今日は、いい天気。
少しづづ春めいてくるか。
私にとっては、文化の日?
まず、日時指定券をゲットしていたミロ展へ。
ミロ展は、昭和40年代の子供のころに、鎌倉近代美術館に連れて行かれて???だった記憶があるのだが、鎌倉近代美術館の最後の展覧会の時のカタログで調べたら、1969年のことだった。
今日の展覧会で、触れられていなかったような気がするのだが。
戦前から、日本では、注目されていて、ミロも、日本の文化に興味を持っていて、昭和40年代に2度来日、日本各地を回る中で、文化人との交流を深めている。
万博では、大規模な壁画を披露し、その壁画は、今も大阪の美術館で展示されているそうだ。
書や、詩や、俳句にも関心を示し、様々な作品を残している。
日本の作家とのコラボ豪華本も出版。
基本的には、抽象画が多いが、陶磁器や、雑多なものを使ったオブジェも多く、とにかくにぎやかで楽しい印象。
日本の民芸にも興味を示し、赤べこや、土湯の渡邊喜平のこけし、同じく土湯の齋藤氏のこけしの自作版画、埴輪の頭部など、様々なものを所有されていた。
スペインの生まれだが、ピカソ同様内戦に巻き込まれ、フランスへ。
しかし、フランスもナチスに占領されたため、スペインに戻り、戦争が終わるまでは、ひっそり暮らしていたようだ。
スペイン内戦にインスパイアされたピカソ的な作品や、日本の古来のものにインスパイアされた岡本太郎的な作品もあった。
日本つながりもあり、訪れてみてはいかが?
午後は、抽選で当たった(倍率2倍だったとのこと)、法隆寺壁画に関する講演会に参加。
7回目だったそうだ。
たぶん、これまで、日程が合わなかったり、抽選に外れたりして行けなかったのだろう。
質の高いセミナーで、朝日新聞に感謝(文化面では感謝している、今回のロシアの蛮行をどう見ているのだろうか)。
内容はパンフの通りなのだが、堂々の3時間半。
ポールのコンサート並みだ。
焼損してしまった金堂壁画についての講演会なのだが、一度コピー展で見たことはあるが、本物は、見たことがない。
それを保存、研究し、公開を検討しているチームがあり、その現状発表みたいな内容だった。
最初の有賀氏は、リーダーで、活動の歴史や体制などの説明。
古谷法隆寺管長は、昨年の1400年御遠忌の話。
法隆寺の歴史から、太子信仰の話しが中心だが、本セミナーに参加の人は、ほとんど既知の話しだったろう。
次の3講演がメイン。
本プロジェクトは、2015年に開始され、保存環境WG,壁画WG、建築部材WG、アーカイブWGの4WGで進めている。
最初の荒井氏は、画家だが、壁画WGのチーフであり、一番面白かった。
そもそも何で焼損してしまったのかだが、昭和の大修理が、昭和15年から始まっており、戦争をはさんで、金堂の解体修理を行い、その成果を昭和24年に発表することになり、普段行わない冬に、模写を強行。
電気座布団でもないと、できない状況の中悲劇が起こった。
通常ベースで進めていれば、この悲劇はなかったかもしれないとのこと。
模写は、明治17年、大正5年に行われており、昭和24年も模写は3回目だったそうだが、その前の昭和10年に便利堂により、実物大の精密な写真撮影が行われ、それをベースに模写が行われたということで、手法の違う模写となった。
その中でも、入江波光による一番有名な6号壁画の模写が群を抜いている。
これは、他の模写が、写真をまず紙に落としてそこに彩色していたのに対し、入江の模写は、紙の下に写真を置き、その上に、全て描いたところの違いがあるという。
上げ写しという手法だそうだ。
模写と、写真の違いは何か。
当時カラーは、珍しかったが、昭和10年の撮影では、4色でのカラー印刷が可能だった。
そうすると、質感とか、絵具の違いということになることになるが、荒井氏は、美を看取・抽出→美を表現・記録という観点から同じではないかと。
壁画を見る近代の眼。
写真の方は、2015年に、重文指定。
模写の方は、どうか。
次は、建築部材WGリーダーの、青柳氏。
収蔵庫は、1952年に作られ、今年70周年。
昭和の大修理の際、壁画をどこで保管するかということになったが、祈りの対象ということで、金堂に戻すことになっていた。
ところが、焼損してしまい、別に保管することになり、そのための収蔵庫を作ることになった。
この場所は、塔頭で、一旦民有地になったが、公園になり、宝蔵群を作った。
ところが、壁画が焼損し、その保管のための収蔵庫を別途作ることになり、その際のポイントは、慎ましさと記念性だったという。
この二律背反を解決したのが、今の収蔵庫なのだという。
モダニズムと、蔵をベースにした日本的なものを、見事に合体させた。
ラストは、保存環境WGリーダーの小椋氏。
収蔵庫を作った時は、公開することが意識されていたが、公開されないまま、長い年月が経過。
1994年に試験的に公開し、昨年再度限定的に公開した。
問題は、湿度と温度と、コロナ禍でCO2濃度とのこと。
その扱いを誤ると、カビ、虫、剥落、剥離の問題が発生する。
高松塚古墳ではたいへんなことになってしまった。
2度行ったアジャンターも心配。
莫高窟は、厳重に管理され、乾燥地ということもあり、大丈夫という印象を持ったが。
精密なデータをとり、限定的公開を行ったが、湿度は、70%以下に抑え、CO2は、1000以下に抑え、温度の変化を1度以下に抑えることが、壁画の保護に必要とのことだが、人が出入りすることにより、これらは大きく変化。
今回は、天候にも恵まれ、好結果だったが、雨の時は、特に危ない。
前回の公開の時は、1日500人としたが、今回は、1日50人に抑え実験。
特に湿度の変化が気になる結果になったとのことで、本格的公開を目指すには、さらに、工夫が必要とのこと。
換気や、1日、非公開日を設けることにより、大きく改善するとのことだが、これだけ数値にはっきり現れるとは知らなかった。
現在の展示システムは、金堂の中をそのまま再現したような空間になっており、相当の工夫はなされているが、なかなかたいへん。
ガラスケース等に壁画を入れて、観覧者から、壁画を完全に隔離してしまえば、いいと思うのだが、金堂内部を再現する構造になってしまっており、なかなか難しい。
この課題を解決すべく、検討を重ねるとのこと。
ということで、こちらは、極めて興味深い講演だった。
頭の保養になった。