北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

除雪に悩む日々

2011-10-25 23:45:34 | Weblog
 涼しいことが売りの釧路といえども暑い夏の日はあります。

 そんな一日、道路維持の担当者は汗を拭きながら地元の土木業者さんを回ります。

 普通は業者が市役所へ来て名刺を配ったり営業をしたりするものですが、ここだけは別。今年の冬の除雪を担当してくれるようお願いに回っているのです。

 北海道は積雪寒冷地と言いますが、釧路の冬は積雪はそれほど多くはないけれど寒冷地には違いありません。

 一冬で除雪車が出動するのはせいぜい数回。しかしそんな数でも除雪体制を備えて、「雪が降りそうだ」となれば待機をし、「いざ積雪!」となれば除雪車を出動させなくてはなりません。

 釧路は市内を6つのブロックに分け、さらにぜんぶで約140もの細かい除雪単位に分けてそれぞれに業者さんを張り付けるという除雪体制を組んでいます。

 かつて公共事業が潤沢にあったころは、夏にそれなりに収入を得られて、冬の除雪などはサービスという感覚が強くありました。どうせ使わない機械を使って小遣いを稼げればよいくらいの感覚。

 ところが夏の公共事業が減ってきたことで土木業者の経営体力は衰える一方。使う当てのない機会は持っていても仕方がないので売ったり、普段から機械を持たずに使うときだけレンタルで借りたりする業者さんも増えました。

 そもそも除雪車を操作できるオペレーターが冬には内地へ出稼ぎに行ってしまい、地元で運転できる人を調達するのにも苦労をするようになりました。





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「もう今年が最後だと思ってください」

 そういわれる業者さんも増えました。夏の公共事業もとれず、冬の除雪でも一度や二度の出動では重機のレンタル料を賄うほどの収入にもならないと言います。

「これまでは公共事業でお世話になったという恩があるから冬はボランティアでも良いと思っていましたが、さすがに赤字の年が続くとやっている意味が分からなくなりますし、おまけに市民からは『除雪に来るのが遅い』とか『除雪の仕方が悪い』とクレームもきたりするとモチベーションも上がりません」 


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 維持事業所の担当者は、「実際、土木業者さんだけでは数が足りていません。だから広い構内を除雪している中古車の販売会社へ飛び込んで、その機械で周辺の道路を除雪してくれませんか、と頼み込んで了解を取り付けたことさえあります」と語ります。

 国の直轄道路や道道の維持管理ではまだ予算も多くつけて機械もしっかりそろえた体制を組めていますが、市道の除雪では十分な予算もなく、綱渡りで業者さんを拝み倒しているのです。


 また、儲からない冬の除雪を一生懸命やってくれる社会奉仕の精神に満ちた業者さんがいれば、その一方でそういうことに関心のない業者さんもいます。

 一部の事業では指名登録をする条件として冬は除雪を引き受けるということを明記しているところもあり、方やそうした指名登録制度を用いていない事業の業者さんへは非難の声さえ起きつつあります。

 世の中のことは因果がめぐり、あるところで利益を得ようとするとどこかで不利益を発生させることになります。

 わがまちを適切に維持する能力が衰えてくるという不安は、年年歳歳その度合いを深めています。

 何かを悪者にして溜飲を下げていればよいというものではありません。どのようにして地域社会を守ってゆけば良いのか、頭を悩ませる日々は続きます。
  
コメント (1)
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