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身近に隠れていたイノベーション

2019-08-08 12:00:00 | 19期生のブログリレー

みなさん、こんにちは。

19期生の繁野邦博(しげのくにひろ)です。

今回は、近所で発見した隠れたイノベーションのお話です。

先日、近所のショッピングセンターへ買い物に行きました。
敷地面積は東京ドーム半分ほどの大型店舗で、老若男女を問わず、
1日に数千人のお客様が来店するようなお店です。
そこは1階にホームセンター、2階にショッピングセンター、3階に駐車場、1階の屋外に駐輪場
というフロア構成で、各階がスロープ型のエスカレータで繋がっており、
来店客はショッピングカートを押しながら各階を行き来できるという作りになっています。

いつものようにカートを押しながらエスカレータで2階へ上がるところでふと疑問に思ったんです。
「このカートを持つ手を離したら大惨事にならないか?」

でも、そんな事故は起こっていないんですよね。
思い出す限りでは、危ないと思ったこともないんです。

恐る恐る持つ手を緩めてみても、カートは全く動じることはなく、
思い切って離してみても、微動だにしないんです。


斜面でも転がらない謎のカート。不思議。

 

多少のネタバレをした後ですが、少し視点を変えて、もし、みなさんが、以下の課題を持つ店舗運営者、
もしくは、ショッピングカートの製造メーカーの開発担当者だったとしたら、どのような解決案を提案しますか?

 <課題>
・老若男女、外国人など、幅広く、多くのお客様が来店される。
・お客様の利便性や回遊性は損なわずに買い物をしていただきたい。
・しかし、お客様の安全は絶対に確保しなくてはならない。
・店舗改修など多額の投資はかけられない。

 

<解決案>
・「カートから決して手を離さないでください」という注意喚起をする。
・カートのハンドルにブレーキバーを付けて手動でブレーキを掛けられるようにする。
・エスカレーター上に滑り止めの段差設けて転がらないようにする。
・空港用カートのように常時ブレーキ状態にしてハンドルを押したときだけ進むようにする。
・危険なので各フロアをまたいだカートでの往来は禁止にする。

などなど

色々なアイデアが考えられますよね。
アメリカでは、ショッピングカート専用のエスカレータを設けている大型店もあるそうです。


よくよく見てみると、今回の答えは至ってシンプルなものでした。

 

①カートのタイヤにはエスカレーターと同程度の溝が彫られている。

 

②タイヤの底から2ミリ程度のところにゴム製のパットが固定されている。

 

たったこれだけでした。

たったこれだけなのですが、この工夫により、

カートをエスカレーターに乗せると、斜面を転がる力を利用してカートとエスカレーターが水平になる。

すると、エスカレーターの溝にタイヤがはまり、カートが数ミリ沈む。

カートが数ミリ沈むと、ゴム製のパットがエスカレーターと接触してしっかりブレーキがかかる。

 

思わず「なるほど!」と唸ってしまいました。

子供からお年寄り、日本語の通じない外国人まで幅広い来店客が想定される環境下では、
注意喚起では伝わらないことや、伝わったとしても操作ミスによって万が一の事故に繋がる可能性が考えられますよね。
ただ、この万が一が起これば業務停止は避けられず、万が一にも起こってはいけない意外と難しい問いだと思います。
そのような難しい問いは、重力や自然力を利用した、極めてシンプルな作りで、
利用者が何もする必要なく、意識すらすることなく、大きな投資もかけずに解決され、
来店客の利便性と安全性はこっそりと守られていました。

運営管理で知識として学んだ「動作経済の原則」ですが、
日本の製造業の現場では商品開発の場面でも、このように格好よく知恵として応用されていたんですね。

身近に隠れていたイノベーション、また発見したらみなさんにお伝えしていきたいと思います。

コメント (4)
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