16期生の大石泰弘です。
今回は、素手で小学校のトイレを掃除するボランティア活動を通じて
社員成長の機会とする社員研修に参加してきた実体験のご報告です。
その企業は、旅館甲子園で優勝したことがあるS旅館です。
トイレ掃除がここまでさまざまなチームプレーとスキルアップの要素を
含んだ活動だったのかと感動しました。長文ですがお許しください。
素手での公衆トイレ掃除は今や全国的な運動になっていますが、始まりは
イエローハットの先代社長自らが自社のトイレを素手で掃除を始めたこと
です。それを全社員でやるようになり、自社だけでなく公共施設のトイレ
も素手で掃除をするようになりました。それによって会社の風土がよく
なったので他の企業にも広まり、全国の運動になっていったのです。
そういう事情は人づてに知ってはいたのですが、自分でやろうとは思って
いませんでした。ところが今夏、旅館甲子園で優勝した企業の社長と社員の
ご講演を聞く機会がありました。潰れそうになり、キーマン達にも辞められて
どん底の状態から復活するきっかけが、社長自ら旅館のトイレを素手で
掃除を始めたことだったそうです。社員もするようになるのに半年かかった
そうです。
さらに社員の話では、新入社員だった時の先輩の仕事の教え方がよかったと
言うのです。社員教育や組織風土づくりに悩まれる企業の参考になるのでは
ないかと思い、参加させていただくようお願いしたところ、快諾していただき
参加してきました。
上述のボランティア活動は、普通に素手で掃除をする活動なのですが、
この企業は、ある経営コンサルタントから推奨され、社員教育を目的とした
内容にアレンジをして実施していました。
具体的には以下のよう。
場所は山奥の小学校です。その日は10人くらいの参加者で、その小学校で一人で
素手掃除をされてきた先生一人と地場の若手社長二人も参加されていました。
あとは旅館の若手社員たちです。ベトナム人社員も参加していました。
既に20回以上参加した経験を持つ旅館の20代の男性がリーダーと副リーダー
になり全体を統率します。朝5時半に集合し、まず全員で輪になり、各人の
今日の清掃目標を発表します。発表の都度全員で拍手をします。次にスケ
ジュールをリーダーが発表します。朝6時に清掃スタートで、8時20分までに
後片付けと反省会終了です。次に分担指示です。私を含めて初心者が3名
いたので、その3人は同じ男子トイレの小便器1つずつでした。そして3人の
指導役が一人つきました。その人は同じ男子トイレの大便器も担当しました。
準備が始まると、最初に3つの道具を渡され、それぞれの使い方と使用上の
注意を説明されました。どう使うべきかを考えさせる簡単な質問が時々
はいっていたのが印象的でした。どれでも落とせない汚れがあったら相談する
ように言われて掃除開始です。あてがわれた便器はかなりきれいという印象
でしたが、素手で触るとざらざらしたところがあり、それがつるつるになる
ように掃除をするのだとわかりました。
しばらくすると、くぼみの奥などに真っ黒なよごれをみつけ、それを色々な
方法で落とそうとするのですが全く落ちません。汚れじゃないのかなと思い、
巡回してきたリーダーに確認したら、それは汚れで、ドライバーを使って落と
すのだと教えてくれてドライバーをくれました。確かに道具置き場にはさま
ざまな道具が整然と置かれていて、それでこすると8割くらいはすぐに落ち
ました。
しかし残った2割はなかなか落ちません。少し飽きてきて、他のめだつ汚れを
落とし始めました。その時、さきほど発表し合った今日の清掃目標を「完全に
きれいになる前に浮気をしない」と言った人がいたのを思い出し、ドライバー
での格闘に戻りました。いろいろ工夫してなんとか黒い汚れはなくなりました。
その間、リーダーと副リーダーが時々巡回してきて初心者に注意をくれました。
特に、道具を持たないほうの手(私だと左手)で便器をしっかり持たないと
けがをするので気を付けるようにと繰り返し言われました。
最終的に床や壁も清掃し、6人で3つの小便器と3つの大便器があるトイレの清掃
に2時間近くかかりました。私は便器一個5分くらいと思っていましたからびっく
りでした。後片付けにも細かな手順があり、みんなで分担しました。
清掃を始める前には、駅のトイレに比べたら全く臭くないトイレだなと思いまし
たが、清掃後のトイレは全くと言っていいほど匂いがなくなりました。とても
強い達成感を感じました。
終わってみると、たいへん多くの学びの体験作業だと理解しました。
・道具の準備
・道具の選択
・道具のメンテ
・チームワーク
・リーダーシップ
・初心者への指導と見守り
・作業手順
・業務分担
・あとかたづけ
・時間管理
・安全管理
・衛生管理(開始前に肌を守るクリームを手に塗る)
・あいさつ
・環境配慮(使用していい洗剤は環境にたいへんやさしいものを少量)
・達成感
・集中力
・目標による自己管理
・自分を観察する力
・いやなものに立ち向かう姿勢
などなど
最後の、「いやなものに立ち向かう姿勢」ですが、清掃中はあまりいやだとは
思いませんでした。しかし帰宅後数日間は、清掃前にほとんど感じなかった
トイレのにおいがふいに思い出されていやな気分になりました。2回目に参加
する決意をするためには、本当に立ち向かう勇気が必要だと実感しています。
もし駅のトイレを清掃したら、1年くらいは匂いを思い出すのではないかとも
思いました。千葉県で公衆トイレを掃除されている不動産屋さんを知っています。
あらためてすごいなと感心しました。
こういう研修をするべきだとは、支援企業には無理強いできませんが、会社の
風土で悩んでおられる会社には紹介しようと思います。社長から変われるかが
とても重要だと思います。とりあえず私は自宅のトイレ掃除を9月から担当して
います。もちろん素手でです。汚いものに触ることに抵抗は減ったなと思います。
家庭円満になるかどうか?