こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

死体の冷めないうちに

2007-06-16 00:00:00 | 未分類
芦辺拓さんの『死体の冷めないうちに』を読みました。

自治体警察局特殊捜査室、略して自治警という元民間人ばかりで結成された捜査チームが、
七つの事件の解決に挑むという、連作短編シリーズです。

第一話「忘れられた誘拐」は、凶悪な誘拐犯が、人質の命を握ったままある精神状態に
陥ってしまったら?というテーマを扱っている。
これは、本だからこそ使えるトリックですね。でも、ほんのちょっとしたある違いから
犯人の変化を見抜くのは、なかなかできることではありません。

第二話「存在しない殺人鬼」は、ある女性の目の前で凄惨な殺人が起こりながら、
警察は、なぜか知らぬ顔をし、報道もされないという不可解な事件。
この理由は、知ったあとでは現代にありえそうと感じられて、感想が書けません。

第三話の表題作は、理系の犯人のアリバイ・トリック。
犯人の思惑を外れた展開が、ある理由からくるという意外性が面白く、
そのアリバイの破り方もややこしくて面白いです。

第四話「世にも切実な動機」は、独り暮らしの老人が、なぜ唐突に切腹を図らなければならなかったか、
という話。
人は、切実な思いがある時には、突拍子もない事でも、ひねりだすものなのでしょうか?
思考の不思議であり、あまりにも悲しい思いやりですね。

第五話「不完全な処刑台」は、爆薬のない時限爆弾と、そこに仕組まれた罠に挑む。
めったに当たらない私の推理が一部当たったもので、すごくうれしかったです。
ある単語というか、物からピンときました。

第六話「最もアンフェアな密室」では、その爆弾の作者と目された美少年が
密室で死んでいたはずが、発見された直後に消えてしまったという事件。
まぁ、確かにアンフェアといえばアンフェアなのですが、この現代、ありえそうで怖いです。

第七話「仮想現実の暗殺者」では、第一話で捕らえられた犯人が、自治警に復讐すべく、
その生みの親の暗殺を企てる。
わりと早いうちに、犯人の意図は見抜けたのですが、それも読者にはヒントが与えられたからで、
自治警と同じ立場では解けなかったでしょうね。

本当、アメリカ製のテレビシリーズみたいで面白かったです。

コメント
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