やはり釧路の暴風は相当なものだったようで、市内の各所で屋根のトタンがはがれる被害が続出したそうです。
釧路では低気圧と風の被害を心配していましたが、あろうことか海外のフィリピンでは同じく低気圧によって途方もなく甚大な被害が発生しました。
まだ被害の全貌すらつかめていない状況ですが、報道を見る限り強風による直接的被害に加えて、高潮による津波にも似た水位上昇による被害が甚大だったようです。
◆
高潮というのは低気圧の接近で待機の気圧が下がると水位が上がるという現象です。
通常1気圧というのは1013hpa(ヘクトパスカル)という単位で表されていて、これより高いと高気圧、低いと低気圧ということになります。
ここでいうパスカルとはそもそも圧力の単位で、これは空気の圧力として地上では1平方センチメートル(cm2)あたり1kgの空気の重さがかかっているという計算になるのです。
なので、1hpa(=1/1013パスカル?約1/1000パスカル)に相当する空気の重さは約1グラムとなり、気圧が1hpa下がると約1グラムの重さが減り、その分約1センチ相当の水位が上がるという計算になるのです。
台風のような熱帯低気圧だと中心気圧はかなり低くなりますが、それでも日本あたりではせいぜい960hpaだと「強い台風」と言われるくらいなもの。
今回フィリピン中部を襲った台風30号は、中心気圧が895hpaというとてつもなく低い気圧で、またそれゆえ気圧の差からくる強風も最大で秒速90メートルに達したそうです。
通常との気圧差は1013-895=118hpa=118センチと、気圧の差だけで約1メートルもの水位上昇が起きえたわけですが、さらにこのように風が強いと強い風が波を陸地に押しやって更に水位上昇を招きます。
特に波打ち際の地形が遠浅であったり、V字型の湾になっていたりすると吹き寄せられる海水面は湾の奥でさらに上昇し、水の力がさらに強くなると言われます。
報道ではそうした悪条件が重なったことで、水位上昇は数メートルになったとのことで、「気象津波」という言葉もあるそうで、被害の様相はまさに津波そのもの。
あまりに強い低気圧による気象被害。地震津波よりは事前の予報がしやすかったでしょうに、これほどとは思わなかった人も多かったに違いありません。
死者数も1万人に上るという情報があり、一日も早い救援と現地他作が望まれます。
◆
さて、私のいた釧路では街の中心部を釧路川が流れています。
釧路川は上流部の岩保木というところに水門が作られていて、洪水の起きない川になったのですが、洪水はなくても高潮の被害の可能性はあり得ると考えられていて、その備えとして低い堤防が作られているのですが、その堤防が去る東日本大震災時の津波に対して効果を発揮しました。
津波の高さは偶然にも高潮対策で作られた堤防の高さぎりぎりでしたが、それによって海水位の上昇を受け止めて、橋の上流部の右岸(北側)で繁華街末広町・栄町に水が流れ込むことが防げたのでした。
被害が拡大しなかったのは実に不幸中の幸いでした。
高潮と聞くと私は釧路の津波から繁華街を守った小さな規模の堤防を思い出すのです。
フィリピンの一日も早い復旧・復興をお祈りします。