「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

メモ:アーンスタインによる民度

2012-06-27 16:17:42 | 地方分権改革
アーンスタインによる民度。


1 - 情報操作による世論誘導

2 - 不満をそらす操作

3 - 一方的な情報提供

4 - 形式的な意見聴取

5 - 形式的な参加機会の増加

6 - 官民による共同作業

7 - 部分的な権限委譲

8 - 市民による自主管理
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生活保護開始「仮の義務付け」申し立て その判決から学ぶべき点 那覇地裁H21.12.22一つの模範例

2012-06-27 09:49:09 | シチズンシップ教育

 一つ前のブログhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/3badda75afba5b4da8a560b459dd20b5の生活保護の件、掲載したのは、高等裁判所の判例でしたが、より詳細で、参考になるのは、一審の地裁判決であり、その判決を掲載します。


 この判決(決定)の学ぶべき点のひとつは、生活保護の仮の義務付け申し立ての場合、その判決以後から支給し始めるのがふつうであるところ、家賃分と医療費補助を過去にさかのぼって支給をし始めるべきことを言っている点です。

 また、本来年金担保貸付を利用している方への生活保護は適用しないのが基本ですが、特別の事情(「保護受給前に年金担保貸付を利用したことについて、社会通念上、真にやむを得ない状況にあったかどうか。」)で可とすることを厚労省は指針「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて(平成18年厚生労働省社会・援護局保護課長通知)」で出しており、そのことをきちんと適用しています。


 判決の構造は、仮の義務付けを規定する行政事件訴訟法第37条の5 2項、3項にそって、分析がなされています。


 本案訴訟だけでは、意味をなしません。ものごとが進んでしまって、取り返しのつかない事態が生じてしまう、既成事実の積み重ねがなされてしまうわけであり、仮の義務付け、仮の救済は、本案提起とセットできちんと使わねば、ならないと思うところです。

*行政事件訴訟法
第三十七条の五  義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2  差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3  仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。

****最高裁ホームページより*****
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80351&hanreiKbn=05


事件番号

 平成21(行ク)7



事件名

 生活保護開始仮の義務付け申立て事件



裁判年月日

 平成21年12月22日



裁判所名

 那覇地方裁判所  

判決文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100628164516.pdf

- 1 -
主文
1 処分行政庁は,平成21年6月22日付けで申立人に対してした生活
保護申請却下処分に伴う本案事件(平成▲年(行ウ)第▲号・生活保護
開始申請却下取消等請求事件のうち義務付けに係る部分)の第1審判決
が言い渡されるまでの間,申立人に対し,以下のとおり,生活保護を仮
に開始せよ。
(1) 生活扶助として,平成21年12月から平成22年10月まで毎
月1日限り5万4634円を,同年11月から毎月1日限り4万03
17円を仮に支払え。
(2) 住宅扶助として,平成21年10月から毎月1日限り2万250
0円を仮に支払え。
(3) 医療扶助として,平成21年6月1日から本決定の日までに要し
た医療費のうち,申立人の医療機関に対する未払部分に相当する金額
を仮に支払い,本決定の日の翌日から仮に現物給付せよ。
2 申立人のその余の申立てを却下する。
3 申立費用は相手方の負担とする。

理由
第1 申立ての趣旨
処分行政庁は,平成21年6月22日付けで申立人に対してした生活保護申
請却下処分に伴う本案事件の判決が言い渡されるまでの間,同月1日から生活
保護を仮に開始し,同月から毎月1日限り8万6634円及びこれらの支払日
の翌日から年5分の割合による金員を仮に支払え(なお,後記第2の2記載の
申立人の主張にかんがみれば,本件申立てが求める保護の種類は,生活扶助及
び住宅扶助のみならず医療扶助を含むものと解される。)。

第2 事案の概要
1 本件は,申立人が,平成21年6月1日,処分行政庁に対し,生活保護の開
- 2 -
始を申請(以下「本件申請」という。)したところ,処分行政庁が同月22日
付けで本件申請を却下(以下「本件却下処分」という。)したため,申立人
が,本件却下処分の取消訴訟と共に提起した処分行政庁が申立人に対して生活
保護を開始して生活扶助等を支給することの義務付けの訴えを本案として,生
活保護を開始して生活扶助等を支給することの仮の義務付けを求める事案であ
る。
2 申立人の主張
申立人は,70歳を超える高齢であり,○等の疾患を有しており,継続的に
医師の診療を受けなければ生命を失う危険があるところ,平成20年12月1
日に処分行政庁から生活保護を廃止(以下「本件廃止処分」という。)されて
以降,月額2万8000円余りの年金で生活することを余儀なくされ,病死や
餓死等による生命の危機に日々さらされている。したがって,生活保護開始決
定がされないことにより生じる償うことのできない損害を避けるため緊急の必
要があり,かつ,本案について理由があるとみえるとき(行政事件訴訟法37
条の5第1項)に該当する。
相手方は,後記3のとおり主張するが,①子らによる援助は不可能であり,
友人らによる援助は善意にすぎず,現に尽きかけている状況にある。また,本
件廃止処分後の診療は,病院が申立人に対して医療費の支払を猶予するなどし
て実現していたものであり,現在は医療費の請求をされている。さらに,異母
弟による支援は一切なされておらず,その実現可能性を示す資料もない。した
がって,申立人が急迫状況にあることは明らかである。そして,②平成21年
3月18日に申立人が受けた年金担保貸付(以下「本件年金担保貸付」とい
う。)は,平成20年12月に本件廃止処分を受け,急迫状況に追い込まれた
申立人が,生活費や家賃を支払うためにやむを得ずに受けたものであり,本件
廃止処分が実質的にも形式的にも違法であることも考慮すれば,社会通念上,
真にやむを得ない状況にあったことは明らかである。
- 3 -
以上から,本件申請に基づき,処分行政庁は,申立人について生活保護を開
始し,このうち生活扶助及び住宅扶助については,別紙「最低生活費簡易計算
シート」記載のとおり,1か月あたり合計8万6634円(生活扶助6万89
50円と住宅扶助3万2000円の合計10万0950円から,収入認定(年
金収入)される1万4316円を控除した残額)を支給すべき義務がある。
3 相手方の主張
「生活保護行政を適正に運営するための手引について」(平成18年3月3
0日社援保発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知。以下
「本件手引」という。)によれば,過去に年金担保貸付を利用するとともに生
活保護を受給していたことがある者が,再度借入れをし,保護申請を行う場合
には,資産活用の要件を満たさないものと解し,それを理由とし,原則として
生活保護を適用せず,①急迫状況にあるかどうか,②生活保護受給前に年金担
保貸付を利用したことについて,社会通念上,真にやむを得ない状況にあった
かどうかを勘案した上で生活保護の適用を判断すべきとされる。
この点,申立人は,生活保護受給中であった平成13年5月11日に年金担
保貸付を受けるなどしたところ,本件廃止処分によって生活保護を廃止された
後,本件申請の前に再度本件年金担保貸付を受けており,本件手引によれば,
原則として生活保護は適用されない。また,申立人が,①本件廃止処分後も,
申立人の近隣に居住する子二人及び友人等から金銭や食料の援助を受けている
こと,○治療のために定期通院を行うことができていること,異母弟から当座
の支援を求めることが可能であることなどからすれば,急迫状況にあるとは認
められず,②過去,処分行政庁に対し,年金担保貸付を利用しない旨の誓約書
を提出していること,本件年金担保貸付を受けていることを秘匿して本件申請
をしていること,本件年金担保貸付を生活費ではない滞納家賃等の支払に充て
ていることなどからすれば,申立人は資産活用を恣意的に忌避していることは
明白であり,本件年金担保貸付を利用したことについて,社会通念上,真にや
- 4 -
むを得ない状況にあったとも認められない。
以上からすれば,本案について理由があるとみえるときには該当しない。
また,上記①記載の諸点に照らせば,申立人について,償うことができない
損害を避けるために緊急の必要があるということもできない。
さらに,このような生活保護開始の仮の義務付けは,公共の福祉に著しい影
響を与えるものである。

第3 当裁判所の判断
1 当事者間に争いのない事実及び各項掲記の疎明資料によれば,以下の各事実
が認められる。
(1) 申立人は,昭和▲年▲月生まれの73歳の女性であり,夫とは死別して
いる。子(いずれも成人)は3名おり,うち2名は沖縄県内に住んでいる
が,申立人とは別に暮らしている。申立人は,生活保護受給開始時(平成8
年6月)から一人暮らしである。(甲7,14,15,17,20)
(2) 申立人は,清掃員として稼働するなどしていたが,転倒して右足を怪我
して入院し,働けなくなり,平成8年6月28日から生活保護が開始され,
生活扶助,住宅扶助及び医療扶助を受給していた(甲1,7,17)。
(3) 申立人は,生活保護受給中の平成13年5月11日に年金担保貸付を受
けたことが発覚し,処分行政庁に対し,年金担保貸付を受けない旨の誓約書
を提出するなどした。このほか,申立人は,生活保護受給中も,家賃の滞納
をしたり,金銭の借入れやその返済を行うなどし,処分行政庁により,複数
回にわたり,口頭での指導や文書での指示を受けるなどしていた。(甲4,
7)
(4) 平成20年12月1日,申立人に対する生活保護(生活扶助,住宅扶助
及び医療扶助)が廃止された(本件廃止処分)。同廃止決定通知書には,廃
止理由の記載はない。(甲1)
(5) 申立人は,平成21年1月7日,処分行政庁に対し,生活保護申請をし
- 5 -
たが,同月19日,保護費を借金返済に充てることを確認したため,との理
由により,同申請は却下された(甲2)。
(6) 申立人は,平成21年2月13日,独立行政法人福祉医療機構に年金担
保貸付の申込みをし,同年3月18日,35万円の本件年金担保貸付を受け
た(甲20)。
(7) 申立人は,平成21年6月1日,処分行政庁に対し,生活保護申請(本
件申請)をしたが,同月22日,本件年金担保貸付を受け,現在受給中の年
金から返済を行っていることが判明したため,との理由により,同申請は却
下された(本件却下処分)(甲3)。
(8) 申立人は,本件却下処分を不服として,平成21年8月21日,沖縄県
知事に対し審査請求をしたが,同年11月5日,同審査請求は棄却された
(甲4,7)。
(9) 申立人は,○を患っており,平成▲年以降,A病院に通院していた(甲
5,17)。
2 そこで,以下,本件仮の義務付けが認められるか否か検討する。
(1) 償うことのできない損害を避けるための緊急の必要性について
疎明資料によれば,本件廃止処分から本件年金担保貸付を受けるまでの間
における申立人の収入としては,厚生年金として支給される月額2万600
0円余りの金員(甲21)に加え,空き缶等の回収による収入(甲13)及
び子らによる援助(甲12,13)等が認められる。しかしながら,空き缶
等の回収による収入は安定していない上,2か月で1000円程度にしかな
らないというのであり,子らによる援助等を考慮しても,申立人の生活費,
家賃及び罹患する○の治療に掛かる医療費等に著しく不足していることが認
められる(甲6,12,13,16,17)。
これに対し,相手方は,申立人の近隣に居住する子二人及び友人等から金
銭や食料の援助を受けていること,○治療のために定期通院を行なうことが
- 6 -
できていること,異母弟から当座の支援を求めることが可能であることなど
を主張する。しかしながら,申立人が平成8年6月から本件廃止処分を受け
る平成20年12月までの約12年半もの間,生活保護を受けていたことに
かんがみれば,扶養義務者である子らに申立人を扶養する能力があるとは認
め難く,実際に子らから申立人の扶養が困難である旨の上申がなされている
(甲14,15)(このほか,住所,氏名等は開示されておらず不明である
が,申立人に対する金銭的援助は不可と記載された扶養義務者から処分行政
庁に対する扶養届3通が出されている(甲9ないし11)。)。また,友人
等からの援助については,扶養義務に基づくものでなく,安定して行われて
いるとは認め難い。さらに,異母弟からの支援については,かかる支援の申
出内容(那覇市福祉事務所保護課相談班長B作成の上申書)からして実現可
能性が低いとうかがわれるところであり,現に支援がなされたとも認められ
ない。なお,定期通院については,申立人から医療費の支払を猶予してもら
っているとも主張されているところであって,申立人に金銭的余力があるこ
とをうかがわせる事情足り得ない。
以上によれば,申立人は,本件申請時において,必要な生活費,家賃及び
医療費等に著しく不足する困窮状態にあり,本件申請時から生活保護が開始
されることによって,生活扶助,住宅扶助及び医療扶助が支給されなけれ
ば,申立人が健康で文化的な最低限度の生活水準を維持することができない
という損害を被るおそれがあったと認められる。そして,申立人の年齢や健
康状態等も考慮すれば,遅くとも平成21年12月以降の生活扶助,住宅扶
助及び医療扶助については,これらが支給されないことによる損害を金銭賠
償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不合理であることは明ら
かであり,償うことのできない損害を避けるための緊急の必要性が認められ
る。
これに対し,同年11月までの各扶助については,既に経過した期間に要
- 7 -
した扶助であるから,原則として,これらがされないことによる損害は,金
銭賠償のみによって甘受させることが社会通念上著しく不合理であるとまで
はいえず,償うことのできない損害を避けるための緊急の必要性があるとは
認められない。もっとも,既に経過した同年11月までの各扶助のうち,そ
の不支給が現在における申立人の急迫状況として継続している部分,すなわ
ち,申立人の医療機関に対する未払の医療費に相当する医療扶助及び申立人
が家主に対して支払を怠っている同年10月以降の家賃(甲17)に相当す
る住宅扶助については,これらが支給されないことによる損害を金銭賠償の
みによって甘受させることは社会通念上著しく不合理であると評価できるか
ら,償うことのできない損害を避けるための緊急の必要性が認められる。
(2) 本案について理由があるとみえることについて
本案事件は,義務付けの訴えであり,理由があるとされるためには,行政
庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明
らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範
囲を超え若しくはその濫用となると認められることが必要である(行政訴訟
法37条の2第5項)。この点,処分行政庁は,申立人が以前に年金担保貸
付を受けるとともに生活保護を受給していた者であり,再度本件年金担保貸
付を受けた上で本件申請に及んでいることを理由に本件却下処分をしたもの
であるところ,処分行政庁が申立人の生活保護を開始しないことが,その裁
量権の範囲を超えると認められるかが問題となる。
そこで検討するに,生活保護法は,日本国憲法25条に規定する理念に基
づき,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必
要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長
することを目的とする(同法1条)ものであり,すべて国民は,同法の定め
る要件を満たす限り,同法による保護を,無差別平等に受けることができる
(同法2条)。また,同法により保障される最低限度の生活は,健康で文化
- 8 -
的な生活水準を維持することができるものでなければならない(同法3条)。
そして,同法による保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能
力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用すること
を要件として行われるものであり(同法4条1項),民法に定める扶養義務
者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべて生活保護法による保護に優先
して行われる(同条2項)が,これら規定も,急迫した事由がある場合に,
必要な保護を行うことを妨げるものではないとされている(同条3項)。
この点,相手方が引用する本件手引によれば,過去に年金担保貸付を利用
するとともに生活保護を受給していたことがある者が,再度借入れをし,保
護申請を行う場合には,資産活用の要件(生活保護法4条1項)を満たさな
いものと解し,それを理由とし,原則として生活保護を適用しないとされて
いるところ,申立人がこれに該当することは明らかである。もっとも,かか
る基準が生活保護法に合致するかは疑義も存し得るところであるが,この点
は措いても,本件手引も,生活保護を申請した者が,①急迫状況にあり,か
つ,②生活保護受給前に年金担保貸付を利用したことについて,社会通念
上,真にやむを得ない状況にある場合にはなお,生活保護開始の余地がある
ものとしている。これを本件についてみるに,前記(1)で認定した事実等に
かんがみれば,申立人が必要な生活費,家賃及び医療費等に著しく不足する
困窮状態にあったと認められるから,申立人が①急迫状況にあったことは明
らかである。また,申立人が前記のような困窮状態にあったことに加え,そ
の原因と考えられる本件廃止処分から約2か月が経過したころに本件年金担
保貸付の申込みをしていることなどにかんがみれば,申立人が本件年金担保
貸付を受けたのは生活費や家賃等に困窮したためであると優に推認できると
ころであり,本件廃止処分後の平成21年1月にされた生活保護申請も却下
され,生活保護が開始される目処が立っていなかったことなども考慮すれ
ば,②申立人が生活保護受給前に本件年金担保貸付を利用したことについ
- 9 -
て,社会通念上,真にやむを得ない状況にあったと認められる。
確かに,申立人は,従前生活保護を受給しているにもかかわらず,年金担
保貸付を含む金銭の借入れを行ったり,家賃を滞納したりし,処分行政庁に
よる口頭での指導や文書での指示を複数回受けていたものであるが,申立人
の生活は質素であり,浪費行為等もうかがわれず,上記借入れ等の背景とし
て,申立人は適切に金銭を管理する能力に欠ける点があるものと認められる
(甲6,8,12,17)。
上記のとおり,生活保護法は,資産や能力等を活用してなお困窮状態にあ
ることを保護の要件とするものであるが,同要件も,申請者に対して,不可
能又は著しく困難な活用を強いるものとは解されないものであって,同要件
を適用するに当たっては,保護を必要とし,生活保護を申請する者のおかれ
た状況や,上記のような金銭管理能力を含めた同人の能力等をも勘案しなが
ら,その者の資産や能力を活用していないものといえるか否かを検討すべき
ものというべきである。また,相手方が主張する本件手引によっても,生活
保護受給者等が年金担保貸付を受けることにつき,他にも債務がある等の理
由がある場合には,金銭管理能力習得のための家計簿記帳を指導するなどの
支援を行うよう努めるべきであるともされているところ,処分行政庁が申立
人に対して,そのような支援を尽くしたとは認め難い。
これらからすると,申立人について,生活保護受給中に年金担保貸付を受
けたことがあり,本件廃止処分後に再度本件年金担保貸付を受けたとして,
本件申請を却下すること(本件却下処分)は,処分行政庁が有する裁量権の
範囲を超えるものと一応認められる。
これに対し,相手方は,①申立人が急迫状況にない旨主張するが,その主
張内容は前記(1)で指摘した内容と同様であり,これを採用することはでき
ない。また,相手方は,②申立人が年金担保貸付を利用しない旨の誓約書を
提出していること,本件年金担保貸付を受けていることを秘匿して本件申請
- 10 -
をしていること,本件年金担保貸付を生活費ではない滞納家賃等の支払に充
てていることなどからすれば,本件年金担保貸付を利用したことが,社会通
念上,真にやむを得ない状況にあったと認められない旨主張する。しかしな
がら,年金担保貸付を利用しない旨の誓約書は,相手方の主張を前提として
も,従前の生活保護の受給中に作成されたものであり,生活保護の受給継続
を前提とした誓約であるから,かかる誓約書を作成しているからといって,
本件廃止処分後の困窮状態にかんがみれば,糊口をしのぐために申立人が本
件年金担保貸付を受けたことを非難することはできない。さらに,申立人が
年金担保貸付を受けていることを秘匿して本件申請をしていることは,生活
保護を申請する者の態度として誠実とはいえないものの,従前の処分行政庁
とのやりとり等をもかんがみれば,本件年金担保貸付を受けていることを秘
匿したまま生活保護申請をしたことをもって,保護の要件を欠くということ
もできない。なお,相手方は,本件年金担保貸付を生活費ではない滞納家賃
等の支払に充てているとも主張するが,本件年金担保貸付を滞納家賃等の支
払に充てたことが不当であるということはできない。
以上によれば,処分行政庁が申立人に対して生活保護を開始しないこと
が,その裁量権の範囲を超えるものと一応認められ,本案について理由があ
るとみえる。
(3) 本件仮の義務付けにより,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあ
る(行政事件訴訟法37条の5第3項)とは認められない。
(4) 保護の程度について
ア生活扶助について
申立人は,那覇市に居住する70歳以上の単身世帯であり,その最低生
活費は申立人が主張する月額6万8950円を下らないと認められる。
一方,申立人の収入認定については,前記(2)記載のとおり,申立人が
本件廃止処分後生活保護を受給していなかった間に本件年金担保貸付を受
- 11 -
けたことについて,社会通念上,真にやむを得ない状況にあったと認めら
れることにかんがみれば,本件年金担保貸付の返済が予定されている平成
22年10月までの間は,申立人主張の1か月1万4316円とし(な
お,甲20参照),同返済終了後の同年11月以降については1か月2万
8633円と認めるのが相当である。
したがって,処分行政庁が申立人に対して仮に支給すべき生活扶助につ
いては,平成21年12月から平成22年10月までの間は,毎月1日限
り5万4634円とし,同年11月以降は毎月1日限り4万0317円と
認めるのが相当である。
イ住宅扶助について
申立人の現在の家賃は月額2万2500円を下らないと認められ(甲1
7),他方,これを上回る金額の疎明はない。
したがって,処分行政庁が申立人に対して仮に支給すべき住宅扶助につ
いては,平成21年10月から毎月1日限り2万2500円と認めるのが
相当である。
ウ医療扶助について
処分行政庁が申立人に対して仮に支給すべき医療扶助については,申立
人が本件申請をした平成21年6月1日から本決定の日までの間,申立人
が受けた診療等に係る医療費のうち,申立人の医療機関に対する未払部分
に相当する金額と認めるのが相当である(生活保護法34条1項ただし
書)。また,本決定の日の翌日以降の医療扶助については,現物支給によ
って行うのが相当である(同項本文)。
3 よって,本件申立ては,主文の限度で理由があるから認容し,その余の本件
申立ては,理由がないので却下することとし,主文のとおり決定する。

平成21年12月22日
- 12 -
那覇地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官田中健治
裁判官新海寿加子
裁判官横倉雄一郎

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする