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川原さんの対談イベントには何度かお邪魔していて、いろいろ楽しい話をお聞かせいただいていたのだが、その集大成と言える本が出た。
何度もインタビューを重ねて、まとめたとのことだが、対談イベントで出てこなかった話もたくさんあり、まさに日本のポップミュージック史と呼べるような充実した内容になっていた。
そのきっかけが、ビートルズの来日公演というから恐るべし。
それから、どんどんどそちらの方に、川原さんの人生は転がり始めた。
面白いのは、とにかく一つの型にはまらないで、いろんなことを、いろんな会社で、いろんな人と共に成し遂げていったこと。
こんなに自由に仕事をして、これだけの成果を上げた人がいるのだろうか。
それは、運もあっただろうが、やはり川原さんの才能、粘り強さ、柔軟性によるところが大きい。
レコード会社のアルバイトから始めたのだが、マーケティングから、音作り、演奏家になったり、作曲家になったり。
どんどんと新たなチャレンジをする機会に遭遇し、新たな道を切り拓いた。
杉真理、大滝詠一、松本隆、松田聖子、中森明菜、鷺巣詩郎、井上陽水、筒美京平、まさに70年代以降の日本のポップミュージックを牽引していった方々だ。
彼らが世に出たり、復活したり、新たな才能を開花させた影には、川原さんがいた。
アイデアマンでもあり、そのアイデアを実現するチャンスをじっくり待ち、実現させていく粘り強さを兼ね備えていた。
原宿のミモザビルというビルに、ビクターやRCAがあったそうなのだが、たまたま本書を読み始めた日に、ミモザビルに行く用事ができて、まさにビクターがあったフロアだったのでびっくりした。
今のテナントさんは、もちろんそんなこと知らないだろう。
日本のポップ史に興味のある方は、是非。
海外では、プロデューサーが自伝を書くことは多いが、日本ではあまり見かけない。
もちろんジョージ・マーティンも自伝を書いているから、それも川原さんの生き方のヒントになったかもしれない。
面白かった。