北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

稚内珪藻土~吸水効果抜群のその辺の石

2015-08-21 22:30:47 | Weblog

 私の住む宗谷管内。地域の売り物は何かとつらつら考えるに、酪農での牛乳、ホタテ・サケ・昆布・ウニ・なまこ・たこなどの海産物、最近では風力による電気…などと挙げられるのですが、もう一つ知られざる特産品として人気が上がっているのが「珪藻土(けいそうど)」です。

 先日、この珪藻土を産出・販売している(有)稚内グリーンファクトリーの渡辺社長をお訪ねして、現場見学やビジネスの現状を伺ってきました。

 珪藻土というのは、かつて海水や淡水にいたプランクトンである珪藻の殻が堆積して岩や土になったもの。柔らかいものは珪藻泥岩と呼ばれ、これにもう少し圧力や熱が加わって硬くなったものを珪質頁岩(けいしつけつがん)と呼んでいます。

 稚内周辺地域ではこの珪藻が堆積した地層が広く分布していて、特に硬くなった頁岩の状態で出るところが多いことから「稚内層珪質頁岩」と呼ばれています。

 この珪質頁岩は、粉砕して粒度を調整することで粒状から粉状までのいくつかのタイプとすることで「珪藻土」と呼べる形になり、様々な用途に使うことができます。

 
           ◆   


 この珪藻土のウリは、なんといってもその吸湿性の高さです。湿度が高ければ空中の水分を吸着し、逆に乾燥していれば自分の中の水分を放出する機能があるのです。

 もちろん珪藻土はここだけではなく国内でも何カ所かで産出しますが、稚内珪藻土の特徴は他の珪藻土と比べても遙かに吸放湿性能が高いことです。秋田や石川など他の地域のものと比べると3倍から5倍という高い性能をもっています。

 一般に家造りではこうした湿度管理のために炭(木炭)がもてはやされていますが、稚内珪藻土の性能は備長炭のなんと8倍以上の性能をもっているとのこと。

 実は我が家では部屋の一部を漆喰にしているのですが、これに珪藻土を混ぜていれば湿度調整能力は格段に上がっていたことでしょう。知らなかった…

 
 住宅用建材としての使い方は、漆喰として塗るようなものもありますが、実際に需要が多いのは珪藻土を焼き固めて施工しやすくしたタイルやパネル状にするもの。リフォームするんだったら押し入れやクローゼットの内壁に調湿機能の高い珪藻土パネルがおすすめです。

 実際に作っている大手の住宅メーカーさん関連の企業からの受注を受けて、珪藻土は原料として年に数回稚内港から千葉や愛知方面の港へ積み出しているのだそうですよ。

 またこの吸湿性が良いというので最近は牛舎の地面に敷き詰めるという農業需要もあるそう。いろいろに使えるのです。

「このあたりはどこからでも出てくるような珪藻土ですが、これがビジネスになるというのは、採取する場所から稚内港が近くて輸送コストや保管コストが低く抑えられているからなんです。これが港から遠いところで採取されてもそれではコストが合わないと思いますよ」とは渡辺社長の言葉。なるほど港がこういうところでも役に立っているとは。


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 続いていよいよ珪藻土の採取現場である山を見せてもらいました。

 赴任する前に、「稚内は珪藻土が今有名になりつつあるんだよ」と言われていたのですが、そのときのイメージは「珪藻=プランクトン」という連想で、海の中の泥を救い出すようなものでしたが、実際の現場は完全な地山。

 しかもこのあたりならどこででも出てくるような岩を採取するというものでした。

 実際の石を見た瞬間、「なんだ、この石のコトかよ!」と思わず突っ込みを入れたくなりました。というのも、稚内に住んでいた小学生時代に、家の裏の道路の法面にゴロゴロあったのがまさにこの石だったのです。チョークの代わりに落書きをしたりするのにも使えて「かけ(描け)石」と呼んでいたのです。

 一見硬い石のように見えますが、手にとってきゅっとひねるとぼろっと砕けるくらいのちょっと不思議なもろい石。

 これが売れるとは幼いときには想像もできませんでしたねえ。


 吸湿性を見るのにこの珪藻土を焼いて作ったコースターに水をかけてみました。こんなにあっさりと水を吸うので、冷たい飲み物を乗せたときにグラスの水滴を吸い取って周りがべちゃべちゃになることもありません。

 稚内珪藻土が日本の快適な住まいにもっと貢献する日が来ることを期待したいですね。

【珪藻土のコースターに水をかけてみよう】

コメント
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