
今日は、福岡伸一さんの講演に行ってきた。
福岡さんのフェルメール好きは、有名で、リメイクした作品の展覧会も開いて話題になった。
銀座の時は、行ったが、それをNYでもやり、今は、恵比寿でやっている。
単なるコピーではなく、作った時の色を再現しているところが凄い。
しかし、なぜ生物学者の福岡伸一さんが、フェルメールなのかわからなかった。
今日、その謎が解けた。
福岡さんは、大の昆虫好きで、昆虫オタクだったのだという。
そして、顕微鏡を買ってもらい、ますますハマり込んでいった。
その顕微鏡を発明したのが、デルフトに住むアントニ・ファン・レーベンフックという人で、何とフェルメールと誕生年が一緒。かつ、近所に住んでおり、福岡さんは、子供の頃から、フェルメールの名前を知っていたのだという。
そして、生物の分子の世界まで入り込む生物学者になった。
そして、まだ解明されていなかった、DNAの謎に、マウス実験などを通し、取り組んでいたのだという。
そして、生物学には、動的平衡という考え方があり、常に、細胞は、古いものを捨て、新しいもと入れ替えることにより、生命体を維持していことを知る。食べ物を食べて生きているが、それは、ガソリンとは違い、体の一部になっていく。
だから、1年後の体は、細胞が全て入れ替わっている。特に、消化器系の入れ替わりが早いのだとう。
そして、NYのロックフェラー大学で研究をしていた頃、フリックコレクションでフェルメールの絵を見て、大感動を受ける。
そして、フェルメールの絵を、本来展示されているところで、全部見るというプロジェクトを思いつき、10年ほどで達成(ボストン美術館から盗まれたものは、当然見れていない。個人蔵や、エリザベス女王所有のものは、なかなか見れないそう)。
そして、次には、額縁まですっかり再現し、かつ制作時の色を再現したコピーを作製することを思いつき、展覧会までやってしまった。
NYで開催した時には、本物を所蔵する大富豪に、コピーの絵を譲る事件?なども発生。
最初に出てきたアントニ・ファン・レーベンフック氏は、顕微鏡で発見したものを、詳細に記録を残しているが、その記録を丹念に研究。
その中で、挿絵は、絵が下手なので、他人に書かせたという記録を発見。
その絵が、極めてうまく、そして、ある年を堺に急に稚拙になることも。
そして、その年が、何と、フェルメールが亡くなった年で、前期の絵は、フェルメールが描いたと推測している。確かに、描き手が変わったことは、素人でもわかる。
もし、それが本当であれば、凄い大発見であるが、フェルメールは、習作や、デッサン類を全く残しておらず、それ以上の検証のしようがない。
落ちは、真珠の耳飾りの女を所蔵するマウリッツハイス美術館からCM出演を依頼されたこと。
いきなり、美術館から電話があり依頼されたのだという。
当時、福岡氏は、NYにアパートを借りており、真珠の耳飾りの女の複製を壁に飾っていたのだが、それと同じ部屋の模型を、美術館の実物の周りに再現し、福岡氏が、NYの偽物の飾ってある部屋から、ハーグの本物のある部屋にひとっ飛びというストーリーになっていて、大受け。
ヨーロッパらしい、スケールの大きい、笑いのセンスの良さが光る。

これは、本夏に訪れた時の写真。
今取り組んでいることは、フェルメールの絵に多く出てくる楽器類で、どんな音楽が演奏されて来たかを、再現することだそうだ。
楽譜が微かに描かれている絵から、楽譜を復元し、恵比寿の展覧会で公開しているそうだ。
バッハより前で、楽器も、今は存在しないものもあり、チャレンジのしがいのあるプロジェクトだ。
すばらしい講演だった。大拍手。高尚オタク?