国際人道法ってあるのですね。
(1)軍事目標と、民間人・民用施設の区別
(2)攻撃の際、民間人が避難するための事前警告
朝日新聞論説において、Linh Schroederリン・シュレーダー 赤十字国際委員会駐日代表は、その国際人道法に関連して、日本について要望を書いておられます。
「戦時下の人道支援は、苦しみを軽減するための手段であって、紛争そのものの解決にはつながらない。
平和への努力が失敗に終わった場合、出口の見えない紛争から無辜(むこ)の市民を守る責任は国家にある。
赤十字は、ジュネーブ諸条約加入国を年に1度招集し、「戦時の決まりごと」である国際人道法の順守を強化するメカニズムの構築を提案している。
紛争には直接関係のない日本も、私たちと共に、国際人道法の順守に向けた国際的な議論を主導する役割を担ってもらいたい。」
積極的平和主義のもと、日本国の真のありかたのひとつは、まさに、国際人道法の順守に向けた国際的な議論を主導する役割を担うことがあげられると考えます。
朝日新聞掲載 20160609
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12400166.html
本日2016年6月9日の朝日新聞と読売新聞は、メディアリテラシーのよい教材になると考えます。
ひとつの出来事(報道の事実とそれに対し名誉棄損の有無を判断した裁判所の評価)を、それぞれの立場からとらえ、読者に伝えようとしています。
そしてそのテーマは、新聞社が最も重大視しているテーマ、名誉棄損に関連しています。
各記事は、名誉棄損のリスクをはらみながらも、真実を伝えるため、社運をかけ、記事にしているところのものです。
果たして読者に向き合って、本日、事実を報道できているか。
******裁判所*****
東京地方裁判所 平成27年9月28日
東京高等裁判所 平成28年6月8日
******読売新聞20160609*****
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160608-OYT1T50194.html?from=ytop_ylist
朝日新聞に賠償命令…巨人軍の契約金巡る報道で
2016年06月09日 06時12分
読売巨人軍の選手契約金に関する朝日新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、巨人軍が朝日新聞社に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(滝沢泉裁判長)は8日、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、名誉毀損きそんの成立を認めて、朝日新聞社に計330万円の支払いを命じる巨人軍逆転勝訴の判決を言い渡した。
朝日新聞は2012年3月15日の朝刊1面トップで、巨人軍が1997~2004年度に6選手と、当時のプロ野球界の申し合わせ(最高標準額=計1億5000万円)を計27億円超過する計36億円の契約金で入団契約を結んでいたなどと報道。翌16日朝刊では、「臭いものにふた 続く不正」などの見出しで、巨人軍を非難する編集委員の署名記事も掲載した。
1審判決は、一定の成績を達成した場合に支払われる出来高払いの報酬(報酬加算金)も「広義の契約金」ととらえ、計36億円を契約金と報じた記事は「真実だった」と判断した。これに対し、高裁判決は「報酬加算金は、球界が01年に導入したインセンティブ(出来高払い)を制度化したもので契約金とは性質が異なる」と、巨人の主張を認め、「記事は正確ではない」と指摘した。
その上で、朝日記事について「巨人軍の契約が球界を統括する日本野球機構(NPB)から、厳重注意処分を受けるような行為だった」との内容を報じていると指摘し、「(契約金問題で)処分を受けた他球団と巨人軍の取り扱いは異なる上、処分を受ける可能性もなく、記事は真実ではない」と判断した。さらに、朝日新聞記者がNPB関係者に取材をせずに、誤解したまま記事を書いていることから、編集委員の記事と合わせて巨人軍の名誉を毀損したと結論づけた。
ただ、朝日新聞が報酬加算金を契約金に含めて報道したことについては、巨人軍の内部資料に両者を区別せずに記載する慣行があったことなどから、「誤りとまではいえない」とした。
読売巨人軍広報部の話「朝日新聞が必要な取材もせずに、当球団が、NPBから処分を受けるような不正な選手契約を結んだとする誤った報道を行ったことを認定した点において、妥当な判決と考えます。本件記事については朝日新聞の報道と人権委員会は問題ないとの見解を示しましたが、当球団としては同委員会にも見解の見直しを求めていきます」
朝日新聞社広報部の話「記事の主要部分について真実と認めた判断は妥当。一方、他球団の類似事例を紹介した部分について名誉毀損にあたるとしたのは、当該記事の読み方を誤っており不当で、ただちに上告の手続きをとります」
******朝日新聞20160609*****
http://digital.asahi.com/articles/ASJ684WC3J68UTIL01N.html
プロ野球・読売巨人軍の新人契約金をめぐる朝日新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、巨人軍が5500万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を朝日新聞社に求めた訴訟の控訴審判決が8日、東京高裁であった。滝沢泉裁判長は、巨人軍の請求をすべて棄却した一審・東京地裁判決を変更し、朝日新聞社に330万円の支払いを命じた。
判決は、巨人軍が6選手との契約で、12球団で申し合わせた新人契約金の最高標準額を27億円上回る総額36億円を支払う契約を結んだと報じた部分などについて「真実性の証明がある」と認定。名誉毀損(きそん)には当たらないと判断した。さらに、巨人軍のこうした契約を「金権野球」「金にものを言わせてきた」と報じたことも、「真実を前提とした論評の範囲を逸脱せず、名誉毀損にはならない」とした。
一方で、他球団の新人選手の契約金について、日本野球機構(NPB)が厳重注意処分とした例があることを示した部分については、「NPBへの取材をせずに、今回の(巨人軍の)事例が『同じ厳重注意処分に相当する』という事実を示した」と指摘。「処分を受けた他球団の事例は、巨人軍の事例とは違う」として、名誉毀損に当たると判断した。
対象となったのは、2012年3月15、16日付の朝刊記事。12球団で申し合わせた新人契約金の最高標準額(1億円プラス出来高払い5千万円)を超える契約を、巨人軍が1997~2004年度に6選手との間で結んだ、などと報じた。
◇
〈朝日新聞社広報部のコメント〉 巨人軍が6選手と最高標準額を大幅に超過する計36億円を支払う契約を結んでいた、とする記事の主要部分について、判決は真実だと認めました。一審に続いて、本社の主張を認めた判断は妥当だと考えます。
一方、他球団の類似事例を紹介した部分について、判決が名誉毀損(きそん)にあたるとしたのは、当該記事の読み方を誤っており、不当です。今後の記事の書き方への影響も大きいことから、ただちに上告の手続きをとります。
◇
〈読売巨人軍広報部のコメント〉 朝日新聞が必要な取材もせずに、当球団が、NPBから処分を受けるような不正な選手契約を結んだとする誤った報道を行ったことを認定した点において、妥当な判決と考えます。本件記事については朝日新聞の報道と人権委員会は問題ないとの見解を示しましたが、当球団としては同委員会にも見解の見直しを求めていきます。
◇
読売巨人軍の新人契約金をめぐり、読売巨人軍が朝日新聞社に損害賠償などを求めた訴訟で、東京高裁が8日に言い渡した判決の要旨は次の通り。(呼称略)
【結論】
読売巨人軍の請求を全部棄却した一審判決を変更し、330万円の限度で損害賠償請求を一部認容
【理由の要旨】
(1)本件記事は、次の①、②のとおりの事実を摘示し、論評をしたものである。
①「読売巨人軍が、A、B、C、D、E及びFの6選手との間で、球界で申し合わせた新人選手の契約金の最高標準額を大幅に超過する契約金合計36億円(A6億5千万円、B5億円、C5億円、D10億円、E2億5千万円、F7億円)を支払う旨の契約を締結していた」との事実を摘示し、「このような契約は、契約金の高騰抑制目的を逸脱するもので、金にものを言わせた金権野球である」と論評した。
②「読売巨人軍と6選手との契約の一部は、横浜ベイスターズのG選手の事例と同様に日本野球機構(NPB)の厳重注意処分に相当する行為である」との事実を摘示し、これを前提として、編集委員が、「6選手との契約はG選手の事例と同様にNPBの厳重注意処分に相当する行為であり、同じ社会的非難を受けても仕方がない」と論評した。
(2)摘示事実の真実性・相当性等
【①について】
読売巨人軍がA、B、C及びDの4選手との間で、記事に記載された金額を契約金とする契約を締結していたことは事実である。また、E及びFとの契約については、記事に記載された契約金額は契約金と報酬加算金を合計した額であるが、入団時に合意された契約金と報酬加算金を含めて契約金と表示することも慣行として行われていたというべきであり、「読売巨人軍が6選手との間で、最高標準額を大幅に超過する契約金合計36億円を支払う旨の契約を締結していた」との事実については、真実性の証明がある。
そして、6選手の契約金額は最高標準額を大きく超過するものであるから、「契約金の高騰抑制目的を逸脱するもので、金にものを言わせた金権野球である」との論評も、論評の前提となる事実については真実性の証明がある。したがって、①については名誉毀損(きそん)とはならない。
【②について】
横浜ベイスターズがNPBから厳重注意処分を受けた理由は、NPBが新人選手との契約に関してインセンティブ(出来高条件付き払い)制度を導入した後であるのに、G選手との間で出来高条件のない契約金を支払う契約を締結したことにある。しかし、読売巨人軍はそのような契約を締結していなかったから、「6選手との契約の一部がG選手の事例と同様にNPBの厳重注意処分に相当する行為である」との摘示事実は、真実でない。
また、朝日新聞社は、NPB関係者に対してこの点の取材をせずにこの事実を摘示し、この事実を前提として論評をしたから、これらが真実であると信ずるにつき、相当性の証明があるとは認められない。以上によれば、②の事実及び論評については、名誉毀損が成立する。
(3)損害賠償の金額
名誉毀損の成立が本件記事の一部だけであることなどにかんがみ、謝罪広告の掲載の必要性は認められないが、朝日新聞社は読売巨人軍に対し、損害賠償として330万円を支払うべきである。