私がいま所属している稚内開発建設部には「りんどう」という名の港湾業務艇が一艇あるのですが、今日はその船で宗谷岬の低潮線を視察してきました。
低潮線というのは「海で一番潮が引いたときに出てくる陸地のこと」で、領海はここから12海里離れたところになり、排他的経済水域(EEZ)もここが起点となります。
そのためこれがもし波で崩されてなくなってしまうと、領海が後退し排他的経済水域が小さくなるので、これを保全するのは国家として領土保全の観点から大変重要なのです。
一番典型的な例が日本の沖ノ鳥島です。海の上にこの小さな島があるおかげで周辺200海里が我が国のEEZと認められ、さらにこのおかげで日本単独のEEZによって囲まれた地域も海底資源の開発を我が国が独占的に行うことが認められています。軽く見ることはできませんね。
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この低潮線、所管は都道府県や国において見回りや管理をしていますが、わが宗谷管内では宗谷岬にある宗谷港の港湾区域内に低潮線があります。
そのためわが稚内港湾事務所が低潮線保全区域における行為規制や定期的な巡視などの管理を行っており、今日はそれを船で間近に見てみようと「りんどう」で稚内の港を出発したのです。
今日の海上は東風が吹いていて、稚内から宗谷岬に向かう船は向かい風の中を進みます。波は2メートルといったところで途中からはうねりもはいってきて、ときどき船体が大きく上下動します。
内心、(これは船酔いするかな)と心配になり、椅子から立ち上がって船の揺れを身体で吸収するようにして凌いでいたところなんとか船酔いを避けることができました。
今日は宗谷丘陵全体に低い雲が垂れ込めて、すばらしい景観は得られませんでしたが、宗谷岬へ行く途中に岬の北にある弁天島近くを航行してもらいました。
この弁天島は、宗谷岬よりもさらに北に位置しています。北方領土の択捉島の最北地はもっと北にあるのですが、実効支配している領土としては宗谷岬よりも北にあるこの弁天島が我が国の事実上の最北の地というわけです。
島は無人島で、数多くのカモメとウミウが休んでいましたが島はこの鳥たちの糞で真っ白でした(笑)。この島に渡る観光プログラムなんてあるのでしょうかね。
さて、船を進めて宗谷港の低潮線視察。低潮線となっている岩は岸から離れた島防波堤の両端に位置していて、黄色い鉄製の印が置かれています。
これを守ることが国土を守ること。最北の低潮線を見ながら最南端の沖ノ鳥島まで思いを馳せると、国土を守るという仕事の重要性がよくわかります。
誰も何をしなくても守られているわけではありません。地道に誰かが守っているから守られているということ。
船に揺られながら改めて気が引き締まりました。