出してしまう。そこで2人が見たのは、雪に覆われた荒野を逃亡し捕らえられる美少女の姿だった。
放電管から飛び出した電子が化学処理幕にぶつかって生み出した小さな窓が別の時間への出入口であることを突き止めた2人は、ヘリコプターを改造してタイムマシンを建造。サイエンスクラブの仲間たちに見送られ、息子ロトは美少女救出に2万8千年先の未来へと旅だったのだが、そこは退廃的な貴族文化を謳歌するアラン族、奴隷同然の労働に酷使されるバス族、そして科学文明を温存し、ときおりの世界介入だけをプライドの拠り所にしている科学族の3層に別れた社会となっていた……。
「タイムマシンが加速するにつれ、眼下の都市はみるみる成長していった!」というフレーズは『ぬすまれたタイムマシン』と同じですね。確かにビジュアル的にインパクトが強くて、気に入っていたのでしょうか。
本当に古い作りの話です。冒頭に科学者の発明品とその原理についての説明が延々と続き、後半はひたすら戦いが続きます。偶然の発見といきあたりばったりの冒険、出会った美少女はやはり見た目の通りの善人でたちまち主人公と相思相愛に!と、いかにもパルプ雑誌。
ただ、後半の悪の科学者が率いる軍勢との戦闘シーンは、その内容と訳語の古めかしさが今となっては味になっている気がします(お奨めはしませんが)。
『機動戦士ガンダムF91』に登場した対人感応殺傷兵器「バグ」みたいな「空飛ぶ回転ナイフ」が大暴れしますし(こちらは磁力で人間を感知しているようです)、雷電銃を持った兵士が巨犬にまたがって戦場を疾駆する姿は『ガンパレード・オーケストラ』の山岳騎兵みたいです。一周しちゃったという感じの格好良さですね。ハヤカワ文庫SFの51冊目ということで無数の作品から選りすぐられたセンス・オブ・ワンダーは伊達ではありません。
そして、読んでいて目を引いたのは女性兵士の描写です。他の描写が案外とおざなりというか通り一遍なくせに、浮遊服に身を包んだ2個小隊26名の「科学族少女隊」の描写がやけに細かいんですね。
「みんな、ほっそりした優雅なからだつきで、そのほとんどが二十歳以下だった。ゆるやかにまとったパンタロンとブラウスの黒い紗をすかして、少女たちの白い手足が見える。頭髪に深紅色のゴム布を巻いて額をぴたりとかくし、頭のうしろで結んで、その端をたらしている。彼女たちは優雅な姿勢で左わきに推進筒をかかえ、大空を進軍していった」
ね。少女飛翔兵たちの姿が脳裏に映し出される気がしませんか?
もっとも、戦場では美少女といえども弾が避けてくれるはずもなく、最終的には10名にまで減っています。損耗率62%……壊滅ですね。
【時間を征服した男】【レイ・カミングス】【斎藤伯好】【斎藤和明】【雷電銃】【磁力兵器】【自爆】