実質は、情報それ自体の窃取であるが、媒体物の窃取と構成している。
*情報そのものは、財物の定義になじまない。
→帰結として、情報そのものの窃取(情報窃盗)は不可罰。
「財物」の定義
① 空間の一部を占める有形的存在に限る(有体性説)
→無形的な情報は、財物たりえない
② 管理可能性・可動性を有する存在であればよい(管理可能性説)、管理可能性とは、事務的な管理可能性ではなく、物理的な管理可能性が必要
→情報は物理的に管理・支配できない→財物たりえない
*情報を化体した紙、フロッピーディスクなどは、有体物であり、窃盗、業務上横領、盗品等関与罪の適用は可能。
→財物は、一定の財産価値を有している必要あり
情報媒体としての紙片などは、化体されている情報を捨象すれば、財産的価値において僅少、それでも財物に該当するか
<いかように、犯罪が成立するか>
*社外持ち出し型
鐘淵化学事件(大阪地判昭和42年5月31日判時494号74頁)
工場の技術課長代理が、退職するに当たり、自己が保管していた薬剤の生産方法に関する文献ファイルと少量のサンプルを外部に持ち出した事案
判 示
① 文献ファイル・サンプルの所有者である会社から見て、製法の独自性・機密性との関係で有している価値が、極めて大きい
⇒ 財物に該当し、業務上横領罪が成立
② 所有者から見た場合の文献ファイル等についての主観的価値を重視
〇「他人の」物
「会社の職員が、その職務のために、会社から配布を受ける資料文献はもとより、職員自身が、職務のために、その地位に基づいて、会社の文献、資料用紙、器具機械等を用いて自ら作成した資料のごときも、特別の事情がない限り、その者の個人所有に帰するものではなく、会社の所有である」旨を判示
CF.情報を媒体に化体する過程を「加工」と捉えると、
民法246条1項・・・ 加工物の所有権は材料の所有者に帰属する
加工によって素材の価値が著しく高まったときは加工者に帰属する
*社内コピー型
大日本印刷事件(東京地判昭和40年6月26日判時419号14頁)
社員Aが、上司の保管する稟議決裁一覧表を、自ら、社内でコピーし、コピーをライバル会社の社員Bに売却した事案
判 示
① 全体的に見て、単なるコピー用紙の窃取ではなく、会社所有の稟議決裁一覧表を窃取したものと認めるのが相当として、財物性を肯定
② Aを窃盗罪、Bを贓物故買罪
*社外持ち出し+社外コピー型
帝三製薬事件(東京地判昭和59年6月28日判時1126号3頁)
国立予防衛生研究所の技官が、上司の専用戸だなに保管してあった新薬承認申請用ファイルを持ち出し、共犯者に渡してコピーをさせた上で、元に戻した事案
判 示
① 情報の化体された媒体の経済的価値は、情報の切り離された媒体の素材だけで判断するのではなく、情報が媒体に結合されたものの全体について判断すべきであり、かかる情報が結合された媒体に財産的価値があることは明らか
② 窃盗罪の成立を肯定
〇不法領得の意思:権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に、その経済的用法に従って利用・処分する意思」(判例)
資料の一時利用との関係
→「複写して情報を他の媒体に転記して、当該他の媒体を犯人らの手許に残すことは、本件ファイルそのものを権利者と共有し、ひいていは自己の所有物とするのと同様の効果を挙げることができる。本件ファイルが権利者に返還されるとしても、同様の媒体が他に存在することで、権利者の独占的・排他的利用は制限され、本件ファイルの財物としての価値は大きく減耗する。従って、本件『ファイルを複写して、これに化体された情報を自己のものとし、上記効果を狙う意図と目的』には、権利者を排除し、本件ファイルを自己の所有物と同様にその経済的用法に従って利用・処分する意思がある」旨判示
*社外持ち出し+社外コピー型
新潟鉄工事件(東京地判昭和60年2月13日判時1146号23頁)
〇不法領得の意思
「本件資料は、N社が多大な費用と長い年月をかけて開発したコンピュータシステムの機密資料であって、その内容自体に経済的価値があり、かつ、所有者であるN社以外の者が同社の許可なしにコピーすることは許されないもの。被告人らが同社の許可を受けずに、コピーする目的をもって本件資料を社外に持ち出すに当たっては、その間、所有者であるN社を排除し、本件資料を自己の所有物と同様にその経済的用法に従って利用する意思があったと認められる」として、不法領得の意思を肯定
*外部持ち出し+外部コピー型
住民基本台帳持出し事件(札幌地判平成5年6月28日判タ838号268頁)
札幌市内の区役所の所定の場所でのみ閲覧が許されている住民基本台帳閲覧用マイクロフィルムを正規の手続きで借り受けた上で、閲覧コーナーから持ち出し、複写した後に返却した事案
〇不法領得の意思
「管理権を有する区長が私人による所定の閲覧場所からの持ち出しや複写を認めない趣旨であることは明らかであり、本件フィルムがその網羅性・正確性のため高い経済的価値を有することから、不法領得の意思あり」旨判示
〇公開されている情報で、複製しても価値の消耗問題とならない
フィルムそれ自体の利用阻害も、閲覧時間内に返却する限り、閲覧コーナーで利用する場合と異なる点なし
筆記で転写することは認められていた
→単なる閲覧規則違反を窃盗に問擬するもので、問題あり
*情報そのものは、財物の定義になじまない。
→帰結として、情報そのものの窃取(情報窃盗)は不可罰。
「財物」の定義
① 空間の一部を占める有形的存在に限る(有体性説)
→無形的な情報は、財物たりえない
② 管理可能性・可動性を有する存在であればよい(管理可能性説)、管理可能性とは、事務的な管理可能性ではなく、物理的な管理可能性が必要
→情報は物理的に管理・支配できない→財物たりえない
*情報を化体した紙、フロッピーディスクなどは、有体物であり、窃盗、業務上横領、盗品等関与罪の適用は可能。
→財物は、一定の財産価値を有している必要あり
情報媒体としての紙片などは、化体されている情報を捨象すれば、財産的価値において僅少、それでも財物に該当するか
<いかように、犯罪が成立するか>
*社外持ち出し型
鐘淵化学事件(大阪地判昭和42年5月31日判時494号74頁)
工場の技術課長代理が、退職するに当たり、自己が保管していた薬剤の生産方法に関する文献ファイルと少量のサンプルを外部に持ち出した事案
判 示
① 文献ファイル・サンプルの所有者である会社から見て、製法の独自性・機密性との関係で有している価値が、極めて大きい
⇒ 財物に該当し、業務上横領罪が成立
② 所有者から見た場合の文献ファイル等についての主観的価値を重視
〇「他人の」物
「会社の職員が、その職務のために、会社から配布を受ける資料文献はもとより、職員自身が、職務のために、その地位に基づいて、会社の文献、資料用紙、器具機械等を用いて自ら作成した資料のごときも、特別の事情がない限り、その者の個人所有に帰するものではなく、会社の所有である」旨を判示
CF.情報を媒体に化体する過程を「加工」と捉えると、
民法246条1項・・・ 加工物の所有権は材料の所有者に帰属する
加工によって素材の価値が著しく高まったときは加工者に帰属する
*社内コピー型
大日本印刷事件(東京地判昭和40年6月26日判時419号14頁)
社員Aが、上司の保管する稟議決裁一覧表を、自ら、社内でコピーし、コピーをライバル会社の社員Bに売却した事案
判 示
① 全体的に見て、単なるコピー用紙の窃取ではなく、会社所有の稟議決裁一覧表を窃取したものと認めるのが相当として、財物性を肯定
② Aを窃盗罪、Bを贓物故買罪
*社外持ち出し+社外コピー型
帝三製薬事件(東京地判昭和59年6月28日判時1126号3頁)
国立予防衛生研究所の技官が、上司の専用戸だなに保管してあった新薬承認申請用ファイルを持ち出し、共犯者に渡してコピーをさせた上で、元に戻した事案
判 示
① 情報の化体された媒体の経済的価値は、情報の切り離された媒体の素材だけで判断するのではなく、情報が媒体に結合されたものの全体について判断すべきであり、かかる情報が結合された媒体に財産的価値があることは明らか
② 窃盗罪の成立を肯定
〇不法領得の意思:権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に、その経済的用法に従って利用・処分する意思」(判例)
資料の一時利用との関係
→「複写して情報を他の媒体に転記して、当該他の媒体を犯人らの手許に残すことは、本件ファイルそのものを権利者と共有し、ひいていは自己の所有物とするのと同様の効果を挙げることができる。本件ファイルが権利者に返還されるとしても、同様の媒体が他に存在することで、権利者の独占的・排他的利用は制限され、本件ファイルの財物としての価値は大きく減耗する。従って、本件『ファイルを複写して、これに化体された情報を自己のものとし、上記効果を狙う意図と目的』には、権利者を排除し、本件ファイルを自己の所有物と同様にその経済的用法に従って利用・処分する意思がある」旨判示
*社外持ち出し+社外コピー型
新潟鉄工事件(東京地判昭和60年2月13日判時1146号23頁)
〇不法領得の意思
「本件資料は、N社が多大な費用と長い年月をかけて開発したコンピュータシステムの機密資料であって、その内容自体に経済的価値があり、かつ、所有者であるN社以外の者が同社の許可なしにコピーすることは許されないもの。被告人らが同社の許可を受けずに、コピーする目的をもって本件資料を社外に持ち出すに当たっては、その間、所有者であるN社を排除し、本件資料を自己の所有物と同様にその経済的用法に従って利用する意思があったと認められる」として、不法領得の意思を肯定
*外部持ち出し+外部コピー型
住民基本台帳持出し事件(札幌地判平成5年6月28日判タ838号268頁)
札幌市内の区役所の所定の場所でのみ閲覧が許されている住民基本台帳閲覧用マイクロフィルムを正規の手続きで借り受けた上で、閲覧コーナーから持ち出し、複写した後に返却した事案
〇不法領得の意思
「管理権を有する区長が私人による所定の閲覧場所からの持ち出しや複写を認めない趣旨であることは明らかであり、本件フィルムがその網羅性・正確性のため高い経済的価値を有することから、不法領得の意思あり」旨判示
〇公開されている情報で、複製しても価値の消耗問題とならない
フィルムそれ自体の利用阻害も、閲覧時間内に返却する限り、閲覧コーナーで利用する場合と異なる点なし
筆記で転写することは認められていた
→単なる閲覧規則違反を窃盗に問擬するもので、問題あり