CHIROMORPHOLOGY(カイロモルフォロジー)という単語を知っている人は、いるだろうか。多分いないだろう。この単語は、東大理学部大学院教授である黒田玲子博士の造語で、CHIRAL(キラル、左右非対象)と、MORPHOLOGY(モルフォロジー、形態)を併せたものだ。
昨日、黒田さんの講演を聞く機会があった。頭が切れる人で、本当に絶対敵わないという人に出会うことが多々あるが、黒田さんもその一人だ。仙台出身(ここだけは親しみがわく)、お茶大卒業、東大博士課程終了、ロンドン大学....。
今の研究テーマも、CHIROMORPHOLOGYで、...講演でもちょと触れられていたが、ほとんどわからない。同じ原子から出来ていても、一つの部分が、非対称に組み合わさっていると、正反対の性質を持ったり、それを二つ組み合わせると、全く別の展開をしたりということらしい....多分全然間違って理解していると思うが。
でも、講演の内容は、ひじょうに面白かった。ひと言でいうと、今、国際競争が激化している中で、頭脳(スキル、ノウハウ)の勝負になっているのだが、残念ながら、日本は、すっかり出遅れている。今の科学者、将来の科学者候補を、いかに日本で育て、日本に確保するかを、早急に、真剣に考えるべきということだ。
シンガポール駐在時代、日本の頭脳とまで言われた先生が、日本の大学定年後、シンガポールに迎えられ、理想的な研究室で、優秀な学生と共に研究を継続したことが話題になった。たまたまその先生の講演を聴く機会もあったが、黒田さんと全く同じことをおっしゃっていた。今日の小泉総理のメルマガでも、ノーベル賞を取られた野依博士が同じことを述べている。
シンガポールでは、海外に移住した著名な博士を呼び戻すプロジェクトも行っていたし、各年代の超優秀者を指定して(スターAプログラムだったかな)、徹底的な英才教育を施すプログラムも持っていた。
資源のない点ではいっしょのはずの日本の策は?
その他にも、女性に理科系の人が少ないが能力的な差は全くないこととか、科学が進歩すると白黒はっきりするように思うが逆にグレーゾーンが増えるとか、ダイオキシン騒ぎは根拠レスで、美しき科学的誤解によるものであること(横浜市は、それも理由にゴミ焼却炉を減らしているのだが)などなど。
研究だけではなく、科学全体の振興のための活動や、科学者と一般庶民をつなぐインタープリターとしての活動も行っている。
黒田さんのような人に文部大臣になっていただき、日本の教育を根本から見直してもらいたい気がしたのは私だけではないだろう。
年齢は私と一回り違うようなので(失礼!)、もしかすると黒田さんの頭脳も、近い将来海外流出(失)してしまうのかもしれない。無策が国を滅ぼさないといいが。