第1 外国裁判所の確定判決の効力の問題 具体的な事例
日本人と韓国人が結婚し、相互の国を半々で生活したとします。やがて、離婚することになったとします。その裁判はどちらの国も裁判を行う管轄権を持っています。そこで、韓国で裁判し、離婚を認める判決が出されました。
さて、その判決の効力を日本で求めることは可能でしょうか。
日本でもあらためて、離婚の裁判をする必要があるでしょうか。
外国裁判所の確定判決の効力の問題です。
このような場合、一定の条件(要件がそろえば)のもと、日本では、改めて、離婚の裁判を行う必要はありません。
以下、考え方を述べます。
第2 問題の所在 一国の裁判権の行使の範囲
問題の所在として、裁判権の発現としての裁判の結果は、裁判権を行使した裁判所の属する国の領域内においてのみその効力を生ずるということです。
よって、外国における裁判の結果は、当然には、日本において当然にはその効力を生じるものではありません。
第3 日本で効力を承認し、執行を許すこと その根拠
日本は、外国における一定の要件を充足する裁判の結果、すなわち、外国裁判所の判決について、その効力を承認し、承認した外国裁判所の判決について執行をゆるします。
その根拠にある考え方は、
1)当事者の権利の実現に対する国際的な確保
2)司法エネルギーの節約
3)一国における法律関係が他国において認められないことの防止
などがあげられます。
第4 外国裁判所の判決の承認とは
外国裁判所の判決の承認:外国裁判所の判決がそれを言い渡した国で有する既判力または形成力を、内国でも認めること
第5 承認の要件
民事訴訟法118条が規定
一~四の要件のすべてを具備する必要があります。
ひとつでもかけると承認されません。
承認の訴え、逆に不承認の訴え、無効確認の訴えを提起することも可能です。
*****民事訴訟法******
(外国裁判所の確定判決の効力)
第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
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第6 外国裁判所の判決の執行とは
外国裁判所の判決の執行:外国裁判所の判決が、内国において承認の要件を充足しているか否かを審査した上で、改めて外国裁判所の判決について執行判決を付与すること
第7 外国裁判所の判決についての執行判決に関する要件
外国裁判所の判決の強制執行については、民事執行法22条6号にある。
その執行判決に関する要件は、同24条
*****民事執行法*******
(債務名義)
第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
(外国裁判所の判決の執行判決)
第二十四条 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3 第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条 各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
4 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。
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第8 承認の要件を規定した民事執行法118条の法文の解釈
承認の要件を規定した民事執行法118条の法文の解釈が、最高裁判例できちんと述べられています。
******最高裁ホームページより*****
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120921167665.pdf
主 文 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
本件は、平成九年(一九九七年)七月一日に中華人民共和国に返還される以前の 香港において香港高等法院がした訴訟費用負担の裁判について、被上告人らが民事 執行法二四条に基づき執行判決を求めた事案である。民事執行法二四条三項は、本 件が当審に係属した後に、平成八年法律第一一〇号によって改正されたので、所論 のうち旧民訴法二〇〇条各号の解釈適用の誤りをいう部分は、同条に対応する民訴 法一一八条各号の解釈適用の誤りをいうものとして、判断をすることとする(以下、 上告人A1を「上告人A1」と、上告人A2有限会社を「上告会社」と、被上告人 Bを「被上告人B」と、訴外Dを「訴外D」と、訴外Eを「訴外銀行」という。)。 一 上告代理人山本忠雄の上告理由第一について 民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」とは、外国の裁判所が、その裁判 の名称、手続、形式のいかんを問わず、私法上の法律関係について当事者双方の手 続的保障の下に終局的にした裁判をいうものであり、決定、命令等と称されるもの であっても、右の性質を有するものは、同条にいう「外国裁判所の判決」に当たる ものと解するのが相当である。 これを本件について見ると、記録によれば、(1)香港においては、具体的に訴 訟費用を負担すべき者、その負担割合等は、本案判決においてではなく、勝訴者か ら申し立てられる訴訟費用負担命令において定められること、(2)香港高等法院 は、上告人ら、被上告人ら及び訴外銀行等の間の後記第一訴訟ないし第四訴訟につ いて、昭和六三年(一九八八年)四月二七日、実質的に被上告人ら勝訴の本案判決 を下し、右判決は確定したこと、(3)被上告人らは、同年五月一一日、上告人ら
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及び訴外銀行に対する訴訟費用負担命令の申立てをしたこと、(4)香港高等法院 は、上告人らの代理人の聴聞手続を経た上で、同年八月三一日、上告人ら及び訴外 銀行に対する訴訟費用負担命令(以下「本件命令」という。)を発したこと、(5) その後、上告人らの負担すべき訴訟費用額の査定が行われ、本件命令並びにこれと 一体を成す平成元年(一九八九年)一〇月三日付け費用査定書及び同年九月一二日 付け費用証明書(以下、併せて「本件命令等」という。)により、上告人らは、被 上告人らに対して合計一二〇万二五八五・五八香港ドルの訴訟費用額の償還を命じ られたことが認められる。右の事実によれば、本件命令等は、前記の「外国裁判所 の判決」に当たると認めるのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当とし て是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができ ない。
二 同第二について 判決等によって支払を命じられる金員に付随して利息等が発生する場合に、これ を判決等に記載するか、又は判決等には記載せず法令の規定によって執行力を付与 するかは、各国の法制度によって異なるところであるが、その相違は多分に技術的 な面によるところが大きく、したがって、外国裁判所の判決等に記載がない利息等 についても、我が国における承認・執行の対象とすることができないものではない (最高裁平成五年(オ)第一七六一号同九年七月一一日第二小法廷判決・民集五一 巻六号二五三〇頁参照)。 記録によれば、(1)本件命令等には、上告人らが負担すべきものとされた訴訟 費用に関し、遅延利息について何ら記載がないこと、(2)しかし、香港法上、金 銭給付判決等については、高等法院の個別の命令がない場合には、法定の遅延利息 が当然に発生するものとされており、その利率は、随時、香港最高法院首席裁判官 が命令によって定めるものとされていたこと、(3)本件命令等については、高等
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法院の個別の命令は記載されておらず、香港最高法院首席裁判官の命令により、第 一審判決別紙利息計算表に記載のとおり、本件命令が発せられた日の翌日である昭 和六三年(一九八八年)九月一日以降の遅延利息の利率が定められたことが認めら れる。右の事実によれば、本件命令等に記載のない右利息計算表記載の利率による 遅延利息についても、我が国における承認・執行の対象とすることができるものと した原審の判断は、正当として是認することができる。 また、所論は、原審が遅延利息発生の理由及びその利率の正当性について判断し ていないことの違法をいうが、我が国の裁判所としては、右のような裁判の当否に ついては調査し得ないものというべきである(民事執行法二四条二項)。 原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 三 同第三について 記録によれば、本件命令等の各不服申立期間内に上告人らが所定の不服申立ての 手続をとっていないことが明らかであり、本件命令等が確定したものとした原審の 判断は、結論において是認することができる。また、民事執行法二四条三項の規定 に照らすと、外国裁判所の判決等が確定したことの証明方法は、いわゆる確定証明 書の提出に限られないものというべきである。 論旨は採用することができない。
四 同第四について 1 民訴法一一八条一号所定の「法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認め られること」とは、我が国の国際民訴法の原則から見て、当該外国裁判所の属する 国(以下「判決国」という。)がその事件につき国際裁判管轄(間接的一般管轄) を有すると積極的に認められることをいうものと解される。そして、どのような場 合に判決国が国際裁判管轄を有するかについては、これを直接に規定した法令がな く、よるべき条約や明確な国際法上の原則もいまだ確立されていないことからすれ
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ば、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により、条理に従って 決定するのが相当である。具体的には、基本的に我が国の民訴法の定める土地管轄 に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、当該外国判 決を我が国が承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判決国に国 際裁判管轄が存在するか否かを判断すべきものである。 2 本件命令等は本案判決の付随的裁判である訴訟費用負担の裁判であるから、 本件命令等について香港に国際裁判管轄が認められるか否かは、原則として、その 本案判決について検討すべきものであると解される。 3 これを本件について見ると、原審は、(1)訴外銀行が被上告人らを相手方 として保証債務の履行を求めた第一訴訟については、被告とされた被上告人らの住 所地の裁判籍(旧民訴法二条一項)が香港に存在するものとして、(2)被上告人 らが、第一訴訟の債務を履行することを条件として、訴外銀行と上告人A1及びそ の妻である訴外Dの三名を相手方として、訴外銀行が右上告人らに対して有する根 抵当権につき訴外銀行に代位する旨の確認を求めた第二訴訟については、訴外銀行 に対する本来の反訴についてのみならず、上告人A1及び訴外Dに対する訴えにつ いても、第一訴訟と同一の実体法上の原因に基づく訴訟であって、これと密接な関 連があることから、併合請求の裁判籍(旧民訴法二一条)が香港に存在するものと して、(3)上告人ら及び訴外Dの三名が、後記第三訴訟に対抗して、被上告人ら を相手方として、被上告人Bのみが保証債務を負担することの確認を求めた第四訴 訟については、第三訴訟に対する反訴の性質を有することから、第三訴訟の裁判籍 が香港に存在することを前提として、それぞれ、判決国である香港に国際裁判管轄 を認めたものであるところ、右の原審の判断は、同趣旨の土地管轄に関する規定を 有する現行民訴法の下においても、正当として是認することができる。原判決に所 論の違法はない。
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4 一方、第三訴訟は、被上告人らが、第一訴訟の請求認容を条件として、上告 人ら及び訴外Dの三名を相手方として、求償権を有することの確認を求めるもので あり、英米法系に固有の訴訟形態である第三当事者訴訟(サード・パーティ・プロ シーディング)の性質を有するものである。しかるところ、第三訴訟の被告とされ た者のうち上告人A1及び訴外Dは、同時に第二訴訟の被告でもある上、第二訴訟 と第三訴訟は、いずれも、上告人らと訴外銀行との間で締結された起訴契約に基づ き被上告人らに対して提起された第一訴訟が認容された場合に、根抵当権の代位行 使ないし求償請求ができることの確認を求めるものであり、同一の実体法上の原因 に基づく訴訟であって、相互に密接な関連を有しているから、統一裁的な判をする 必要性が強いということができる。これらの事情にかんがみると、第三訴訟につい ては、民訴法七条の規定の趣旨に照らし、新たに被告とされた上告会社に対する訴 えを含め、第二訴訟との間の併合請求の裁判籍が香港に存在することを肯認して香 港の裁判所のした判決を我が国で承認するのが、当事者間の公平、裁判の適正・迅 速の理念に合致するものであり、条理にかなうものであると考えられる。したがっ て、第三訴訟について香港に国際裁判管轄を認めた原審の判断は、結論において是 認することができる。
5 以上の次第で、論旨は採用することができない。 五 同第五について 1 記録によれば、(1)被上告人らは、昭和六三年(一九八八年)五月一一日、 上告人らに対する本件命令の申立てをしたこと、(2)右申立てを受けた香港高等 法院は、インド国籍を有する神戸市在住の上告人A1及び日本法人である上告会社 に対して「ノーティス・オブ・モーション」を送達する許可をしたこと、(3)右 ノーティス・オブ・モーションは、同年七月二六日、被上告人らから私的に依頼を 受けた日本の弁護士を通じて上告人らに直接交付されたこと、(4)上告人らは、
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右ノーティス・オブ・モーションの審理について香港在住の弁護士を代理人に選任 し、同年八月二五日、同代理人関与の下にその審理が行われたこと、(5)上告人 らの代理人は、前記第三訴訟について香港の国際裁判管轄を争っていたことが認め られる。 2 所論は、要するに、右直接交付による送達は、国際司法共助条約の定める方 式を履践していないから、上告会社に対する関係では民訴法一一八条二号所定の「 送達」の要件を満たしておらず、また、攻撃防御を行うに先立ち香港の国際裁判管 轄を争っていたのであるから、同号所定の「応訴」の要件も満たしていない、とい うものである。なお、上告人A1に対する関係で同号所定の要件を満たしているか 否かについては、職権で判断を加える。 3 ところで、民訴法一一八条二号所定の被告に対する「訴訟の開始に必要な呼 出し若しくは命令の送達」は、我が国の民事訴訟手続に関する法令の規定に従った ものであることを要しないが、被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができ、 かつ、その防御権の行使に支障のないものでなければならない。のみならず、訴訟 手読の明確と安定を図る見地からすれば、裁判上の文書の送達につき、判決国と我 が国との間に司法共助に関する条約が締結されていて、訴訟手続の開始に必要な文 書の送達がその条約の定める方法によるべきものとされている場合には、条約に定 められた方法を遵守しない送達は、同号所定の要件を満たす送達に当たるものでは ないと解するのが相当である。 これを本件について見ると、我が国及び当時香港につき主権を有していた英国は、 いずれも「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び 告知に関する条約」の締約国であるところ、本件のような被上告人らから私的に依 頼を受けた者による直接交付の方法による送達は、右条約上許容されていないのは もとより、我が国及び英国の二国間条約である「日本国とグレート・ブリテン及び
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北部アイルランド連合王国との間の領事条約」(いわゆる日英領事条約)にもその 根拠を見いだすことができない。そうすると、上告人らに対する前記ノーティス・ オブ・モーションの送達は、同号所定の要件を満たさない不適法な送達というべき である。 4 他方、民訴法一一八条二号所定の被告が「応訴したこと」とは、いわゆる応 訴管轄が成立するための応訴とは異なり、被告が、防御の機会を与えられ、かつ、 裁判所で防御のための方法をとったことを意味し、管轄違いの抗弁を提出したよう な場合もこれに含まれると解される。前記の事実によれば、前記ノーティス・オブ・ モーションの審理について、上告人らが同号所定の応訴をしたことは明らかである。 5 そうすると、上告会社に対する関係においては、本件命令等は、民訴法一一 八条二号所定の要件を具備しているものというべきである。この点に関する原審の 判断は、結論において是認することができ、論旨は採用することができない。また、 上告人A1に対する関係においても、本件命令等は、同号所定の要件を具備してい ることが明らかである。
六 同第六について 訴訟費用の負担についてどのように定めるかは、各国の法制度の問題であって、 実際に生じた費用の範囲内でその負担を定めるのであれば、弁護士費用を含めてそ の全額をいずれか一方の当事者に負担させることとしても、民訴法一一八条三号所 定の「公の秩序」に反するものではないというべきである。 記録によれば、本件においては、上告人らに不誠実な行動があったことが考慮さ れて、いわゆるインデムニティ・ベイシスの基準が適用され、弁護士費用を含む訴 訟費用のほぼ全額が上告人らの負担とされたものであるところ、香港の裁判所にお いてこのインデムニティ・ベイシスの基準が適用されるのは特別の場合であり、懲 罰的な評価が含まれていることが認められるが、他方、本件命令等により上告人ら
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に負担が命じられた訴訟費用の額は実際に生じた費用の額を超えるものではないか ら、本件命令等の内容が我が国の公の秩序に反するということはできない。これと 基本的に同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論 の違法はなく、いわゆる懲罰的損害賠償と対比してインデムニティ・ベイシスの基 準による訴訟費用負担の違法をいう論旨は、採用することができない。 また、所論は、香港高等法院の本案判決は、被上告人らが詐取したものであり、 手続的公序に反するというが、その実質は、右本案判決における認定判断が証人の 誤導的な証言の結果によるというものであって、証拠の取捨判断の不当をいうもの であるところ、我が国の裁判所としては、右のような証拠判断の当否については調 査し得ないものであり(民事執行法二四条二項)、論旨は採用することができない。 七 同第七について 民訴法一一八条四号所定の「相互の保証があること」とは、当該判決等をした外 国裁判所の属する国において、我が国の裁判所がしたこれと同種類の判決等が同条 各号所定の要件と重要な点で異ならない要件の下に効力を有するものとされている ことをいうと解される(最高裁昭和五七年(オ)第八二六号同五八年六月七日第三 小法廷判決・民集三七巻五号六一一頁参照)。 記録によれば、(1)香港においては、外国判決の承認に関して外国判決(相互 執行)法及び同規則が存在し、香港総督の命令により、相互の保証があると認める 国を同規則に特定列挙していたこと、(2)我が国は、相互の保証のある国として 同規則に列挙されてはいなかったこと、(3)しかし、香港においては、外国判決 の承認に関して、制定法に基づくもの以外に英国のコモン・口ーの原則が適用され ていたこと、(4)コモン・ローの下においては、外国裁判所が金銭の支払を命じ た判決は、原判示の要件の下に承認されていたことが認められる。そして、コモン・ ローの下における右外国判決承認の要件は、我が国の民訴法一一八条各号所定の要
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件と重要な点において異ならないものということができ、したがって香港と我が国 との間には、外国判決の承認に関して同条四号所定の相互の保証が存在したものと 認めるのが相当である。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することがで きる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 千 種 秀 夫 裁判官 園 部 逸 夫 裁判官 尾 崎 行 信 裁判官 元 原 利 文 裁判官 金 谷 利 廣
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日本人と韓国人が結婚し、相互の国を半々で生活したとします。やがて、離婚することになったとします。その裁判はどちらの国も裁判を行う管轄権を持っています。そこで、韓国で裁判し、離婚を認める判決が出されました。
さて、その判決の効力を日本で求めることは可能でしょうか。
日本でもあらためて、離婚の裁判をする必要があるでしょうか。
外国裁判所の確定判決の効力の問題です。
このような場合、一定の条件(要件がそろえば)のもと、日本では、改めて、離婚の裁判を行う必要はありません。
以下、考え方を述べます。
第2 問題の所在 一国の裁判権の行使の範囲
問題の所在として、裁判権の発現としての裁判の結果は、裁判権を行使した裁判所の属する国の領域内においてのみその効力を生ずるということです。
よって、外国における裁判の結果は、当然には、日本において当然にはその効力を生じるものではありません。
第3 日本で効力を承認し、執行を許すこと その根拠
日本は、外国における一定の要件を充足する裁判の結果、すなわち、外国裁判所の判決について、その効力を承認し、承認した外国裁判所の判決について執行をゆるします。
その根拠にある考え方は、
1)当事者の権利の実現に対する国際的な確保
2)司法エネルギーの節約
3)一国における法律関係が他国において認められないことの防止
などがあげられます。
第4 外国裁判所の判決の承認とは
外国裁判所の判決の承認:外国裁判所の判決がそれを言い渡した国で有する既判力または形成力を、内国でも認めること
第5 承認の要件
民事訴訟法118条が規定
一~四の要件のすべてを具備する必要があります。
ひとつでもかけると承認されません。
承認の訴え、逆に不承認の訴え、無効確認の訴えを提起することも可能です。
*****民事訴訟法******
(外国裁判所の確定判決の効力)
第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
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第6 外国裁判所の判決の執行とは
外国裁判所の判決の執行:外国裁判所の判決が、内国において承認の要件を充足しているか否かを審査した上で、改めて外国裁判所の判決について執行判決を付与すること
第7 外国裁判所の判決についての執行判決に関する要件
外国裁判所の判決の強制執行については、民事執行法22条6号にある。
その執行判決に関する要件は、同24条
*****民事執行法*******
(債務名義)
第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
(外国裁判所の判決の執行判決)
第二十四条 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3 第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条 各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
4 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。
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第8 承認の要件を規定した民事執行法118条の法文の解釈
承認の要件を規定した民事執行法118条の法文の解釈が、最高裁判例できちんと述べられています。
******最高裁ホームページより*****
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120921167665.pdf
主 文 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
本件は、平成九年(一九九七年)七月一日に中華人民共和国に返還される以前の 香港において香港高等法院がした訴訟費用負担の裁判について、被上告人らが民事 執行法二四条に基づき執行判決を求めた事案である。民事執行法二四条三項は、本 件が当審に係属した後に、平成八年法律第一一〇号によって改正されたので、所論 のうち旧民訴法二〇〇条各号の解釈適用の誤りをいう部分は、同条に対応する民訴 法一一八条各号の解釈適用の誤りをいうものとして、判断をすることとする(以下、 上告人A1を「上告人A1」と、上告人A2有限会社を「上告会社」と、被上告人 Bを「被上告人B」と、訴外Dを「訴外D」と、訴外Eを「訴外銀行」という。)。 一 上告代理人山本忠雄の上告理由第一について 民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」とは、外国の裁判所が、その裁判 の名称、手続、形式のいかんを問わず、私法上の法律関係について当事者双方の手 続的保障の下に終局的にした裁判をいうものであり、決定、命令等と称されるもの であっても、右の性質を有するものは、同条にいう「外国裁判所の判決」に当たる ものと解するのが相当である。 これを本件について見ると、記録によれば、(1)香港においては、具体的に訴 訟費用を負担すべき者、その負担割合等は、本案判決においてではなく、勝訴者か ら申し立てられる訴訟費用負担命令において定められること、(2)香港高等法院 は、上告人ら、被上告人ら及び訴外銀行等の間の後記第一訴訟ないし第四訴訟につ いて、昭和六三年(一九八八年)四月二七日、実質的に被上告人ら勝訴の本案判決 を下し、右判決は確定したこと、(3)被上告人らは、同年五月一一日、上告人ら
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及び訴外銀行に対する訴訟費用負担命令の申立てをしたこと、(4)香港高等法院 は、上告人らの代理人の聴聞手続を経た上で、同年八月三一日、上告人ら及び訴外 銀行に対する訴訟費用負担命令(以下「本件命令」という。)を発したこと、(5) その後、上告人らの負担すべき訴訟費用額の査定が行われ、本件命令並びにこれと 一体を成す平成元年(一九八九年)一〇月三日付け費用査定書及び同年九月一二日 付け費用証明書(以下、併せて「本件命令等」という。)により、上告人らは、被 上告人らに対して合計一二〇万二五八五・五八香港ドルの訴訟費用額の償還を命じ られたことが認められる。右の事実によれば、本件命令等は、前記の「外国裁判所 の判決」に当たると認めるのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当とし て是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができ ない。
二 同第二について 判決等によって支払を命じられる金員に付随して利息等が発生する場合に、これ を判決等に記載するか、又は判決等には記載せず法令の規定によって執行力を付与 するかは、各国の法制度によって異なるところであるが、その相違は多分に技術的 な面によるところが大きく、したがって、外国裁判所の判決等に記載がない利息等 についても、我が国における承認・執行の対象とすることができないものではない (最高裁平成五年(オ)第一七六一号同九年七月一一日第二小法廷判決・民集五一 巻六号二五三〇頁参照)。 記録によれば、(1)本件命令等には、上告人らが負担すべきものとされた訴訟 費用に関し、遅延利息について何ら記載がないこと、(2)しかし、香港法上、金 銭給付判決等については、高等法院の個別の命令がない場合には、法定の遅延利息 が当然に発生するものとされており、その利率は、随時、香港最高法院首席裁判官 が命令によって定めるものとされていたこと、(3)本件命令等については、高等
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法院の個別の命令は記載されておらず、香港最高法院首席裁判官の命令により、第 一審判決別紙利息計算表に記載のとおり、本件命令が発せられた日の翌日である昭 和六三年(一九八八年)九月一日以降の遅延利息の利率が定められたことが認めら れる。右の事実によれば、本件命令等に記載のない右利息計算表記載の利率による 遅延利息についても、我が国における承認・執行の対象とすることができるものと した原審の判断は、正当として是認することができる。 また、所論は、原審が遅延利息発生の理由及びその利率の正当性について判断し ていないことの違法をいうが、我が国の裁判所としては、右のような裁判の当否に ついては調査し得ないものというべきである(民事執行法二四条二項)。 原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 三 同第三について 記録によれば、本件命令等の各不服申立期間内に上告人らが所定の不服申立ての 手続をとっていないことが明らかであり、本件命令等が確定したものとした原審の 判断は、結論において是認することができる。また、民事執行法二四条三項の規定 に照らすと、外国裁判所の判決等が確定したことの証明方法は、いわゆる確定証明 書の提出に限られないものというべきである。 論旨は採用することができない。
四 同第四について 1 民訴法一一八条一号所定の「法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認め られること」とは、我が国の国際民訴法の原則から見て、当該外国裁判所の属する 国(以下「判決国」という。)がその事件につき国際裁判管轄(間接的一般管轄) を有すると積極的に認められることをいうものと解される。そして、どのような場 合に判決国が国際裁判管轄を有するかについては、これを直接に規定した法令がな く、よるべき条約や明確な国際法上の原則もいまだ確立されていないことからすれ
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ば、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により、条理に従って 決定するのが相当である。具体的には、基本的に我が国の民訴法の定める土地管轄 に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、当該外国判 決を我が国が承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判決国に国 際裁判管轄が存在するか否かを判断すべきものである。 2 本件命令等は本案判決の付随的裁判である訴訟費用負担の裁判であるから、 本件命令等について香港に国際裁判管轄が認められるか否かは、原則として、その 本案判決について検討すべきものであると解される。 3 これを本件について見ると、原審は、(1)訴外銀行が被上告人らを相手方 として保証債務の履行を求めた第一訴訟については、被告とされた被上告人らの住 所地の裁判籍(旧民訴法二条一項)が香港に存在するものとして、(2)被上告人 らが、第一訴訟の債務を履行することを条件として、訴外銀行と上告人A1及びそ の妻である訴外Dの三名を相手方として、訴外銀行が右上告人らに対して有する根 抵当権につき訴外銀行に代位する旨の確認を求めた第二訴訟については、訴外銀行 に対する本来の反訴についてのみならず、上告人A1及び訴外Dに対する訴えにつ いても、第一訴訟と同一の実体法上の原因に基づく訴訟であって、これと密接な関 連があることから、併合請求の裁判籍(旧民訴法二一条)が香港に存在するものと して、(3)上告人ら及び訴外Dの三名が、後記第三訴訟に対抗して、被上告人ら を相手方として、被上告人Bのみが保証債務を負担することの確認を求めた第四訴 訟については、第三訴訟に対する反訴の性質を有することから、第三訴訟の裁判籍 が香港に存在することを前提として、それぞれ、判決国である香港に国際裁判管轄 を認めたものであるところ、右の原審の判断は、同趣旨の土地管轄に関する規定を 有する現行民訴法の下においても、正当として是認することができる。原判決に所 論の違法はない。
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4 一方、第三訴訟は、被上告人らが、第一訴訟の請求認容を条件として、上告 人ら及び訴外Dの三名を相手方として、求償権を有することの確認を求めるもので あり、英米法系に固有の訴訟形態である第三当事者訴訟(サード・パーティ・プロ シーディング)の性質を有するものである。しかるところ、第三訴訟の被告とされ た者のうち上告人A1及び訴外Dは、同時に第二訴訟の被告でもある上、第二訴訟 と第三訴訟は、いずれも、上告人らと訴外銀行との間で締結された起訴契約に基づ き被上告人らに対して提起された第一訴訟が認容された場合に、根抵当権の代位行 使ないし求償請求ができることの確認を求めるものであり、同一の実体法上の原因 に基づく訴訟であって、相互に密接な関連を有しているから、統一裁的な判をする 必要性が強いということができる。これらの事情にかんがみると、第三訴訟につい ては、民訴法七条の規定の趣旨に照らし、新たに被告とされた上告会社に対する訴 えを含め、第二訴訟との間の併合請求の裁判籍が香港に存在することを肯認して香 港の裁判所のした判決を我が国で承認するのが、当事者間の公平、裁判の適正・迅 速の理念に合致するものであり、条理にかなうものであると考えられる。したがっ て、第三訴訟について香港に国際裁判管轄を認めた原審の判断は、結論において是 認することができる。
5 以上の次第で、論旨は採用することができない。 五 同第五について 1 記録によれば、(1)被上告人らは、昭和六三年(一九八八年)五月一一日、 上告人らに対する本件命令の申立てをしたこと、(2)右申立てを受けた香港高等 法院は、インド国籍を有する神戸市在住の上告人A1及び日本法人である上告会社 に対して「ノーティス・オブ・モーション」を送達する許可をしたこと、(3)右 ノーティス・オブ・モーションは、同年七月二六日、被上告人らから私的に依頼を 受けた日本の弁護士を通じて上告人らに直接交付されたこと、(4)上告人らは、
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右ノーティス・オブ・モーションの審理について香港在住の弁護士を代理人に選任 し、同年八月二五日、同代理人関与の下にその審理が行われたこと、(5)上告人 らの代理人は、前記第三訴訟について香港の国際裁判管轄を争っていたことが認め られる。 2 所論は、要するに、右直接交付による送達は、国際司法共助条約の定める方 式を履践していないから、上告会社に対する関係では民訴法一一八条二号所定の「 送達」の要件を満たしておらず、また、攻撃防御を行うに先立ち香港の国際裁判管 轄を争っていたのであるから、同号所定の「応訴」の要件も満たしていない、とい うものである。なお、上告人A1に対する関係で同号所定の要件を満たしているか 否かについては、職権で判断を加える。 3 ところで、民訴法一一八条二号所定の被告に対する「訴訟の開始に必要な呼 出し若しくは命令の送達」は、我が国の民事訴訟手続に関する法令の規定に従った ものであることを要しないが、被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができ、 かつ、その防御権の行使に支障のないものでなければならない。のみならず、訴訟 手読の明確と安定を図る見地からすれば、裁判上の文書の送達につき、判決国と我 が国との間に司法共助に関する条約が締結されていて、訴訟手続の開始に必要な文 書の送達がその条約の定める方法によるべきものとされている場合には、条約に定 められた方法を遵守しない送達は、同号所定の要件を満たす送達に当たるものでは ないと解するのが相当である。 これを本件について見ると、我が国及び当時香港につき主権を有していた英国は、 いずれも「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び 告知に関する条約」の締約国であるところ、本件のような被上告人らから私的に依 頼を受けた者による直接交付の方法による送達は、右条約上許容されていないのは もとより、我が国及び英国の二国間条約である「日本国とグレート・ブリテン及び
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北部アイルランド連合王国との間の領事条約」(いわゆる日英領事条約)にもその 根拠を見いだすことができない。そうすると、上告人らに対する前記ノーティス・ オブ・モーションの送達は、同号所定の要件を満たさない不適法な送達というべき である。 4 他方、民訴法一一八条二号所定の被告が「応訴したこと」とは、いわゆる応 訴管轄が成立するための応訴とは異なり、被告が、防御の機会を与えられ、かつ、 裁判所で防御のための方法をとったことを意味し、管轄違いの抗弁を提出したよう な場合もこれに含まれると解される。前記の事実によれば、前記ノーティス・オブ・ モーションの審理について、上告人らが同号所定の応訴をしたことは明らかである。 5 そうすると、上告会社に対する関係においては、本件命令等は、民訴法一一 八条二号所定の要件を具備しているものというべきである。この点に関する原審の 判断は、結論において是認することができ、論旨は採用することができない。また、 上告人A1に対する関係においても、本件命令等は、同号所定の要件を具備してい ることが明らかである。
六 同第六について 訴訟費用の負担についてどのように定めるかは、各国の法制度の問題であって、 実際に生じた費用の範囲内でその負担を定めるのであれば、弁護士費用を含めてそ の全額をいずれか一方の当事者に負担させることとしても、民訴法一一八条三号所 定の「公の秩序」に反するものではないというべきである。 記録によれば、本件においては、上告人らに不誠実な行動があったことが考慮さ れて、いわゆるインデムニティ・ベイシスの基準が適用され、弁護士費用を含む訴 訟費用のほぼ全額が上告人らの負担とされたものであるところ、香港の裁判所にお いてこのインデムニティ・ベイシスの基準が適用されるのは特別の場合であり、懲 罰的な評価が含まれていることが認められるが、他方、本件命令等により上告人ら
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に負担が命じられた訴訟費用の額は実際に生じた費用の額を超えるものではないか ら、本件命令等の内容が我が国の公の秩序に反するということはできない。これと 基本的に同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論 の違法はなく、いわゆる懲罰的損害賠償と対比してインデムニティ・ベイシスの基 準による訴訟費用負担の違法をいう論旨は、採用することができない。 また、所論は、香港高等法院の本案判決は、被上告人らが詐取したものであり、 手続的公序に反するというが、その実質は、右本案判決における認定判断が証人の 誤導的な証言の結果によるというものであって、証拠の取捨判断の不当をいうもの であるところ、我が国の裁判所としては、右のような証拠判断の当否については調 査し得ないものであり(民事執行法二四条二項)、論旨は採用することができない。 七 同第七について 民訴法一一八条四号所定の「相互の保証があること」とは、当該判決等をした外 国裁判所の属する国において、我が国の裁判所がしたこれと同種類の判決等が同条 各号所定の要件と重要な点で異ならない要件の下に効力を有するものとされている ことをいうと解される(最高裁昭和五七年(オ)第八二六号同五八年六月七日第三 小法廷判決・民集三七巻五号六一一頁参照)。 記録によれば、(1)香港においては、外国判決の承認に関して外国判決(相互 執行)法及び同規則が存在し、香港総督の命令により、相互の保証があると認める 国を同規則に特定列挙していたこと、(2)我が国は、相互の保証のある国として 同規則に列挙されてはいなかったこと、(3)しかし、香港においては、外国判決 の承認に関して、制定法に基づくもの以外に英国のコモン・口ーの原則が適用され ていたこと、(4)コモン・ローの下においては、外国裁判所が金銭の支払を命じ た判決は、原判示の要件の下に承認されていたことが認められる。そして、コモン・ ローの下における右外国判決承認の要件は、我が国の民訴法一一八条各号所定の要
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件と重要な点において異ならないものということができ、したがって香港と我が国 との間には、外国判決の承認に関して同条四号所定の相互の保証が存在したものと 認めるのが相当である。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することがで きる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 千 種 秀 夫 裁判官 園 部 逸 夫 裁判官 尾 崎 行 信 裁判官 元 原 利 文 裁判官 金 谷 利 廣
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