北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

演説じゃないんだ、独り言なんだ

2016-06-17 23:45:45 | Weblog

 新しい職場では立場上いろいろな会合に声がかかります。

 今日参加した集いにはなんと麻生太郎副総理兼財務大臣が来られて、「これからの日本」という演壇で三十分ほどの講演をされました。

 テレビでマスコミを相手にしているときわ強面の麻生副総理ですが、こうした地方で聴衆を前にするときはにこやかでジョークも交えて会場を沸かせます。

 今日の講演では現政権の経済政策についてと見通しが語られました。
「数字でいうとこの3年で間違いなく企業は儲かった。だって法人税は15兆円増えたんです。企業の内部留保も50兆円増えました。しかし設備投資には5兆円しか使っていないし、給料は5千億円しか増えていない。企業のみなさんはお金を貯めてどうするつもりなんですかね。『政府は今後どうするんだ』ってよく訊かれるけど、この点はこっちが訊いてみたいですね。経営者のみなさん、本当にどうするの?」

 会場からは笑いが出ましたが、まさにここが現下の大きな問題の一つでしょう。人口が減少して経済が縮むと皆身を小さくして内向き志向になっていやしないのか。しかしそうはいっても、投資をして儲かるという見込みのある分野や産業はなんなのかがなかなか見えないというジレンマです。

 麻生節は続きます。「かつて繁栄を誇った国はイギリスでもアメリカでも世界のお金を集めてそれを世界中に貸して利子で設けている。いわゆる債権国というやつだ。日本も借金が多いというけれど、借金をしているのは日本政府であり、お金を貸している人は国民ですよ。国民は政府に金を貸している債権者だ。しかも借りているのは自国の通貨。自国の通貨で借りているのは日米英仏の四か国だけなんですから」


「そして格付け会社なんてものを作って、世界中に貸し付けるシステムを作ったのがアメリカだし、格付け会社の一番手がリーマンブラザーズだったんだからいいかげんなもんだ。リーマンショックで世界中の銀行は手痛い目にあったけど日本は被害を受けなかった。勘が良かったというより英語が読めなかったんじゃないかな(会場爆笑)」

「でも日本も世界中にお金を貸して債権国として利子で儲ける国で行くのだろうか。僕はそうは思わない。悠久の昔から一粒の米を植え苗を育て米粒を増やして国づくりをしてきたのが日本なんだ。世界に冠たる技術を駆使して、未来を変えるモノづくりで世界に貢献できるのが日本だ。俺たちは職人だ、という気概を持とうよ。あとはドイツくらいしかそんな国はないんじゃないか」

「だから企業のみなさん、お金なんて眺めるもんじゃないんだからどうやって何に使うかを、お願いだから真剣に考えてくださいよ」


           ◆   


 さまざまな最新の技術開発のエピソードなども交えながら、あっという間の30分。

 思ったことは、(これは演説じゃないんだ。たとえば麻生さんが普段考えていることを独り言として言っているんじゃないか。皆説得されようとしているんじゃなくて、麻生さんの独り言を聞かされて、『あ、なるほど』と思っているだけなんだ)ということ。

 やはり手練れの政治家というのは聴衆の心をつかむのが上手ですね。何を話したから人気が出るんじゃないんだな。人気があるから話を聞いてくれるんです。

 人気を失った知事との違いはそういうところにある。勉強になりました。

コメント
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