北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

知恵の出る公式

2013-11-27 22:15:45 | Weblog

 

 今月号の「致知」に、経営の神様と言われ今なお多くの人を引きつけて止まない松下幸之助さんについて、語る対談が掲載されていました。

 一人は昭和36年から28年間にわたって松下氏に付き添い、薫陶を受けた元専務にしてPHP研究所客員の岩井虔(いわい・けん)さん、そしてもう一方は、松下語録を整理して研究しながら、故松下氏とは一度しか会わなかった、という兵庫経営塾代表の上田勝さんです。

 「苦境を突破する心得」というテーマについて語るなかで、松下氏がどのようにして事業経営の活路を見いだしてきたかについて興味深い対話が繰り広げられました。

 

上「…私の場合、創業者(=故松下幸之助氏)との接点はほぼ皆無でしたが、本社の朝礼や会議の席でお見受けする姿はものすごく丁寧で、腰が低い。誰かと話している間に、腕組みをしたり足を組んだりなんてことは絶対になかったと思うんです」

岩「そうですね。そうした人間性を大事になさる方だから、言葉遣いやお辞儀の仕方などのマナーについては相当しごかれました。やっぱり人間関係の中で仕事をするわけだから、好感を持っていただけるように接しないと仕事そのものが始まらんと。人に喜んでいただくとか、愛されると言うことには特にうるさかったです」

上「創業者の経営の特徴は三点あると思います。一つはお客様大切の経営。企業は社会の公器と言いますが、経営上の判断、決断、実践の基軸をいつも、社会のため、お客様のために置いていたと思います。こんな言葉も残しておられます。『商品が売れるかどうかは重大な問題。しかし、売れるかどうかは儲かることとは違う。役に立つか立たないかである。役に立てばうれしいが、役に立たなければ悲しい』。

 一つは人を大切にする経営。社員に対する愛情や感謝、信頼感が非常に深い。やはり、人の上に立つ人は部課に感謝する心が大切だと思います。
 最後は思いを伝える訴念経営です。創業者ほど経営理念を大切にし、訴え続けた経営者はおられないと思います。経営理念とは経営者の志、新年であり、経営者が一番のこだわりをもつべきです。そして、そのこだわりに社員が共鳴して、これを絆として、自主的に、それぞれの仕事に生かしている。最後の公式の場でも、『経営基本方針をご理解、ご認識ください」と、声を絞り出しておられます…」


岩「…ハーバード大学のコッターという教授が幸之助さんの評伝を書かれているのですが、二十一世紀に生きる我々が幸之助さんに最も学ぶべきは何かといえば、あの方が94歳まで生涯学び続けた姿勢だとおっしゃるんですね。今上田さんのお話を伺っていてよく似ていると感じました」

上「恐縮です。もう一つは『二階に上がりたいという熱意がある人がハシゴを作る』という言葉です。熱意を高めるためには何かをしたいという使命や目的が必要であり、それが強いほどいくらでも創意工夫することができる。使命や目的に照らして、最も適切なハシゴを創意工夫すればいいわけです。
 創業者は社長が一番熱心でなければならん、と述べておられる。社員稼業でいえば、自分の仕事には自分が一番熱心でなければなりません」

岩「それを聞いて思い出したのですが、幸之助さんがある時、こんな問答をしておられるんです。『商売は知識じゃなく、知恵でやるもんや。その知恵はどこから出てくるか知ってるか。ええか、まず必要なのは知識やで。でも知識だけじゃいかん。知識に熱意をかけ算し、それに経験を加えて出てくるのが知恵や』つまり知恵の出る公式とは『知恵=知識×熱意+経験』だと言われるんですよ」

上「稲盛和夫様の成功の方程式とも共通しておられますね」


    ◆     ◆  


上「…創業者は、正しい経営とは共存共栄する経営だと思う、と述べられておられます。『衆知を集める経営』と並んで創業者の基本的な経営姿勢だと思います。
 次ぎに、精神面ではやはり経営理念の徹底に尽きます。かつては創業者の謦咳に接して(=尊敬する人に直接会うこと)指導を受けられた社員がたくさんおられました。しかし、具体的な指示はしない。『君どう思う』『考えておいてくれ』という相談調、『君は何をしているのか』『最近の市況はどうか』などの質問調、そして最後までしっかりと聴く。この三つが、創業者の『衆知を集める経営』であり人材育成の大本だと思います」

岩「同感です」

上「会社が大きくなると、小さい活路は、一人ひとりの社員が自主的に拓かなければなりません。だから社員としては創業者の言葉を理解し、自分の仕事に落とし込む努力が大切です。言葉を暗記しているだけでは意味がありません。
 経営者として社員に活路を拓いてもらうために、経営者としての思いを語り続け、そして、それを、自主的に仕事に生かす工夫のできる社員を育成しなければなりません。ここに『モノをつくる前にヒトをつくる』ことの大切さがあるんだと思います。創業者は、創業当時の『行動の陣頭指揮』から、歳月とともに『考え方の陣頭指揮』に変わられた。だから社員が育ったのではないかと思うんです」


    ◆     ◆     ◆


 今はやや苦境に立っているパナソニックですが、創業者の理念を今一度思い出して、再び甦ることを祈らずにはいられません。

 最後に、上田氏提供による『松下幸之助自らが語る【松下電器発展の要因10箇条】』というのが書かれていました。

 これを掲げて終わりにします。

【松下電器発展の要因10箇条】

①仕事が時代に合っていたから
②人材に恵まれていたから

③社員が自主的に仕事をしてくれたから
④命令調でなく、相談調で仕事をしたから

⑤「ガラス張り」経営をしたから
⑥「全員経営」を心がけたから

⑦常に理想を訴えたから
⑧常に、方針を示したから

⑨「商売は公事」と考えたから
⑩「何が正しいか」を考え、勇気を持ってしごとをしたから


 誠実な人柄がよくあらわれていると思います。

コメント
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