かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

奈良時代

2023年03月24日 | Books
今日も、天気悪いけど、気温は高い。
週末どうなるか。



本書は、本屋で見つけてすぐゲット。
あまりにも、ダイレクトな書名でどうかなと思ったが、集大成的な本で、面白かった。
といっても、帯にある天平文化の話は、あまり出て来ず、ほとんどが奈良時代の政変劇について。

奈良時代については、正史である続日本紀にまとめられているのだが、当然、当時の支配者に有利なことしか書かれておらず、同時代の別の記録や、発掘成果から、真実を推理する作業が必要になる。
そして、本書は、著者である木本氏が推理した結果を、基本的な部分の紹介も含めて説明してくれる。

最近の本では、記紀が藤原氏に有利なように書かれ過ぎていて、藤原氏悪人説を強調する本が多いように思うが、本書では、聖武天皇無能説が基軸になっているように読める。
聖武天皇というと、奈良時代のど真ん中に、東大寺を作るなど、功績のあった天皇というイメージがあるが、本書では、自分で何も決められず、特に、後継者を指定しなかったことが、後の大きな混乱を招いたとする。
確かにそうで、特に、平城京に都を戻すまでの混乱や、死後の様々な政変の原因を作ったのが聖武天皇と言われると、反論が難しい。

反乱と言えば、恵美押勝の乱が最大のものとして思い浮かぶが、一般的には、藤原仲麻呂(恵美押勝)が悪者と捉えられている。
ところが、本書では仕掛けたのは、権力奪回を狙う孝謙太上天皇側で、仲麻呂がその罠に落ちたという解釈をしている。
藤原仲麻呂は、それなりの施政も行っていたし、鑑真の招聘による仏教の普及にも貢献があったとする。
つまり権力争い=単なる政変というわけだ。

それにしても、この短期間の間に、これだけの政変が起こっていたというのは、異常で、まだ天皇を中心とした体制が定まっておらず、群雄割拠の世界から、秩序だった世界へ移る過渡期であったことがうかがえる。
その歴史上の登場人物たちの直筆の文書などが、正倉院に残されたというのも、一方で、奇跡。
三谷幸喜が次に大河ドラマを作るとすれば、奈良時代と言っていたのも、うなずける(ドラマとしては、面白いが、天皇制についての疑念につながるようだと難しい?)。

奈良時代のどろどろした人間模様をうまくまとめてくれている。
コメント
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