第1 はじめに、問題の所在
安楽死、尊厳死には、もし、これらの行為が患者の死期を早めて生命を短縮させる場合には、
刑法199条殺人罪または、患者が望んでいたとしても202条同意殺人罪の構成要件に該当してしまう。
*****刑法****
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
***********
第2 安楽死:死期の迫った患者の耐え難い肉体的苦痛を除去して、安らかな死を迎えさせること。
1.類型
1)純粋安楽死
患者の肉体的苦痛を緩和するために鎮痛剤を与える処置などを行ったが、それが生命短縮を伴わない場合。治療行為として当然に適法。
2)消極的安楽死(不作為による安楽死)
患者が、耐え難い苦痛を引き延ばすだけでしかない延命治療を望まない場合に、医師がそれを受けて延命措置を行わないこと。
この場合には、医師には患者の意思に反してまで積極的に生命の延長を図る刑法上の義務はないので、延命措置を行わなかったとしても問題はない。
3)間接的安楽死
患者の苦痛を取り除くための措置(例、モルヒネの投与)が副作用として生命短縮をもたらしてしまう場合。
根拠づけは様々であるが、(同意)殺人罪の構成要件に該当したとしても違法性が阻却されると一般的に考えられている。
4)積極的安楽死(直接的安楽死)
患者の苦痛を取り除くために、直接患者の生命を絶つ場合。
苦痛にあえぎながら、殺してくれと真摯に要求してくる患者を見るに見かねて致死薬を投与するような場合。
(同意)殺人罪の構成要件に該当したとしても、違法性を阻却させて適法とすることができるかどうか、議論となっている。
2.積極的安楽死の適法化のための要件を提示した裁判例
1)名古屋高裁判決(S37.12.22)の六要件
①病者が現代医学の知識と技術から見て病に冒され、しかもその死が目前に迫っていること
②患者の苦痛がはなはだしく、何人も真にこれを見るに忍びない程度のものであること
③もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされたこと
④病者の意識が表明できる場合には、本人の真摯な嘱託又は承認のあること
⑤医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合には医師により得ないと首肯するに足る特別な事情があること
⑥その方法が倫理的にも妥当なものとして認容できるものであること
2)横浜地裁判決(H7.3.28)の四要件
①患者が耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいること
②患者の死が避けられず、その死期が差し迫っていること
③患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし、ほかに代替手段がないこと
④生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること
3)積極的安楽死を適法とする根拠(学説多数説)
積極的安楽死においては、安らかな死を迎える利益が、苦痛を伴った残り少ない生命を維持する利益よりも明らかに上回っており、患者がそれを極限の状況下で選びとっているのだから、その究極の選択である自己決定を例外的に尊重して違法性が阻却される。
つまり、残り少ない生命に関しては、例外的に生命を放棄する自己決定が尊重され(被害者の同意として有効になる)、その患者の意思に従って殺害した者の行為は、違法性が欠けて適法と認められる。
4)積極的安楽死を適法とすることの問題点
余生わずかな老人や重病人の生命についても刑法的保護をゆるめて積極的安楽死を認めてよいことになってしまう。
この発想は、生命のあいだに、保護すべき生命とそうでない生命があるというよううに質的な相違を肯定することになる。
ひいては、ナチス時代にみられた「生存する価値が認められない生命」は抹殺してよいという考えにつながる恐れさえある。
第3 尊厳死:回復の見込みのない患者(例えば、脳死の患者や植物状態患者)に対して生命維持治療を断念して、人間として尊厳ある死を迎えさせること。
*脳死(全脳死)では自立で呼吸できず、回復する可能性はない状態。植物状態は、自力で呼吸できることが多く、まれに回復することもある。
1.尊厳死を適法とする根拠
本人は、肉体的苦痛を感じるわけではないが、意識を回復する見込みもないまま、機械につながれた状態で無理に生き延びさせられている。
そこで、むしろ人間として尊厳ある死、普通の自然の死を迎えさせるため、生命維持治療を中止する行為が許されるかどうかが問題になる。
尊厳死を適法とみなす根拠は、助かる見込みがないのに、無理に生かされつづけている患者の「生きることの押し付けを拒絶する自己決定」を尊重するところに求めるしかない。
2.1.の考え方を認めると安楽死でみられる問題点は生じるか
上記「生きることの押し付けを拒絶する自己決定」は、安楽死で問題となる積極的に生命を放棄する自己決定とは異なるものであり、基本的に尊重され、問題はない。
以上
参考:『よくわかる刑法』井田良氏ら 該当箇所は、飯島暢氏
日経新聞(2012/06/13)記事。「8割超が定員割れ 20校が入学1ケタ」
一法科大学院生としては、自分にも大いに関係のあることであり、掲載します。
法科大学院の本論は、さておき、学びなおしのよい場でもあります。
社会が求める知識を享受する場です。
世の中政治スクールばやりですが、それらよりも法律や行政論を学ぶことができるのではないでしょうか。
法科大学院を出られた方が、地方政治を変えていく、行政を担っていく、こんな考えもあってもいいのではないかと、感じます。
需要はきっとあります。
あらたな需要を開拓しつつ、かつ、法曹の方を増やせばよいと思います。
入学定員が割れて、小規模になれば、選択科目の授業がし辛くなります。
法科大学院同志連携し、ICTで講義をネット中継すれば、カリキュラムが組めると思います。
本論の議論ではございませんが…
本論に関して言えば、法曹に携わる人の偏在があるのではないでしょうか。
その点からは、法曹の人口は増やす必要があるのでは。
都市部に多く、地方に少ない。
弁護士に多く、検察、裁判官に少ない。
一般民事、企業法務に多く、子ども事件、障がい者対応、国際私法、国際公法、行政法など、特定の分野にうすい。
医師の世界でも同じ現象を感じます。
*****日経新聞(2012/06/13)******
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1401H_U2A610C1CR0000/
法科大学院、8割超が定員割れ 20校が入学1ケタ
2012/6/14 11:27
今春、学生を募集した法科大学院73校のうち、86%に当たる63校で入学者が定員を下回ったことが14日、文部科学省の調査で分かった。定員の半数に満たなかったのはうち35校で、前年度より14校増えた。
20校は入学者数が10人未満となり、特に新司法試験合格率が低迷する学校は前年度からの落ち込みが大きかった。
学生数が極端に少ないと教育の質の確保が難しくなる。運営がさらに厳しくなったことが入学者数からも裏付けられ、統廃合が今後加速する可能性がある。
定員に占める入学者数の割合(充足率)が最も低いのは神戸学院大の6%で、次いで東北学院大7%、駿河台大10%、来年度からの学生募集停止を決めた明治学院大13%が続いた。国立は新潟大、静岡大、島根大、香川大、鹿児島大の5校が5割を下回った。全体では前年度比9ポイント減の70%となった。
一方、100%以上だったのは、一橋大、京都大、神戸大など10校で、国立大が大半を占めた。
73校の合格者数は、前年度より586人減の延べ6522人。志願者数は1万8446人で4481人減り、入学者数は470人減の3150人だった。
受験者数を合格者数で割った競争倍率が2倍未満だったのは、6校減の13校。文科省が2倍未満を補助金削減の基準の一つにしていることから、合格者数を絞って2倍以上を確保したケースが多いとみられる。
調査結果は、同日の中教審法科大学院特別委員会で示された。姫路独協大は昨年度から募集停止している。〔共同〕
一法科大学院生としては、自分にも大いに関係のあることであり、掲載します。
法科大学院の本論は、さておき、学びなおしのよい場でもあります。
社会が求める知識を享受する場です。
世の中政治スクールばやりですが、それらよりも法律や行政論を学ぶことができるのではないでしょうか。
法科大学院を出られた方が、地方政治を変えていく、行政を担っていく、こんな考えもあってもいいのではないかと、感じます。
需要はきっとあります。
あらたな需要を開拓しつつ、かつ、法曹の方を増やせばよいと思います。
入学定員が割れて、小規模になれば、選択科目の授業がし辛くなります。
法科大学院同志連携し、ICTで講義をネット中継すれば、カリキュラムが組めると思います。
本論の議論ではございませんが…
本論に関して言えば、法曹に携わる人の偏在があるのではないでしょうか。
その点からは、法曹の人口は増やす必要があるのでは。
都市部に多く、地方に少ない。
弁護士に多く、検察、裁判官に少ない。
一般民事、企業法務に多く、子ども事件、障がい者対応、国際私法、国際公法、行政法など、特定の分野にうすい。
医師の世界でも同じ現象を感じます。
*****日経新聞(2012/06/13)******
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1401H_U2A610C1CR0000/
法科大学院、8割超が定員割れ 20校が入学1ケタ
2012/6/14 11:27
今春、学生を募集した法科大学院73校のうち、86%に当たる63校で入学者が定員を下回ったことが14日、文部科学省の調査で分かった。定員の半数に満たなかったのはうち35校で、前年度より14校増えた。
20校は入学者数が10人未満となり、特に新司法試験合格率が低迷する学校は前年度からの落ち込みが大きかった。
学生数が極端に少ないと教育の質の確保が難しくなる。運営がさらに厳しくなったことが入学者数からも裏付けられ、統廃合が今後加速する可能性がある。
定員に占める入学者数の割合(充足率)が最も低いのは神戸学院大の6%で、次いで東北学院大7%、駿河台大10%、来年度からの学生募集停止を決めた明治学院大13%が続いた。国立は新潟大、静岡大、島根大、香川大、鹿児島大の5校が5割を下回った。全体では前年度比9ポイント減の70%となった。
一方、100%以上だったのは、一橋大、京都大、神戸大など10校で、国立大が大半を占めた。
73校の合格者数は、前年度より586人減の延べ6522人。志願者数は1万8446人で4481人減り、入学者数は470人減の3150人だった。
受験者数を合格者数で割った競争倍率が2倍未満だったのは、6校減の13校。文科省が2倍未満を補助金削減の基準の一つにしていることから、合格者数を絞って2倍以上を確保したケースが多いとみられる。
調査結果は、同日の中教審法科大学院特別委員会で示された。姫路独協大は昨年度から募集停止している。〔共同〕
なんでもそうですが、メディアも両刃の刃です。
メディアがあるからこそ民主主義を維持できますし、メディアが民主主義を壊すこともあります。
メディアがあるからこそ健康に生活できますし、誤った情報が流されれば、医療保健福祉が大きく後退します。
私たちは、 メディアリテラシーをもって、臨む必要があります。
以下は、精神科医 宮田雄吾氏のご発言です。
メディアリテラシーを考えるひとつの重要な問題提起と考えます。
もちろん、私は、これで、NHKクローズアップ現代のすべての放送が信用ならないということを述べているのでは、毛頭ございません。
私も、別のテーマで同番組を見させていただき、勉強させていただいたこともあります。
短い時間に収まるように取捨選択し報道するのは、ものすごく大変なことも理解するところであります。
すべてのメディアがこのようであるということではないですが、そのような場合すなわち、映像はものすごくインパクトがありその編集には最新の注意配慮をすべきところ作成者の意図ありきで編集される場合があるという視点を必ず持つことが大切です。
なお、クローズアップ現代が取り上げられた子どもの薬の問題は、大きな問題であり、その是非自体をここで述べることは、意図していません。
どの薬もそうですが、子どもの投与量の客観的データが少ないところに大きな問題が存しています。国の積極的な取り組みが求められるところですが、そのことは、ここのブログでは、述べません。
取材のありかたを問題にしています。
*****以下、宮田雄吾氏 ツイッター*************************
宮田雄吾@yugomiyata
①子どもに対する向精神薬投与に関するクローズアップ現代の放送と取材のあり方について、憤りをこめて、以後、連続ツイートします。なおツイートにおいて、個人情報は一切伏せます。
宮田雄吾@yugomiyata
②この番組の担当者より横浜カメリアホスピタルに、取材、撮影の依頼が実はありました、当時院長であった私は、記者とディレクターにお会いしました。そのなかで、彼らは「子どもへの多剤多量投与の問題について取材したい」旨を述べました。
宮田雄吾@yugomiyata
③彼らは薬の必要性と問題点についてきちんとバランスを取り、薬害を強調したり不安を仰ぐ番組には決してしないと約束しました。私も薬による改善が得られたケースも多く知っていますが、子どもへの安易な多剤多量投与については問題だと感じていたので「それならば」と、取材撮影を許可しました。
宮田雄吾@yugomiyata
④そのなかで「副作用に苦しむ子どものカルテを積み上げた映像が撮りたい」旨の話がありました。カルテは患者の許可なく他人の目に触れさせてはならず、難しいと伝えたところ、彼らは「上の3冊くらい許可を取って、下のほうは厚みが出るように適当に冊子を積み上げてもらえればよい」と言いました。
宮田雄吾@yugomiyata
⑤さらにその後、患者の了解の上、診察の撮影をしたのですが、その医師からの報告によると、「○○についても話題にして会話をしてください」との依頼があって診察の内容について指示し、診察のやり直しを求めてきたとのことでした。
宮田雄吾@yugomiyata
⑥かつてTV局からの取材についてこのような申し出を受けたことはなかったため、今回のクルーには大変な違和感を覚えました。この違和感が決定的になったのは、番組のタイトルが「子どもに広がる向精神薬の被害」となり、番組紹介が「向精神薬の被害」ばかりを強調しているのを目にしたときでした。
宮田雄吾@yugomiyata
⑦私は番組ディレクターに電話し、「多剤多量投与の問題について警笛をならすことに同意したのであって、向精神薬の被害だけでなくバランスのとれた番組にする約束であった」「タイトルの変更を希望する」「約束を違えるならば当院の取材内容を報道することは拒否する」と伝え、再考を促しました。
宮田雄吾@yugomiyata
⑧その後、タイトルは変わりました。そして当院の取材映像は一切使用しませんとの連絡がありました。
宮田雄吾@yugomiyata
⑨残念ながら番組は、結局、最初に批判回避の言い訳のように「一律に薬の投与を否定するものではありません」と述べた後は、危険性を煽り続ける映像と発言の連続となりました。データやアンケートの切り取り方もとても恣意的な使用がなされていると思います。
宮田雄吾@yugomiyata
⑩かつておつきあいしたNHKの方には今までとても、誠実かつ丁寧な取材をいただいていたので今回は本当に哀しかったのです。以上です。あとはいつものお気楽ツイートに戻したいと思います。お目汚しでしたm(__)m
以上
***********************
以下は、実際の放送の書きお越しです。
toshihiro36様、書きお越し、感謝いたします。
*********同番組の書きお越し*****
http://togetter.com/li/320436
6月13日に放送されたものを文字起こししています。
by toshihiro36 .
冒頭のVTR.
<ナレーション> 上半身が揺れ続け、止まらなくなった小学生。足の先が痙攣し、小刻みに震える高校生。いま向精神薬と呼ばれる薬の副作用に、多くの子どもが苦しんでいます。向精神薬は、発達障害やうつ病などの精神疾患に処方される薬です。しかし子どもに処方する際の、明確な基準がありません。.
<ナレーション> 小学2年生の時にクラスで落ち着きがないと言われ、向精神薬を飲み始めた男の子。頭痛などの副作用に苦しみました。学校では、いま子どもの心の問題に、医療機関と連携して対応しようとする取り組みが、国の方針で進められています。.
<ナレーション> これに対し副作用で悩んだ人や家族から、危惧する声が上がっています。向精神薬を飲む子どもに、何が起きているのか。家族や教師は、子どもをどう支えればいいのか。考えます。.
. ここからスタジオです
国谷:こんばんは、クローズアップ現代です。うつ病や統合失調症など精神的疾患は、早く発見し治療をすることで悪化を防ぐと考えられています。また重い症状が出てからでは、薬が効きにくくなるケースもあるとされています。ですからこの番組は、決して一律に薬の投与を否定するものではありません。.
国谷:今夜お伝えするのは、いま多くの子どもたちが精神科を受診し、精神を穏やかにする向精神病薬や、激しい落ち込みを改善する抗うつ薬・抗不安薬さらには睡眠薬を処方され服用しているという実態です。.
.
http://t.co/YAPvwEm6.
国谷:ご覧のように厚生労働省が行っている患者調査では、発達障害やうつ病など精神疾患で病院を受診した未成年の患者の数は、平成20年にはおよそ15万人と12年前に比べて倍増しています。落ち込んで学校に行けない。落ちついて座っていられない。授業に集中できないなど症状はさまざまです。.
http://t.co/CxFBuray.
国谷:こうした症状を改善させるため、薬が処方されることが少なからずあるとみられています。国立精神・神経医療研究センターが行った薬の投与開始年齢の調査です。就学前がご覧のように39%、小学校低学年が36%と小学校低学年までが7割を超えていました。.
国谷:成長過程にある子どもたちに処方される薬は、子どもへの治験が難しいことなどから、子どもが服用した場合の影響についてほとんど解明されていません。また、どれくらいの量が適量なのか明らかになっていません。.
国谷:つまり子どもへの安全な処方の基準がないまま、精神科を受診する子どもに対して精神安定剤や睡眠薬などが時に多量に処方されているのです。.
VTRが流れます.
<ナレーション> 関東地方の小学校に通う9歳の男の子です。男の子が2年生のとき、母親は担任から呼び出されました。授業中に歩き回るなど問題行動が多く、困っているというのです。連絡帳に書かれた担任からのコメントです。「授業参観、教室は嫌だったようで教材室で過ごしてもらいました」.
<ナレーション> 「テスト、やりたくないと後期1枚もやっていません」担任は市の教育相談を受けるよう指示、市の担当者は母親に病院に行くよう伝えました。精神科の医師は発達障害の疑いがあるとして、衝動的な行動を抑える向精神薬を処方しました。
母親:「クラスの中でなじめないんだったら、(薬を)飲んでみます?」って言われて。じゃあ、飲んでみなくちゃいけないのかなあ程度だったんですけど、了承して飲ませました。.
http://t.co/yO5QuHBK
<ナレーション> 薬を飲み始めると男の子は落ちついて授業を受けられるようになりました。しかし一方で生き生きとした表情が消え、痩せていったといいます。母親が薬の添付文書を読むと、男の子が訴える症状が副作用として書かれていました。心配になった母親は、薬をやめたいと担任に申し出ました。.
<ナレーション> しかし学校側は「薬で男の子は落ちついている。この状態を保ってほしい」と、譲らなかったといいます。.
母親:薬を飲まないと学校にいられないんじゃないかって、息子は排除されるんじゃないかって…そういう気持ちでいっぱいになって….
<ナレーション> 学校で問題を抱えた子どもが病院を受診し、薬を飲むケースは最近増えているといいます。フリースクールの理事長・奥地圭子さん。ここ数年、子どもたちがすぐに医療につなげられる傾向に疑問を感じてきました。.
<ナレーション> 奥地さんは全国の親の会に呼びかけて、子どもと医療の実態についてのアンケートを実施しました。その結果、学校に通えない子どもの7割が精神科を受診。さらにその7割が向精神薬を飲んでいました。.
アンケート回答:「学校から医療へのハードルが低くなり過ぎ、危険だと感じる」「これでは薬漬けになってしまうと、恐怖を感じている」.
奥地:今はたいへん薬が多剤・大量投与になっちゃてて、どうしてこれだけの薬がいるんだろうというぐらいに出ます。はたして、子どもにとっていいんだろうかっていう非常に大きい問題を突きつけられていることがわかるわけですよ。.
<ナレーション> 国立精神・神経医療研究センターの中川栄二医師です。全国の精神科・小児科の医師に調査を行い、600人から回答を得ました。発達障害の症状がある子どもへの向精神薬投与について、どんな薬を何歳からどれだけの量を与えているか、それぞれの医師に聞きました。.
<ナレーション> 興奮を抑える薬を3~4歳で与えていた医師。睡眠障害を押える向精神薬を1~2歳で投与した医師もいました。回答を寄せた小児神経科医の声です。「内心ヒヤヒヤしながら処方」「重篤な副作用も稀ではない向精神薬を使い続けることに疑問を感じる」.
<ナレーション> この結果を受け中川さんは今、子どもに対する向精神薬の処方の指針作りに取り組んでいます。.
中川:向精神薬が成長過程にある子どもの脳に与える長期的な影響については、全く解明されていません。慎重な投与が必要だと思います。.
<ナレーション> 子どもが向精神薬を飲むことには、危険があると訴えはじめた人たちがいます。今年1月に発足した「精神科の早期治療に反対する会」です。子どもの頃に精神科を受診し、多量の精神薬を飲んだ人やその親たちが参加しています。.
<ナレーション> 現在、参加しているのは130人。副作用の実態を国に伝え、子どもを精神科につなげることに慎重になるよう訴えています。.
スタジオに戻ります.
国谷:今夜は精神科医の石川憲彦さん、そして取材にあたってきました水戸放送局の井上記者とともにお伝えしてまいります。石川さん、そうした薬の投与開始年齢が、小学校の低学年までというのが7割を超えていました。幼い、成長過程の子どもの体への影響は、どうみたらいいんですか?.
石川:それはとても心配で。人間の脳っていうのは生まれおちた時に土台と大枠組みができているんですけれども。8歳くらいまでの間に内装をしたりして徐々に作っていくわけですね。そして8歳ぐらいで形は大人並みになるんですけれども、配線工事などがその後数年間で、ものすごい勢いで起こる。.
石川:つまり、そういう途中段階は大人とは違う。そこに起こったことというのも違うので、これはとても怖いことだと思います。.
国谷:上半身の動きが止まらなくなるとか、あるいは頭痛がするとか副作用が出ているようですけれども。どんな副作用が考えられるんですか?.
石川:画面に出たような運動に出るという見える副作用の場合は、比較的誰にでもすぐにわかるんですけれども。薬というのは全部の脳に働きますから。それから全身に回るんで、肝臓・心臓・すい臓・腎臓・・・。これらに対する危害は見えないだけに、気がついた時には手遅れということがあるくらいです。.
国谷:問題のある場所だけに効くわけではないのですね。そのような副作用の起こる可能性のある薬の投与が行われるのは...井上さん、いまのリポートにありましたように、学校から医療の現場につながっていく傾向が強まっているという背景もあるようですが。なぜその傾向が拡大してい飲んですか?.
井上:最近は発達障害やうつ病などの兆候を早く見つけて、必要なら早く医療につなげて専門的なケアをした方が、症状の悪化も防げて本人のためにもいいという考え方が、学校現場や医療の世界にも浸透してきているんです。.
井上:文部科学省は「子どもの異変を見抜くための教師向けの手引き」というものを作成しておりますし。それから地域では病院の医師が学校の中に入っていって、教師の相談に乗るという取り組みも各地で始まっているんです。.
井上:こうした早期の対応をすることで、子どもの周囲の環境が整えられて状況が改善するということも、もちろんあるんですが…中には不必要な投薬を受けて、深刻な副作用に苦しむというケースも出てきているんです。.
国谷:石川さんは40年を超える精神科医としての経験をお持ちなんですけれども。なぜいま学校現場から、子どもたちが医療現場につながりやすくなっているとみてらっいますか
石川:私は2つほど大きな問題があると思うんですけど。ひとつは発達障害という言葉が広がると、親も先生も医者も「見逃してはいけない」という意識が強く働くんですね。.
石川:「良いことをしてあげねば」という善意から、見逃してはいけないという意識と善意が入り混じって、どんどん見逃してはいけないという意識が強まっているんですね。.
石川:もう一つは、先生も親も子どもの行動を…昔だったら、元気がいいとか個性的と見たり…いろんなおもしろい行動と見たものを、問題行動なんじゃないかというふうに悪い方に見るようになってしまった。先生に余裕がなくなって、医者に任せた方が楽だと。その2つが重なっているように思います。.
国谷:こうした傾向が強まってきたのは、いつぐらいからですか?.
石川:だいたいこの10年で急速に広がっていると思います。.
国谷:この向精神薬にできるだけ頼らずに、子どもたちにじっくり向き合うことで問題を解決していこうという取り組みが、教師や医師の間で始まっています。.
.VTRが流れます.
<ナレーション> 小児神経科の医師を囲む、教師たちの勉強会です。問題行動のある子どもを数多く診てきた宮尾益知医師です。発達障害の特性なども視野に入れながら、子どもの立場に立った具体的な対応の仕方をアドバイスしています。.
<ナレーション> 宮尾医師は感覚を脳に伝える神経の発達が、遅れているのではないかと指摘しました。遊びを通して手先や体全体の感覚を養うことを勧めました。薬だけに頼るのではなく、問題行動の背景に何があるのか。子どもの気持ちに寄り添いながら、考えることが大事だと伝えています。.
<ナレーション> 周りの大人が気持を受け止めることで、回復に向かった女性がいます。裕子さんが向精神薬の服用を始めたのは、中学2年生のとき。ストレスから吐き気が止まらなくなり、精神科を受診したことがきっかけでした。心身症と診断されて入院、服用に加え点滴でも向精神薬を投与されました。.
<ナレーション> 意識が朦朧とし、歩くこともトイレに行くこともできなくなってしまった裕子さん。薬による治療は8年にわたりました。.
母親:おかしい、これはおかしいね。なんで止まらないんだろうって。どんどん悪くなるのは変だよって、治療をしていってて思ったんですよね。.
<ナレーション> 裕子さんの母親はインターネットで見つけた医師に、セカンドオピニオンを求めました。すると裕子さんの症状は、薬の副作用だと指摘されたのです。母親は薬を少しづつ減らしていくことにしました。薬に頼らず、娘の気持ちに寄り添いながら支えていく決意をしたのです。.
母親:減薬していくだけじゃなくて、家族の総括というか…この子が言い始めるとか、この子が何かしようとするのを待つ側にならないといけないというか….
<ナレーション> 減薬に取り組んだ時の、母親の日記です。向精神薬を減らすにつれて、裕子さんは薬の激しい離脱症状に苦しむようになります。「奇声を上げて、『キャー』と起きてくる」「中学生の頃の夢が怖いと言う」「身体が固まり、呼吸ができない」.
母親:この辺にある刃物でもなんでも持って、「あーっ」ってなっちゃう。1回は、刺しちゃうみたいなこともあったし。.
<ナレーション> 母親は裕子さんの苦しみを受け止め、ずっと見守り続けました。薬を減らしはじめて6年、症状は徐々に改善しました。裕子さんはしまい込んでいた自分の気持ちを、母親に打ち明けるようになりました。.
母親:この子も言えなかったことを、言えるようになってるなとか。長い時間をかけて伝えようとする言葉を、夜中までかけて…朝方まで(娘が)言うのを待つ。本当にこの子と向き合って、これで良かったと思います。.
<ナレーション> 裕子さんは先月から近所の農家で、野菜の出荷を手伝い始めました。自分がやりたかった仕事です。.
裕子:自分の感情があっていろんなことができるので、どんなことでも嬉しいし楽しいし。いろんなことにチャレンジしたいです。.
スタジオに戻ります.
.
国谷:今のリポートで薬に頼るのではなく、宮尾先生は「もう少し子どもの立場に立った対応が必要だ」とおっしゃってましたけれども。どのように見てらっしゃいました?.
石川:まったくその通りですね。発達障害であろうとなかろうと、子どもの行動の背景には必ず心の動きがあるわけですね。その心の動きさえわかると、ダメだと思っていることが全く違って見えてくる。.
石川:例えば、ある子どもは牛乳のにおいが嫌なので、給食を食べないようにして我慢していた。それでも食べさされると吐いちゃう。それを繰り返すうちに、我慢していると食べろと怒られるので...我慢というのは子どもにとって一生懸命の行為なのに、それを否定されてどうしていいかわからなくなる。.
石川:それで教室の中で、いろんな行動をし出す子どもがいる。そこが表面だけみると、いろんな行動を起こす変な子だと見られて、病院に連れてこられることがありますし。あるいは、よくちょっかいを出すので連れてこられる子どもがいるんですが、.
石川:大抵の子どもが何かするのは、気分を変えたいか認められたくてするんですよね。そういう子どもを押さえつけるんじゃなくて、むしろ役割を与えてみる。役割を発揮したらみんなが喜ぶし、自分ができたと思うとすごく嬉しくなる。そうすると、ちょっかいを出すという行為が楽しいものに変わってく。.
石川:病気と見るんじゃなくて、その背景にある心をどうやったら生かせるか。その子の特色を生かせるかというふうに見ていく必要があるんだけれども…今の先生たちは、そのゆとりを奪われているように思いますね。.
国谷:実際に薬の投与が必要だというお子さんもいらっしゃる。しかし薬を投与しなくても改善できるというのは、どれくらい?.
石川:12歳ぐらいまでの子どもは、よほど生命の危機にあるとか生活が危ないということを除けば…そういう数%の人を除けば、ほとんどが実は薬なしで問題を乗り越えていけると考えています。.
国谷:先ほどのリポートにもありましたけれども、長期的な薬の体への影響って、まだわかっていないんですよね?.
石川:ええ、実は調査自体が…これは原子力の問題と同じで10年・20年・30年ではすまないほどの問題が、調査の中で出てくると思うんですね。しかしそれを手掛けた研究は非常に少ないし、ようやくヨーロッパの一部で危険を警告するような雰囲気は出てますが、まだ確定したものは出てません。.
国谷:薬をいったん始めて大量に飲んでいると、それを止めることが難しいんですね?.
石川:ええ、止めることはできるんですけれども…慎重に止めないと、止めること自体による、向精神薬には離脱という恐ろしい反応がありますし…薬によってはてんかんで命がなくなることもあるので、必ず医者と相談する。.
石川:自分の医師がだめならばセカンドオピニオンを求めて、それを看てくれるお医者さんと相談することが必要だと思います。.
国谷:薬を飲んでいて不安になってらっしゃる方、止めてしまってまた学校で問題が起きるんではないかと…いろんな不安を抱えながら見ていらっしゃる方もいらっしゃると思うんですけれども、どんなアドバイスをされますか?.
石川:苦しい時期には物事は否定的にしか見えないし、みんなも焦るんですけど…そこを冷静に乗り越えると、問題だと思ったことはその人の個性であったり・能力であったり・すてきな可能性であったりすることが、むしろ多いんですね。.
石川:例えばこだわりがあって困るという人もいるけれども、そのこだわりが逆に細かいいろんな発見につながったり。そんないろんな持っていることを障害・問題と見ないで、これは将来へ変わっていくチャンスだと、変わっていくきっかけになるんだと苦しい時期を捉えて、.
石川:未来への希望を持つことと、そういう希望を交換できる友達や先生やいろんな人と出会っていくことで…精神障害そのもので命がなくなることはありません。そのことで失望されなければ、時間はかかっても必ず希望は待っていることが多いので。そこは心配しないでいただきたいと思います。.
国谷:子どもと薬の関係は、どうあるべきですか?.
石川:どうしても必要なもの、これは薬だけにしか頼れないこともありますけれども…使うとすれば最小限・最小期間。できる限りしょっちゅう副作用を確かめながら、やっていくことが必要だと思います。.
国谷:どうもありがとうございました。石川憲彦さんでした。.
以上
メディアがあるからこそ民主主義を維持できますし、メディアが民主主義を壊すこともあります。
メディアがあるからこそ健康に生活できますし、誤った情報が流されれば、医療保健福祉が大きく後退します。
私たちは、 メディアリテラシーをもって、臨む必要があります。
以下は、精神科医 宮田雄吾氏のご発言です。
メディアリテラシーを考えるひとつの重要な問題提起と考えます。
もちろん、私は、これで、NHKクローズアップ現代のすべての放送が信用ならないということを述べているのでは、毛頭ございません。
私も、別のテーマで同番組を見させていただき、勉強させていただいたこともあります。
短い時間に収まるように取捨選択し報道するのは、ものすごく大変なことも理解するところであります。
すべてのメディアがこのようであるということではないですが、そのような場合すなわち、映像はものすごくインパクトがありその編集には最新の注意配慮をすべきところ作成者の意図ありきで編集される場合があるという視点を必ず持つことが大切です。
なお、クローズアップ現代が取り上げられた子どもの薬の問題は、大きな問題であり、その是非自体をここで述べることは、意図していません。
どの薬もそうですが、子どもの投与量の客観的データが少ないところに大きな問題が存しています。国の積極的な取り組みが求められるところですが、そのことは、ここのブログでは、述べません。
取材のありかたを問題にしています。
*****以下、宮田雄吾氏 ツイッター*************************
宮田雄吾@yugomiyata
①子どもに対する向精神薬投与に関するクローズアップ現代の放送と取材のあり方について、憤りをこめて、以後、連続ツイートします。なおツイートにおいて、個人情報は一切伏せます。
宮田雄吾@yugomiyata
②この番組の担当者より横浜カメリアホスピタルに、取材、撮影の依頼が実はありました、当時院長であった私は、記者とディレクターにお会いしました。そのなかで、彼らは「子どもへの多剤多量投与の問題について取材したい」旨を述べました。
宮田雄吾@yugomiyata
③彼らは薬の必要性と問題点についてきちんとバランスを取り、薬害を強調したり不安を仰ぐ番組には決してしないと約束しました。私も薬による改善が得られたケースも多く知っていますが、子どもへの安易な多剤多量投与については問題だと感じていたので「それならば」と、取材撮影を許可しました。
宮田雄吾@yugomiyata
④そのなかで「副作用に苦しむ子どものカルテを積み上げた映像が撮りたい」旨の話がありました。カルテは患者の許可なく他人の目に触れさせてはならず、難しいと伝えたところ、彼らは「上の3冊くらい許可を取って、下のほうは厚みが出るように適当に冊子を積み上げてもらえればよい」と言いました。
宮田雄吾@yugomiyata
⑤さらにその後、患者の了解の上、診察の撮影をしたのですが、その医師からの報告によると、「○○についても話題にして会話をしてください」との依頼があって診察の内容について指示し、診察のやり直しを求めてきたとのことでした。
宮田雄吾@yugomiyata
⑥かつてTV局からの取材についてこのような申し出を受けたことはなかったため、今回のクルーには大変な違和感を覚えました。この違和感が決定的になったのは、番組のタイトルが「子どもに広がる向精神薬の被害」となり、番組紹介が「向精神薬の被害」ばかりを強調しているのを目にしたときでした。
宮田雄吾@yugomiyata
⑦私は番組ディレクターに電話し、「多剤多量投与の問題について警笛をならすことに同意したのであって、向精神薬の被害だけでなくバランスのとれた番組にする約束であった」「タイトルの変更を希望する」「約束を違えるならば当院の取材内容を報道することは拒否する」と伝え、再考を促しました。
宮田雄吾@yugomiyata
⑧その後、タイトルは変わりました。そして当院の取材映像は一切使用しませんとの連絡がありました。
宮田雄吾@yugomiyata
⑨残念ながら番組は、結局、最初に批判回避の言い訳のように「一律に薬の投与を否定するものではありません」と述べた後は、危険性を煽り続ける映像と発言の連続となりました。データやアンケートの切り取り方もとても恣意的な使用がなされていると思います。
宮田雄吾@yugomiyata
⑩かつておつきあいしたNHKの方には今までとても、誠実かつ丁寧な取材をいただいていたので今回は本当に哀しかったのです。以上です。あとはいつものお気楽ツイートに戻したいと思います。お目汚しでしたm(__)m
以上
***********************
以下は、実際の放送の書きお越しです。
toshihiro36様、書きお越し、感謝いたします。
*********同番組の書きお越し*****
http://togetter.com/li/320436
6月13日に放送されたものを文字起こししています。
by toshihiro36 .
冒頭のVTR.
<ナレーション> 上半身が揺れ続け、止まらなくなった小学生。足の先が痙攣し、小刻みに震える高校生。いま向精神薬と呼ばれる薬の副作用に、多くの子どもが苦しんでいます。向精神薬は、発達障害やうつ病などの精神疾患に処方される薬です。しかし子どもに処方する際の、明確な基準がありません。.
<ナレーション> 小学2年生の時にクラスで落ち着きがないと言われ、向精神薬を飲み始めた男の子。頭痛などの副作用に苦しみました。学校では、いま子どもの心の問題に、医療機関と連携して対応しようとする取り組みが、国の方針で進められています。.
<ナレーション> これに対し副作用で悩んだ人や家族から、危惧する声が上がっています。向精神薬を飲む子どもに、何が起きているのか。家族や教師は、子どもをどう支えればいいのか。考えます。.
. ここからスタジオです
国谷:こんばんは、クローズアップ現代です。うつ病や統合失調症など精神的疾患は、早く発見し治療をすることで悪化を防ぐと考えられています。また重い症状が出てからでは、薬が効きにくくなるケースもあるとされています。ですからこの番組は、決して一律に薬の投与を否定するものではありません。.
国谷:今夜お伝えするのは、いま多くの子どもたちが精神科を受診し、精神を穏やかにする向精神病薬や、激しい落ち込みを改善する抗うつ薬・抗不安薬さらには睡眠薬を処方され服用しているという実態です。.
.
http://t.co/YAPvwEm6.
国谷:ご覧のように厚生労働省が行っている患者調査では、発達障害やうつ病など精神疾患で病院を受診した未成年の患者の数は、平成20年にはおよそ15万人と12年前に比べて倍増しています。落ち込んで学校に行けない。落ちついて座っていられない。授業に集中できないなど症状はさまざまです。.
http://t.co/CxFBuray.
国谷:こうした症状を改善させるため、薬が処方されることが少なからずあるとみられています。国立精神・神経医療研究センターが行った薬の投与開始年齢の調査です。就学前がご覧のように39%、小学校低学年が36%と小学校低学年までが7割を超えていました。.
国谷:成長過程にある子どもたちに処方される薬は、子どもへの治験が難しいことなどから、子どもが服用した場合の影響についてほとんど解明されていません。また、どれくらいの量が適量なのか明らかになっていません。.
国谷:つまり子どもへの安全な処方の基準がないまま、精神科を受診する子どもに対して精神安定剤や睡眠薬などが時に多量に処方されているのです。.
VTRが流れます.
<ナレーション> 関東地方の小学校に通う9歳の男の子です。男の子が2年生のとき、母親は担任から呼び出されました。授業中に歩き回るなど問題行動が多く、困っているというのです。連絡帳に書かれた担任からのコメントです。「授業参観、教室は嫌だったようで教材室で過ごしてもらいました」.
<ナレーション> 「テスト、やりたくないと後期1枚もやっていません」担任は市の教育相談を受けるよう指示、市の担当者は母親に病院に行くよう伝えました。精神科の医師は発達障害の疑いがあるとして、衝動的な行動を抑える向精神薬を処方しました。
母親:「クラスの中でなじめないんだったら、(薬を)飲んでみます?」って言われて。じゃあ、飲んでみなくちゃいけないのかなあ程度だったんですけど、了承して飲ませました。.
http://t.co/yO5QuHBK
<ナレーション> 薬を飲み始めると男の子は落ちついて授業を受けられるようになりました。しかし一方で生き生きとした表情が消え、痩せていったといいます。母親が薬の添付文書を読むと、男の子が訴える症状が副作用として書かれていました。心配になった母親は、薬をやめたいと担任に申し出ました。.
<ナレーション> しかし学校側は「薬で男の子は落ちついている。この状態を保ってほしい」と、譲らなかったといいます。.
母親:薬を飲まないと学校にいられないんじゃないかって、息子は排除されるんじゃないかって…そういう気持ちでいっぱいになって….
<ナレーション> 学校で問題を抱えた子どもが病院を受診し、薬を飲むケースは最近増えているといいます。フリースクールの理事長・奥地圭子さん。ここ数年、子どもたちがすぐに医療につなげられる傾向に疑問を感じてきました。.
<ナレーション> 奥地さんは全国の親の会に呼びかけて、子どもと医療の実態についてのアンケートを実施しました。その結果、学校に通えない子どもの7割が精神科を受診。さらにその7割が向精神薬を飲んでいました。.
アンケート回答:「学校から医療へのハードルが低くなり過ぎ、危険だと感じる」「これでは薬漬けになってしまうと、恐怖を感じている」.
奥地:今はたいへん薬が多剤・大量投与になっちゃてて、どうしてこれだけの薬がいるんだろうというぐらいに出ます。はたして、子どもにとっていいんだろうかっていう非常に大きい問題を突きつけられていることがわかるわけですよ。.
<ナレーション> 国立精神・神経医療研究センターの中川栄二医師です。全国の精神科・小児科の医師に調査を行い、600人から回答を得ました。発達障害の症状がある子どもへの向精神薬投与について、どんな薬を何歳からどれだけの量を与えているか、それぞれの医師に聞きました。.
<ナレーション> 興奮を抑える薬を3~4歳で与えていた医師。睡眠障害を押える向精神薬を1~2歳で投与した医師もいました。回答を寄せた小児神経科医の声です。「内心ヒヤヒヤしながら処方」「重篤な副作用も稀ではない向精神薬を使い続けることに疑問を感じる」.
<ナレーション> この結果を受け中川さんは今、子どもに対する向精神薬の処方の指針作りに取り組んでいます。.
中川:向精神薬が成長過程にある子どもの脳に与える長期的な影響については、全く解明されていません。慎重な投与が必要だと思います。.
<ナレーション> 子どもが向精神薬を飲むことには、危険があると訴えはじめた人たちがいます。今年1月に発足した「精神科の早期治療に反対する会」です。子どもの頃に精神科を受診し、多量の精神薬を飲んだ人やその親たちが参加しています。.
<ナレーション> 現在、参加しているのは130人。副作用の実態を国に伝え、子どもを精神科につなげることに慎重になるよう訴えています。.
スタジオに戻ります.
国谷:今夜は精神科医の石川憲彦さん、そして取材にあたってきました水戸放送局の井上記者とともにお伝えしてまいります。石川さん、そうした薬の投与開始年齢が、小学校の低学年までというのが7割を超えていました。幼い、成長過程の子どもの体への影響は、どうみたらいいんですか?.
石川:それはとても心配で。人間の脳っていうのは生まれおちた時に土台と大枠組みができているんですけれども。8歳くらいまでの間に内装をしたりして徐々に作っていくわけですね。そして8歳ぐらいで形は大人並みになるんですけれども、配線工事などがその後数年間で、ものすごい勢いで起こる。.
石川:つまり、そういう途中段階は大人とは違う。そこに起こったことというのも違うので、これはとても怖いことだと思います。.
国谷:上半身の動きが止まらなくなるとか、あるいは頭痛がするとか副作用が出ているようですけれども。どんな副作用が考えられるんですか?.
石川:画面に出たような運動に出るという見える副作用の場合は、比較的誰にでもすぐにわかるんですけれども。薬というのは全部の脳に働きますから。それから全身に回るんで、肝臓・心臓・すい臓・腎臓・・・。これらに対する危害は見えないだけに、気がついた時には手遅れということがあるくらいです。.
国谷:問題のある場所だけに効くわけではないのですね。そのような副作用の起こる可能性のある薬の投与が行われるのは...井上さん、いまのリポートにありましたように、学校から医療の現場につながっていく傾向が強まっているという背景もあるようですが。なぜその傾向が拡大してい飲んですか?.
井上:最近は発達障害やうつ病などの兆候を早く見つけて、必要なら早く医療につなげて専門的なケアをした方が、症状の悪化も防げて本人のためにもいいという考え方が、学校現場や医療の世界にも浸透してきているんです。.
井上:文部科学省は「子どもの異変を見抜くための教師向けの手引き」というものを作成しておりますし。それから地域では病院の医師が学校の中に入っていって、教師の相談に乗るという取り組みも各地で始まっているんです。.
井上:こうした早期の対応をすることで、子どもの周囲の環境が整えられて状況が改善するということも、もちろんあるんですが…中には不必要な投薬を受けて、深刻な副作用に苦しむというケースも出てきているんです。.
国谷:石川さんは40年を超える精神科医としての経験をお持ちなんですけれども。なぜいま学校現場から、子どもたちが医療現場につながりやすくなっているとみてらっいますか
石川:私は2つほど大きな問題があると思うんですけど。ひとつは発達障害という言葉が広がると、親も先生も医者も「見逃してはいけない」という意識が強く働くんですね。.
石川:「良いことをしてあげねば」という善意から、見逃してはいけないという意識と善意が入り混じって、どんどん見逃してはいけないという意識が強まっているんですね。.
石川:もう一つは、先生も親も子どもの行動を…昔だったら、元気がいいとか個性的と見たり…いろんなおもしろい行動と見たものを、問題行動なんじゃないかというふうに悪い方に見るようになってしまった。先生に余裕がなくなって、医者に任せた方が楽だと。その2つが重なっているように思います。.
国谷:こうした傾向が強まってきたのは、いつぐらいからですか?.
石川:だいたいこの10年で急速に広がっていると思います。.
国谷:この向精神薬にできるだけ頼らずに、子どもたちにじっくり向き合うことで問題を解決していこうという取り組みが、教師や医師の間で始まっています。.
.VTRが流れます.
<ナレーション> 小児神経科の医師を囲む、教師たちの勉強会です。問題行動のある子どもを数多く診てきた宮尾益知医師です。発達障害の特性なども視野に入れながら、子どもの立場に立った具体的な対応の仕方をアドバイスしています。.
<ナレーション> 宮尾医師は感覚を脳に伝える神経の発達が、遅れているのではないかと指摘しました。遊びを通して手先や体全体の感覚を養うことを勧めました。薬だけに頼るのではなく、問題行動の背景に何があるのか。子どもの気持ちに寄り添いながら、考えることが大事だと伝えています。.
<ナレーション> 周りの大人が気持を受け止めることで、回復に向かった女性がいます。裕子さんが向精神薬の服用を始めたのは、中学2年生のとき。ストレスから吐き気が止まらなくなり、精神科を受診したことがきっかけでした。心身症と診断されて入院、服用に加え点滴でも向精神薬を投与されました。.
<ナレーション> 意識が朦朧とし、歩くこともトイレに行くこともできなくなってしまった裕子さん。薬による治療は8年にわたりました。.
母親:おかしい、これはおかしいね。なんで止まらないんだろうって。どんどん悪くなるのは変だよって、治療をしていってて思ったんですよね。.
<ナレーション> 裕子さんの母親はインターネットで見つけた医師に、セカンドオピニオンを求めました。すると裕子さんの症状は、薬の副作用だと指摘されたのです。母親は薬を少しづつ減らしていくことにしました。薬に頼らず、娘の気持ちに寄り添いながら支えていく決意をしたのです。.
母親:減薬していくだけじゃなくて、家族の総括というか…この子が言い始めるとか、この子が何かしようとするのを待つ側にならないといけないというか….
<ナレーション> 減薬に取り組んだ時の、母親の日記です。向精神薬を減らすにつれて、裕子さんは薬の激しい離脱症状に苦しむようになります。「奇声を上げて、『キャー』と起きてくる」「中学生の頃の夢が怖いと言う」「身体が固まり、呼吸ができない」.
母親:この辺にある刃物でもなんでも持って、「あーっ」ってなっちゃう。1回は、刺しちゃうみたいなこともあったし。.
<ナレーション> 母親は裕子さんの苦しみを受け止め、ずっと見守り続けました。薬を減らしはじめて6年、症状は徐々に改善しました。裕子さんはしまい込んでいた自分の気持ちを、母親に打ち明けるようになりました。.
母親:この子も言えなかったことを、言えるようになってるなとか。長い時間をかけて伝えようとする言葉を、夜中までかけて…朝方まで(娘が)言うのを待つ。本当にこの子と向き合って、これで良かったと思います。.
<ナレーション> 裕子さんは先月から近所の農家で、野菜の出荷を手伝い始めました。自分がやりたかった仕事です。.
裕子:自分の感情があっていろんなことができるので、どんなことでも嬉しいし楽しいし。いろんなことにチャレンジしたいです。.
スタジオに戻ります.
.
国谷:今のリポートで薬に頼るのではなく、宮尾先生は「もう少し子どもの立場に立った対応が必要だ」とおっしゃってましたけれども。どのように見てらっしゃいました?.
石川:まったくその通りですね。発達障害であろうとなかろうと、子どもの行動の背景には必ず心の動きがあるわけですね。その心の動きさえわかると、ダメだと思っていることが全く違って見えてくる。.
石川:例えば、ある子どもは牛乳のにおいが嫌なので、給食を食べないようにして我慢していた。それでも食べさされると吐いちゃう。それを繰り返すうちに、我慢していると食べろと怒られるので...我慢というのは子どもにとって一生懸命の行為なのに、それを否定されてどうしていいかわからなくなる。.
石川:それで教室の中で、いろんな行動をし出す子どもがいる。そこが表面だけみると、いろんな行動を起こす変な子だと見られて、病院に連れてこられることがありますし。あるいは、よくちょっかいを出すので連れてこられる子どもがいるんですが、.
石川:大抵の子どもが何かするのは、気分を変えたいか認められたくてするんですよね。そういう子どもを押さえつけるんじゃなくて、むしろ役割を与えてみる。役割を発揮したらみんなが喜ぶし、自分ができたと思うとすごく嬉しくなる。そうすると、ちょっかいを出すという行為が楽しいものに変わってく。.
石川:病気と見るんじゃなくて、その背景にある心をどうやったら生かせるか。その子の特色を生かせるかというふうに見ていく必要があるんだけれども…今の先生たちは、そのゆとりを奪われているように思いますね。.
国谷:実際に薬の投与が必要だというお子さんもいらっしゃる。しかし薬を投与しなくても改善できるというのは、どれくらい?.
石川:12歳ぐらいまでの子どもは、よほど生命の危機にあるとか生活が危ないということを除けば…そういう数%の人を除けば、ほとんどが実は薬なしで問題を乗り越えていけると考えています。.
国谷:先ほどのリポートにもありましたけれども、長期的な薬の体への影響って、まだわかっていないんですよね?.
石川:ええ、実は調査自体が…これは原子力の問題と同じで10年・20年・30年ではすまないほどの問題が、調査の中で出てくると思うんですね。しかしそれを手掛けた研究は非常に少ないし、ようやくヨーロッパの一部で危険を警告するような雰囲気は出てますが、まだ確定したものは出てません。.
国谷:薬をいったん始めて大量に飲んでいると、それを止めることが難しいんですね?.
石川:ええ、止めることはできるんですけれども…慎重に止めないと、止めること自体による、向精神薬には離脱という恐ろしい反応がありますし…薬によってはてんかんで命がなくなることもあるので、必ず医者と相談する。.
石川:自分の医師がだめならばセカンドオピニオンを求めて、それを看てくれるお医者さんと相談することが必要だと思います。.
国谷:薬を飲んでいて不安になってらっしゃる方、止めてしまってまた学校で問題が起きるんではないかと…いろんな不安を抱えながら見ていらっしゃる方もいらっしゃると思うんですけれども、どんなアドバイスをされますか?.
石川:苦しい時期には物事は否定的にしか見えないし、みんなも焦るんですけど…そこを冷静に乗り越えると、問題だと思ったことはその人の個性であったり・能力であったり・すてきな可能性であったりすることが、むしろ多いんですね。.
石川:例えばこだわりがあって困るという人もいるけれども、そのこだわりが逆に細かいいろんな発見につながったり。そんないろんな持っていることを障害・問題と見ないで、これは将来へ変わっていくチャンスだと、変わっていくきっかけになるんだと苦しい時期を捉えて、.
石川:未来への希望を持つことと、そういう希望を交換できる友達や先生やいろんな人と出会っていくことで…精神障害そのもので命がなくなることはありません。そのことで失望されなければ、時間はかかっても必ず希望は待っていることが多いので。そこは心配しないでいただきたいと思います。.
国谷:子どもと薬の関係は、どうあるべきですか?.
石川:どうしても必要なもの、これは薬だけにしか頼れないこともありますけれども…使うとすれば最小限・最小期間。できる限りしょっちゅう副作用を確かめながら、やっていくことが必要だと思います。.
国谷:どうもありがとうございました。石川憲彦さんでした。.
以上