今回の「名言・佳言ピックアップ」は、韓国のことわざをとりあげます。
가는 말이 고와야 오는 말이 곱다 カヌン マリ コワヤ オヌン マリ コプタ
韓国語を日本語にそのまま置き換えると、
「行く言葉が美しくてこそ、来る言葉が美しい」
となる。
日本の「売り言葉に買い言葉」(相手の暴言に応じて、同じような調子で言い返すこと<デジタル大辞泉>)と、表現はちがえども同じ意味である。
でも、こちらのほうが善意の大切さを前面に出していて、表現自体美しい。
詩人の茨木のり子さんは、著書『ハングルへの旅』(1986年 朝日新聞社)の中でこのことわざを紹介し、「(韓国では)中学生以上は皆知っている諺だそうだ。」と書いている。韓国では広く使われていることわざのようだ。
日本にもこれと同じような、善意を前面に出したことわざがある。
ことわざ辞典の決定版、『故事俗信 ことわざ大辞典 第二版』(北村孝一・監修/小学館)をパラパラ見ていて、たまたま二つほど見つけたので、辞典の解説文とともに、以下にご紹介する。
〇人の憂えを憂うるときは人もまたその憂えを憂う
「人の心配事に同情してやれば、人もまたこちらの心配事に同情してくれる。*金言童子教(1716)*古今俚諺類聚(1893)」
〇人に善言を与うるは布帛(ふはく)よりも煖(あたた)かなり
「人をいたわり、ためになることばをかけるのは、着物を与えるよりもいっそう暖かに感じられる。*訓蒙故事要言(1694)*荀子−栄辱」
いずれも江戸時代の書物にもある言葉だそうで、昔から人々に語り継がれてきたもののようだ。
今は「売り言葉に買い言葉」ほどに広く使われてはいないが、庶民の貴い人生智、処世智を簡明に表していて、美しい。
*上の写真はムクゲの花。本記事とは関係ありません。