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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

リバーズ・エッジ

2011-01-04 20:34:18 | 岡崎京子
岡崎京子 1994年 宝島社
岡崎京子の、私が持ってるのを、なるべく出版順に、これまで並べてきたんだけど。
ここへきて、ちょっと止まってしまった。
なぜなら、いよいよ『リバーズ・エッジ』の番になっちゃったからだ。
これについて語る言葉を、しばらく考えてたんだけど、やっぱ私は持たない。
(いままで他のものもそうなんだけど、意外と「好きな本」だからって、ふつうより雄弁になれるわけでもない。自分が好きなものについて書くのは難しいねえ。)
この作品は、ヲカザキの最高傑作として挙げられることが多いと思う。
それだけぢゃなくて、日本のマンガの行きついた頂点とさえ言われることだってある。
私がそのことに気がついたのは(っていうのは、自分以外の人の評価も高いってことを認識したのは)遅いんだけどね。
たとえば『文藝別冊 総特集 岡崎京子』(2002年河出書房新社)に「岡崎京子作品徹底レヴュー」って章があるんだけど(これは私がヲカザキ作品を年代順に並べるときに役立ってます。)、そこに、こうあります。
コミックのジャンルすら超える正真正銘の名品。少なくともこの一〇年、日本の現代文学にはこの作品を超えるような収穫があったろうか?(略)「こういうのにあげれば芥川賞も落ち目にならないのに」と関川夏央が皮肉れば(略)石原慎太郎東京都知事は「近頃の新人作家なんか目じゃねぇや」と太鼓判(略)
と、そういうことです。私もそう思います。
(いわゆる)文学はマンガよりエライ、マンガはくだらない、と思ってるひとは、読んだらいいと思いますが、まあそもそもそういうひとに理解できるかどうかはわかんないけど。
最初読んだときは、なんか勢いに任せたまんまだったけど、何回も読むと、けっこう深い。

河口にほど近く流れも淀んだ河のちかくの学校に通う高校生たちが主人公。
若草ハルナさんは、同級生の観音崎くんという彼氏がいるんだけど、最近ちょっと冷めてる感じがしてる。
その観音崎くんはけっこうイジメっ子で、山田くんというキレイな顔した男の子をいじめてんだけど、若草ハルナさんは山田くんのことが気になってる。
若草ハルナさんは、いじめられた山田くんを助けてあげたことがあって、そのときの御礼に山田くんから秘密の宝物を見せられる。宝物っていうのは、その河原の草むらんなかにある、誰だかわかんない死体。この死体をみるたび勇気がわくんだっていうのが山田くんの言いぶん。
もうひとり、その死体の存在を知っているのが一学年下の吉川こずえさん。吉川こずえさんも、この死体をみるたびに世のなかに対してザマーミロって思う、すべての虚飾をどけた真実がここにあると思ってるタイプ。
吉川こずえさんはモデルで、小さいときから働いて家族を養ってた。すごい量を食べるだけ食べても、直後にほとんど吐くことで、モデル体型を維持している。彼女は保健室で寝不足を解消することがあるんだけど、そこで知り合った若草ハルナさんに興味を持っている。
山田くんは同性愛者で、でもダミーで田島カンナさんという女の子と付き合ってることにしてる。
田島カンナさんは、かっこいい山田くんを彼氏にしてることがうれしいんだけど、山田くんがホントに自分のこと好きなのか不安に思ってる。そして山田くんに近づいている若草ハルナさんに憎しみをいだく。
ところで、小山ルミさんは、若草ハルナさんの友だちのひとりなんだけど、誰とでもやっちゃうタイプで、観音崎くんともたびたび遊んでる。
っつーことで、狭い高校生同士のなかでの、うまくかみあわない愛憎がからみあって、悲劇が起きるんだけど。
最初読んだときは、ごく普通である主人公の若草ハルナさんが、ちょっとヘンな山田くんや吉川こずえさんに関わったばっかりに、数奇な運命に巻き込まれた展開と思ったんだけど。
読み返したら、どうもそうぢゃない。若草ハルナさんは、ちょっと普通ぢゃない何かを持っている。だから山田くんや吉川こずえさんを惹きつけちゃうし、死体を見ても平気なんである。
そこらへんを、最後のほうで「大丈夫よ あの人は何でも 関係ないんだもん」と吉川こずえさんに喝破されちゃう。
彼女の不思議な資質は何なのか。そんな彼女の感情が揺れ動くポイントがいくつかあるんだけど、それは何なのか。最後に彼女が泣くのはどうしてなのか。読み返すと、そんなことが、すごく気になる。
コメント
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