付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「僕とおじいちゃんと魔法の塔(1)」 香月日輪

2010-02-16 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「どんどんやれ!! 人間は体制に反抗するものだ。そうやって歴史を作ってきた。お前たちが親という体制に逆らうのは、歴史の必然というやつだ!!」
 孫たちを煽り立てるアナーキーな祖父、陣内秀士郎の言葉。

 陣内家は仲が良く、堅実な家族。けれども、それが小学6年生の龍神には息苦しくてたまらないときがある。
 そんな龍神がサイクリングで出かけた岬で見つけた黒い塔には秘密があった……。

 この世で最も質の悪いのは「善人」だと秀士郎は言います。自分が正しいと信じていることが他人からどう思われているかなど考え無しに邁進する。別の視点というものを持たない人々。歴史的に見れば、そんな狂信者はごろごろいますが、そこまでいかなくても「やらなくていいことにまで口を出す“立派な”人」はいくらでもいるわけで、なんとなくそういう人たちの主張に巻き込まれてしまうのか、あくまで自分の主張を貫けるのか、そんな命題を押しつけられたことを意識した小学生の物語です。
 気になるのはただ1点。p134に「すべからく」の誤用があります。だから「すべからく」は「すべて」の強調形じゃないんだってば!

【僕とおじいちゃんと魔法の塔】【香月日輪】【使い魔】【魔法陣】【徒競走】
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「とらドラ!」 竹宮ゆゆこ

2010-02-15 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「誤解されても仕方がない。誤解されたら、解けばいい」

 目つきの悪さと母親まかせのファッションから誤解されがちだけれど、高須竜児はみんなが第一印象で思いこむほど凶悪なやつではなかった。新学年を迎えた彼の望みは、女子ソフトボール部長の櫛枝実乃梨と同じクラスになることだったのだが、そこで遭遇したのは手乗りタイガーこと逢坂大河。かけねなしに凶暴でわがままでちっちゃい少女であり、実乃梨の親友だった……。

 誕生祝いに「萌えコン」をもらってしまったのです。『とらドラ!』キャラのデカールで飾りつけた痛車のラジコンですな。でも『とらドラ!』を読んだことがなかったので、これを機会にと手をつけてみました。
 「ちっちゃくてドジ」という属性と「凶暴でわがまま」という属性がうまくバランスとれていて、それをひとことで「手乗りタイガー」と表現したのは言い得て妙というやつですね。こういうラブコメはキライじゃないです。周囲の聞き耳を気にもせず、誤解を拡大再生産していく2人がかわいいなあ。

【とらドラ!】【竹宮ゆゆこ】【ヤス】【目つきの悪い主人公】【手乗りタイガー】【ラブコメ】【ジャンピング土下座】
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「さよなら、ジンジャー・エンジェル」 新城カズマ

2010-02-14 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
『本屋さんでは、何もかもが動いていたのだ』
 ブックス・ロクサーナでバイトを始めた結城継美は、本屋がイメージのようにのんびりした世界ではなかったことを知った。

 気がついたら幽霊になっていた警察官。やることもないので、生前と同じように警らと派出所の立ち番を続けていたが、ふと目にとまった本屋でバイトしている女子大生がやけに気になり、ストーカーだぞと幽霊仲間たちから揶揄されながら少女の身辺に気を配っていたのだが……。

 常識ではあり得ない前提条件を積み上げていくことで真相に近づく独特の謎解き、あるいは登場人物たちがかわす書籍をネタにした、ちょっとペダンティック(衒学的)な会話の数々と、いかにも新城カズマらしいミステリで、幽霊話で、たぶんラブストーリー。ただ、これまでの新城カズマ作品と比較すると、主人公の性格でしょうか、つんつんトゲトゲしたところがなくなっています。熟成してまろやかになっている感じです。表紙絵が緒方剛志と知ってちょっと驚いたのと同じ感覚。
 この話に登場する「ジンジャーブレッドマン」の絵本は実はいろんなバリエーションがあり、自分が読んだことがあるのはロシア民話バージョンだった気がします。

【さよなら、ジンジャー・エンジェル】【新城カズマ】【緒方剛志】【本屋】【殉職者】【ナルニア国物語】【架空言語】【ゾンビ】【時間】
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「竜と勇者と可愛げのない私」 志村一矢

2010-02-13 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
『人間なんて、そう簡単に替わるものじゃありません。他人が変わることに期待するぐらいなら、自分が二倍がんばったほうが建設的というものです』
 王宮魔術士アンジュ・セレッソの達観。

 誰よりも優秀でありながらアンジュがヒラの魔術士の身分のままなのは、彼女が平民出身だから。
 そんな彼女が世界を救うための魔王退治に送り出されることに!
 彼女が付き従うのは、竜騎士の血を引くだけのアホタレ王子。これは素質を見出されたからなのか、それともていの良いやっかい払いなのか?

 ドラクエなどのRPGで、明らかに魔王が襲来したり世界が危機に陥っているというのに、送り出される勇者にろくな装備も支援も与えられないのはそういう理由かと、なんとなく納得させられた話でした。すっきりとした筋立てで、軽く読める長編ファンタジーの第1章といったところですが、通し番号が打たれていないのは、この巻の売れ行き次第ということかな。
 でも、いまどきの勇者御一行は、勇者+魔術師+メイドなのかい……。いや、これはこれでバランスのとれた3人パーティーだと思いますが。

【竜と勇者と可愛げのない私】【志村一矢】【ぎん太】【魔法使い】【勇者】【魔王】【メイド】【ゴーレム】【ゾンビ】【ネクロマンサー】
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「海街diary3 陽のあたる坂道」 吉田秋生

2010-02-12 | その他フィクション
「金のために死ぬ必要なんかありません。生きてナンボです!」
 いざとなったら手はいくらでもあると、鎌倉八幡信用金庫で融資を担当する香田佳乃の言葉。

 本の編集にはそのジャンルを好きでない人もいると聞いてびっくりしたこともありますが、できた本を売る本屋も本を読まない人が多いんだそうで、某書店の従業員の過半数が「普段本を読まない」「単に採用条件から応募した」人なんだそうです。なんでこんなことを言い出したかというと、この本が「少年マンガ/青年マンガ」の棚に突っ込んであったからで、そりゃどうよ?
 ちなみにこの巻は小学館と双葉社の鎌倉合同フェアということで、『鎌倉ものがたり』の試し読み小冊子が挟み込まれていました。こいつのせいで青年マンガと誤認されたのかも。

【海街diary】【陽のあたる坂道】【吉田秋生】【四姉妹】【一周忌】【アロマテラピー】【花火大会】【梅ジュース】【面掛行列】【鎌倉ものがたり】
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「幕末魔法士~Mage Revolution」 田名部宗司

2010-02-12 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「恐怖を感じないことが勇気じゃない。恐怖を感じて、それでも前に進むことを勇気と呼ぶんだ」
 誰かの受け売りの言葉。

 蘭学として西洋魔術の知識が伝えられ、社会を少しずつ変革しようとしている幕末。大崩壊で絶滅したエルフ語とドワーフ語で書かれた古文書の翻訳を依頼された緒方洪庵の名代として松江藩へ派遣された適塾の門下生、久世伊織は1冊の魔導書に出会う……。

 幕末ファンタジー。幕末といって長崎とか京都とか江戸ではなく、出雲国から話が始まるというのも面白い。
 作品単体としても悪くはないけれど、良いイラストがついてさらに良くなったという感じです。あえて注文を付けるなら、クライマックスが物足りなかったのです。
 もちろん話は悪くありません。蘭学を学ぶ男装の魔法士と、剣の達人の若者。この2人が出会い、惹かれつつも反発し合い、巨悪に挑むのだけれど……結局、勝敗に決着をつけたのが、彼らが苦労して身につけた魔法でも剣の技でもないというあたりが残念。努力より素質? そのあたりが引っかかりました。

【幕末魔法士】【Mage Revolution】【田名部宗司】【椋本夏夜】【ミスリル銀】【神隠し】【魔法陣】【シーボルト】【銀山】【隠密】
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「ツマヌダ格闘街(7)」 上山道郎

2010-02-11 | スポーツ・武道
「大切なことは『正義』と『現実』をわけて考える!ということです」
 いくら正しいことをしても、それで死んでしまっては意味がないとドラエ・ドリャーエフ。

【ツマヌダ格闘街】【上山道郎】【ストリートファイト】【護身術】【丸ごと水着】【座禅】【エマ】【海の王子】【オバケのQ太郎】【ドラえもん】【忍者ハットリくん】
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「ガンパレード・マーチ 逆襲の刻~弘前防衛」 榊涼介

2010-02-11 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「軍は一種の特殊社会であり、その既得損益を守ろうと必死になるものです。自らが滅ぶまで戦争に執着する」
 浅井総合研究所・浅井遊馬の言葉。

 シベリア方面から東北に侵攻してきた新たな幻獣勢力との戦いを描く『逆襲の刻』の3冊目です。

 文字通りエース部隊として戦線を切り裂き、孤立した味方のハリネズミ陣地へと物資を運ぶ隊列を守って戦う5121小隊。彼らのような華々しい戦いはできないけれどと、その足もとで大きな犠牲を出しつつもゴブリンの掃討を続ける学兵たち。
 けれども、クーデターの余波で優秀な憲兵・防諜スタッフは首都圏に張りつけとなり、その間隙をぬって幻獣共生派が台頭。またクーデターを起こした主戦派もまだ完全に制圧しきれてはいなかった……。

 動員・編成から補給の大事さまで戦争のシビアさを忘れないと同時に、学生らしい陽気さを忘れない姿も描いてきた榊ガンパレですが、このシリーズは息抜きが少なくて泣けてきます。
 今までは「人ならぬ敵」との戦いと割り切ることで敵を倒しても良心の呵責にとらわれることはありませんでしたが、「幻獣も別世界の人間が変異した姿」と提示され、それと入れ替わるようにこの期に及んで主導権を握りたいという人間同士の殺し合いがクローズアップされていきます。
 せめて大阪第4師団のしぶちんぶりを、もう少し見たかったなあと思いました。

【ガンパレード・マーチ】【逆襲の刻】【弘前防衛】【榊涼介】【きむらじゅんこ】【テロ】【首相暗殺】【こたつにみかん】【北海道】【シベリア】
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「食堂かたつむり」 小川糸

2010-02-10 | 食・料理
 恋人に裏切られ、残されたものは「ぬか漬け」の壺1つとなった倫子は故郷へと帰る。田舎の母親とは不仲だったが、喪失の衝撃から失語症となった倫子には、そこしか居場所が残されていなかったのだ。
 山あいのふるさとに戻った倫子は小さな食堂を始めた。それは成功も危ぶまれる、一日一組のお客様だけをもてなす、メニューのない食堂だったが……。

 これなら味皇さまの記憶も戻るよね!と思いました。
 倫子がそんなに腕の良い料理を作れたのかとか、経営は成り立つのかとか、きちんと経理は記録しているのかとか、気にならないでもなかったけれど、話としては面白く読めました。料理もかなり美味しそう。でも、夜中にお腹が空くほどではなかったかな。料理の描写も細かいけれど、なにより人と人、人と自然の結びつきの物語です。

 ネット書評を読んでいたら、意外にも内容に嫌悪感を抱くものが多くて笑いました。現実に目を背けて、ほんわりのほほんと夢を追いたいだけの人にはこの展開が不評なのも分かります。でも、食用犬チャウチャウだって愛玩犬としてかわいがられることもあれば、その逆もあるのが「世界」というものだし「生きる」ということなんですけどね。
 自分の子供の頃は「釣った魚は食え」と教えられました。食べもしないのに命を弄ぶな。人間も自然の営みの一部なのだと。

【食堂かたつむり】【小川糸】【鳩】【ふくろう】【ブタ】【ぬか漬け】
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「アンギャマン」 左剛蔵

2010-02-09 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 文字通り、大阪から伊勢まで歩き続けた6日間の行脚を、背景をすべてカラー写真にしたコミック形式で描き綴った写真マンガ。
 わたしはこういう旅行記は好きなのだけれど、ヒゲの男と目玉人間が歩き続けるだけの話なので、とにかく“潤い”はありません。
 こういう旅も、自分がシニア(現ベンチャー)スカウトのときにやったけれど、とにかく野宿する場所探しに苦労しました。山の中でいちばん手頃なのはバス停の待合所なんだけれど、そういうところって野グソが放置したまんまとか荒れ果てているんですね。観光地近くだと、そもそもテント張られるのも周囲が嫌がるので、いったいどうやって過ごしたか記憶から抜け落ちるくらい忘れたい記憶です。
 良い思い出というと、日本海側から太平洋側へ横断したときにゴールの長島温泉でゆっくり風呂に入ったことかな。歌謡ショーでは狩人が歌っていて、大浴場では隣の女湯を覗こうとしたのか親父が螺旋階段で足を滑らせて転がり落ちていたことくらいが思い出です。

【アンギャマン】【リアル遠足伊勢巡礼編】【左剛蔵】【貧乏徒歩巡礼】
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「動物園の鳥」 坂木司

2010-02-08 | ミステリー・推理小説
「同じ人間はいないんだからさ、違うこと考えるのが当然なんだよ。それを無理やり同じにしようとするから、いじめとか仲間外れが起こるんだよな。違うなら違うで、話し合って近寄ればいいだけのことでさ」
 そういえるようになった利明は、どちらかというといじめっ子の側だった中学生。

「全部の人に好かれようなんて、どだい無理な話よ。誰とも摩擦を起こさない聖人君子なんているわけないもの。(中略)ただ、相手の言うことには耳を傾けるようにしている。もしかしたら、相手が言ってることが在ってるかもしれないし」
 滝本美月は人に嫌われることを怖れない。

 サミー・デイビス・ジュニアは偉大だったなあとあらためて思いました。

 鳥居と坂木が栄三郎爺さんの頼みで引き受けたのは、彼の友人がボランティアをしている動物園で頻発している野良猫虐待の解決だった……。

 ひきこもり探偵シリーズの完結編でもある3冊目は、動物園界隈を舞台にした長編です。大きな謎はないけれど、登場する人々がそれぞれ心に抱え込んだ歪みそのものが大きな謎と言えるでしょう。トリックや動機を追及するのではなく、それぞれの心の闇を解きほぐす物語です。そして、ついに坂木は滝本に後押しされて、自分自身の心の闇と向かい合うのです。
 テーマとして終始一貫していましたが、新キャラの女子高生・美月が良い感じ。ちゃらんぽらん警官の滝本の妹ながら、毒舌というか他人に嫌われるのを怖れない一刀両断ぶりが快感になりそうです。
 坂木司の他の作品も追いかけてみようかと思いました。

【動物園の鳥】【坂木司】【文庫版特別付録付】【レシピ】【畠中恵】【ホームレス】【いじめ】【オイコラ警官】【ミルクティー】【じゃがいものピュレ】【ロイズの生チョコ】【ポトフ】
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「Replace」 柏枝真郷 

2010-02-07 | ミステリー・推理小説
「世の中、謎が多い方が面白い」
 古屋敷の言葉。

 稼業の町の本屋を廃業し探偵事務所に転職した青年には、ある不思議な能力があった……。

 超能力は出てくるけれど超能力SFというほどではなく、探偵物語だけれどミステリイというほどではない、帯の宣伝文句通りの話。
 ドラマ化すると役者の魅力で光りそう。後はもう少し会話にユーモアが欲しいかな。

【Replace】【リプレイス】【柏枝真郷】【宮城】【893】【誘拐】【地上げ】【元警察署長】【元税務職員】【元書店員】
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「空色パンデミック(1)」 本田誠

2010-02-06 | 超能力・超人・サイボーグ
 『空色…』と聞いて『空色みーな』と連想してしまった私はダメ親父です。

「見つけたわよ、ピエロ・ザ・リッパー! ジャスティスの仇、とらせてもらうわ!」
 高校受験の朝、いきなり見知らぬ少女に雑踏のど真ん中でそう叫ばれたら、人はどう行動すべきなのだろう?
 それが仲西景と穂高結衣の出会いだった。
 結衣さんは“空想病”だ。発作を起こすと、自分の空想上の存在になりきってしまうのだ。
 これは、れっきとした病気だ。単なる妄想癖ではない。幸いにも結衣さんは違ったけれど、劇場型空想病ともなると周囲も自分の空想に巻き込んでしまい、最悪のケースとしては過去に世界を滅ぼしかけた事例もあったらしい……。

 セカイ系だけれどセカイ系ではない、不思議なボーイ・ミーツ・ガールの学園ストーリー。いきなり1巻とか書かれているけれど、これだけでも完結しているといえばいえるので、試しに手を出しても損はないと思います。

【空色パンデミック】【本田誠】【セカイを敵にまわす時】【庭】【第11回えんため大賞優秀賞】【ボーイ・ミーツ・ガール】【ギャラ】【感染】
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「新・特捜司法官S-A(10)」 麻城ゆう

2010-02-05 | 超能力・超人・サイボーグ
「君が、僕の理想のネオヒューマンだったんです」

 シリーズ完結。『特捜司法官S-A』の物語もおしまいだそうです。
 大団円かどうかは読む人にお任せということですが、安心して読み終えることのできたシリーズでした。
 頭脳も肉体も「人間」以上であり、警察から司法まで犯罪に対する生殺与奪のすべてを与えられた存在でありながら、あくまで“道具”として耐用年数が過ぎれば破棄されるしかない「合成人間」の特捜司法官。今回はそれに第三の存在として、「人間」を継ぐ者として台頭しつつある「ネオヒューマン」を絡めての事件でしたが、ここは「人間」vs「ネオヒューマン」だけでなく、「合成人間」も絡めてのテーマにまで発展させて欲しかったなと、そこが残念。
 それから、全体として伏線を張って回収する流れにちょっとムラがあって、10巻になってバタバタと畳まれた印象がありました。いや、10巻で大団円を迎えようとは、9巻を読み終えた時点では想像できませんでした。
 そんなことを言いつつも、面白い物語であり、愛おしいキャラクターたちでした。

【新・特捜司法官S-A】【ジョーカー外伝】【麻城ゆう】【道原かつみ】【スポンサー】【超高度量子通信システム】【メル友】
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「グロリアスドーン2・3」 庄司卓

2010-02-05 | バイオシップ・人工知能
「アウグストダスクは頭が悪いのですが、トランクルナイトは性格が悪いです」
 ティセによる妹評。

 地球人を共生のパートナーに選んだbioクラフトの物語は、審判の四姉妹、刃の次女<黎明>ことティセ・グロリアスドーンの2人の妹とティセに付き従う騎士級bioクラフトのアイシャ・ノーブルウィンドの登場編とあいなります。

 “頭が悪い”ティル・アウグストダスクが悪いbioクラフトに騙されていた頃、“性格が悪い”方の収穫の四女<宵闇>ことティオ・トランクルナイトのbioパートナーとなった中学生・逢瀬桜子は、犯罪行為をおこなうbioパートナーを襲撃してはパートナー契約を強制解除させていた。
 それはbioクラフトに関わる問題はbioクラフトによって解決するという原則からは外れていなかったが、桜子のニセモノが犯罪を犯してもいないbioパートナーまで襲撃し始めたことから、事件は大きくクローズアップされることになった……。

 もうちょい、もうちょい……かなあ。3巻のエピローグに大バケしそうな予兆を感じ取りましたが、まだ個々のキャラがかみ合っていない気がするので今後に期待。
 なにせスケールが大きい話です。日常でシュークリームは完璧な丸の形になっていないと大騒ぎするレベルのやりとりがおこなわれる一方、ちょいと飛び立っては遙か彼方の恒星系に出かけてきたり、本気で姉妹ゲンカをしたら銀河系の1つや2つは消えてしまうという何万光年レベルの話を同列でやっています。このかみ合わせが、まだしっくりきていません。エセ日系アメリカ人ことクイックストーンさんとか、『王子さま先生』とか、まだちょいとばかり浮いている気がしないでもありません。

【グロリアスドーン2】【少女は夕暮れに遊ぶ】【グロリアスドーン3】【少女は宵闇に彷徨う】【庄司卓】【四季童子】【シュークリーム】【目玉焼き】
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