フィリップ・K・ディック 小尾芙佐訳 昭和52年 ハヤカワ文庫
きのうのつづき、『ブレードランナー』の原作は、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』なんだけど、その作者フィリップ・K・ディックの長編。持ってるのは昭和61年の5刷。
冒頭から何の説明もなく独自の世界が展開されて、そこにムリヤリ引き込まれるように物語が始まります、2203年のことですが。
けっこう退廃的な感じの世界で、ひとはそれぞれの階級みたいのを持ってるんですが、そのトップの座は、ときどきランダムなくじ引きみたいなもので決定されることで選ばれます。
(原題は「SOLAR LOTTERY」。)
その最高権力者みたいなひとは、「クイズマスター」と呼ばれてて、実際「クイズがすこしは役にたった。高価な製品を買えない人々にクイズであてる望みをあたえた。」って説明が第2章でされてるんですが、クイズ自体は物語のなかに出てきません。それもちょっと謎めいてます。
(最初に出版されたときの邦題は「太陽クイズ」。)
このクイズマスターに対して、選ばれた刺客が殺しに行くことが公けに認められているというのが、また不思議な世界です。なんでそうなってるのか、ちょっとこの世界の秩序がいつどうやって作られたのかはわかんないですけど、そーゆーもんだって思わされてグイグイ読んでくことになります。
その刺客から最高権力者を守るのが、超能力集団で、どうやらそういう官僚組織っぽいんですが、「ティープ」と呼ばれる、人の考えていることを読むことができる能力をもつ者たちです。
どうでもいいことのようで、「レプリカント」もそうかもしれないけど、こういう独自の作られた用語が出てきたときに、スッと受け入れられるかどうかが、SFを読むときに大事なことかもしれません。「なんぢゃ、そりゃ?」っていちいち突っかかってると、どうも先に進みにくいですから。(でもホントは私は得意ぢゃないんだよねー。言語を発明されちゃうとついてけないし。)
で、そういう権力闘争と、もうひとつ宇宙の遠くにある『炎の月』なる天体を探しにいく宇宙船の旅と、ふたつの物語の流れがあわさって進んでくんですが、なーんかいまひとつ、何が言いたいのかわかりにくいストーリーではあります。まあ、勧善懲悪の安っぽいスペースオペラとは違う、そこがディックのSFの面白いとこなんですが。
物語全体の流れよりも、ランダムな権力転移によってその座を追われた陣営が、新しいクイズマスターに対する最初の刺客を送り込むんだけど、超能力者たちの防御網を破るために、刺客にほどこした細工に関するアイデアが秀逸で、どうなるんだろうって興味をそそられる部分ではあります。
きのうのつづき、『ブレードランナー』の原作は、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』なんだけど、その作者フィリップ・K・ディックの長編。持ってるのは昭和61年の5刷。
冒頭から何の説明もなく独自の世界が展開されて、そこにムリヤリ引き込まれるように物語が始まります、2203年のことですが。
けっこう退廃的な感じの世界で、ひとはそれぞれの階級みたいのを持ってるんですが、そのトップの座は、ときどきランダムなくじ引きみたいなもので決定されることで選ばれます。
(原題は「SOLAR LOTTERY」。)
その最高権力者みたいなひとは、「クイズマスター」と呼ばれてて、実際「クイズがすこしは役にたった。高価な製品を買えない人々にクイズであてる望みをあたえた。」って説明が第2章でされてるんですが、クイズ自体は物語のなかに出てきません。それもちょっと謎めいてます。
(最初に出版されたときの邦題は「太陽クイズ」。)
このクイズマスターに対して、選ばれた刺客が殺しに行くことが公けに認められているというのが、また不思議な世界です。なんでそうなってるのか、ちょっとこの世界の秩序がいつどうやって作られたのかはわかんないですけど、そーゆーもんだって思わされてグイグイ読んでくことになります。
その刺客から最高権力者を守るのが、超能力集団で、どうやらそういう官僚組織っぽいんですが、「ティープ」と呼ばれる、人の考えていることを読むことができる能力をもつ者たちです。
どうでもいいことのようで、「レプリカント」もそうかもしれないけど、こういう独自の作られた用語が出てきたときに、スッと受け入れられるかどうかが、SFを読むときに大事なことかもしれません。「なんぢゃ、そりゃ?」っていちいち突っかかってると、どうも先に進みにくいですから。(でもホントは私は得意ぢゃないんだよねー。言語を発明されちゃうとついてけないし。)
で、そういう権力闘争と、もうひとつ宇宙の遠くにある『炎の月』なる天体を探しにいく宇宙船の旅と、ふたつの物語の流れがあわさって進んでくんですが、なーんかいまひとつ、何が言いたいのかわかりにくいストーリーではあります。まあ、勧善懲悪の安っぽいスペースオペラとは違う、そこがディックのSFの面白いとこなんですが。
物語全体の流れよりも、ランダムな権力転移によってその座を追われた陣営が、新しいクイズマスターに対する最初の刺客を送り込むんだけど、超能力者たちの防御網を破るために、刺客にほどこした細工に関するアイデアが秀逸で、どうなるんだろうって興味をそそられる部分ではあります。
