many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ホーキング、宇宙を語る

2010-03-23 21:37:49 | 好きな本
スティーヴン・W・ホーキング 林一訳 1989年 早川書房
はい、「理科」の話です、これまで「生物」ばかり挙げてきましたが、「物理」で唯一と言っていいでしょう、初めておもしろいと思ったのは、これ。副題は「ビッグバンからブラックホールまで」。
帯の背に「超ベストセラー」とあります。1989年6月15日が日本の初版発行、私の持っているのは同年9月10日の13版。大学の生協に積んであったのを手に取ったんだったかな、いろいろ勉強してたころです。
「進化」を中心にした生物の話は好きだったんだけど、物理はずっとキライでした。高校生のころから。おもしろくない。でも、宇宙のはじまりがどうとか、宇宙の果てがどうとかってのは、わりと興味ある。
だから、相対性理論も何も知らない私が、この本を読んでみようと思ったのは、ただの偶然なんだけど、生物とか宗教とか文学とかのすべてのジャンルの本と比較しても、これは飛び抜けて面白いもののひとつに入った。
なにが、そんなにいいかというと、冒頭の「謝辞‐まえがきにかえて」に
この本の中に数式を一つ入れるたびに、売れ行きは半減すると教えてくれた人がいる。そこで、数式はいっさい入れないことに決心した。しかし、とうとう一つだけは入れることになってしまった。アインシュタインの有名な式E=mc2である。
とあるとおり、およそ物理・数学の話っぽくないところである
20世紀前半の偉大な知的達成である一般相対性理論と量子力学で、科学者は宇宙を記述してるらしいんだけど、どっちも全然理解していない私でも、この本は読み進むことができる。
その二つの理論はたがいに矛盾するらしいんだが、これらを取り込んだ新しい一つの統一した理論をつくることが、物理学の目標らしい。
一つの完全な統一理論をまとめ上げること、そんなことは私にとって、初めて出くわした新しい視点だった。しかも当時の私は、統計を使うことを学んでたんで、95%オッケーなら十二分って感じだったんで、だいたいのことは理論どおりなんだけどビッグバンの一瞬だけ理論が破たんするってことで苦悩している学問の存在は、刺激的というか、びっくり!ですらあった。
数学つかったり何だかんだするけど、要は、どーやったら矛盾なく物事を説明できるかってことらしい。ものを粒って考えるか波って考えるか、あるいは弦でできているってほうが当てはまるんだったら、そう考える、そんな視点を最初に紹介してくれれば、私だって物理ぎらいにならなかったかもしれない。(←そうでもないな、きっと、もっと若いときに、そう言われても「そんなん、どっちだっていいじゃん!」って受け付けなかったかも
宇宙の法則を理論的につきつめていくのも面白そうだけど、やっぱ、この本で初めて知った、空間は曲がってるとか、時間は絶対的ぢゃないとか、ってのが楽しい。宇宙は膨張しているってのは、漠然とは感じてたんだけど、今どうなってるのか、いつか膨張が止まるのかなんて考えたことはなかったし。
不確定性原理とか素粒子ってのも、何をどう考えるときに使うものなのか、はじめてこの本で知ったんだと思う。特に、ひとつの粒子の位置と速度を同時に正確に知ることはできないってのは、衝撃だったなぁ、ほとんど実生活に関係ないんだけど、その事実が。あとは、ブラックホールって、SFマンガ的なイメージしかなかったんだけど、その存在がマジメな話で何の問題にかかわってるのかって、知らなかったし。
知らないことだらけの私の蒙を啓いてくれた、この本の存在には感謝することばかりです。
要は、物理でも生物でも、それこそ宗教でも何でもいいんだけど、知識欲っていうか、知りたいことってのは、宇宙はどうやって生まれたとか、宇宙を支配している法則は何なのかとか、時間って何なのかとか、なぜ私たちは生まれこうして生きてるのか、ってことだと思うんですよね。それに応えてくれるものがあれば、それは物理の教科書でも、文学でもマンガでもなんでもいいんです、私にとっては。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする