わたしが、大学に入学したころ、少年チャンピオンで、山上たつひこ氏によるギャグ漫画の名作「がきデカ」の連載が始まった。ご存知の方も多いと思うが、少年警察官と称する、少々変わった主人公が、色々とお騒がせを繰り広げる漫画である。当時、その漫画に出てくる、「死刑!」、「八丈島のきょん」といったギャグはけっこう流行ったものであった。
ところが、この実写版ともいえるような人物がいた。大学で同じクラスになり、よく一緒に遊んでいたS君である。漫画のこまわりくんは、すぐ裸になって大暴れするが、さすがに良識のあるK大生。そういうことはもちろんやらない。私の文章力では表現がしがたいが、とにかく言動がユニークであり、そのユニークな言動のなかに、こまわりくんと同じ波長が感じられたのである。
当然のことながら、彼は、仲間内で「こまわりくん」の愛称で呼ばれるようになった。いや、仲間だけではない。本人が直接交流のない人も、かなり広い範囲で彼のことを知っていたというから、キャンパスでは結構人気者になっていたようだ。本人も、すっかりその愛称になじんでいて、本名で呼んでも返事をしなかったが、「こまわりくん」と呼ぶと「なんだー」と振り向いたといった逸話もあったくらいである。
一方、この名誉ある愛称?を剥奪された人間もいる。寮に住んでいて、機動隊の盾に押しつぶされたという逸話の持ち主のO君である。彼もユーモラスな人柄であり、寮の仲間内から「こまわりくん」と呼ばれていたらしい。しかし、S君を見た寮仲間たちは、やはりS君の方が「こまわり君」にふさわしいと言って、その愛称をO君から剥奪してしまったのだ。
そのS君は、日本を代表する世界的な最先端企業で活躍している。
※ 本記事は、2006年03月20日付で「時空の流離人」に掲載したものに加筆修正を加えたものです。
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