
先月に米沢に言った話は、書いた。そして、直江兼続という人物のことを知り、所縁の地も多く訪れることができた。帰ってから、来年のNHK大河ドラマに採用された”天地人”を読んだ。オーソドックスな時代小説だと思った。史実を踏まえながら、面白く(この時代は、何でも面白いのだが)、描かれている。
天地人とは、天の時、地の利、人の和をのことを言う。「謙信公の曰く。天の時、地の利に叶い、人の和ともに整いたる大将というは、和漢両朝上古にだも聞こえず。いわんや、末代なお有るべしとも覚えず。もっとも、この三事整うにおいては、許薰煖Nこるべからず、敵対するものもなし」の言葉からとったテーマだ。
兼続は、結局、天下盗りができなかったわけだが、この内何が欠けたのだろうか。この本を読むと、上杉家の存在の大きさがよくわかる。紙一重で、織田、豊臣、徳川が天下を取っていったわけだが、万全だったものは、一人も無く、皆戦乱の中で、ぎりぎりの選択をした中での綱渡りの結果だ。
謙信は、一、裏切りをせぬ 一、謀略を使わぬ 一、非道をせぬ を信条としたという。義を重んじたわけだが、これだ、結果的には、豊臣家への忠心を貫くあまり、時代の波に乗り損ねることとなった。”義”か”利”かの葛藤である。ただ、”利”なくしては、”義”もまたなしということで、関が原の合戦の時に、西軍に加わらないという最後の判断により、上杉家取り潰しを免れたわけだが、結果上杉家は、大きく減封された。決して、後悔はせず、米沢で新たな藩作りを行うのである。
特にこの本を読むと、家康が上杉≒直江を討つため北上している時に、西で石田三成が挙兵してしまい、関が原の合戦になり、家康が天下を取ってしまったのが歴史を変えてしまったように思う。三成の挙兵がちょっと遅れたら、上杉家がイニシアティブを握るか、少なくとも北日本の王者になっていたかもしれない。

上杉≒兼続が、北の王国を築こうとしていたというテーマの本が、同じく直江兼続公を主人公とした、”北の王国”だ。
史実に残るところは、”天地人”とストーリーは似ているが、史実に残らない、女性の世界、隠密の世界などは、まさに小説で、それぞれ個性があって面白い。
真田幸村を始めとした、戦国武将たち、千利休などの脇役人、架空の女性達、そして、兼継の妻のお船(せん)。個性ある登場人物があふれている。NHKの大河ドラマのテーマとしては、打ってつけと思った。
米沢で、所縁の地を巡った直後だけに、印象深かった。
兼続のカブトの前立が愛であることは、前にも述べた。この愛の意味には諸説あるようであるが、本書では、儒教にある仁愛の愛で、"義”にも通ずるものという。兼続の生き方を見ると、その通りのように思う。
ところで、ソフトボールついにやったね。それにしても上野の根性はすごい。”義”のために投げ続けたわけではないと思うが。